スルドの声(共鳴2) terceira esperança

桜のはなびら

文字の大きさ
39 / 275

言われたこと

しおりを挟む
 わたしが片岡さんに攻撃されうる理由を網羅してみる。
 可能性のみを推挙すれば、出ては来るが全て理由不在もしくはこちら側からは把握できないもの。そうであるかどうかは本人に確認するしかないし、可能性それぞれの確度を評価すれば、限りなく低いものもある。
 
 それよりも、わかりやすい理由がつけられそうな共通項――今回のケースで言えば、與田くん、もしくは渡辺くん――を起因とする原因が可能性としては高いし、対策を講じるとしても、把握できないものをどうにかするよりも適切なものを――――
 
「いや、ややこしい! あいつがのんちに投げつけた言葉、聞こえてたでしょ?」
 
 ササに言われ、嫌でも思い出す。
 
「……男に媚びて姫気取りのくそビッチ……って感じのこと言ってたね」
 
「え、なにそれ、そんなえぐいこと言われたの?」
「のんちゃん……辛かったね......」
「あんの女狐めぇ......! 赦せん‼︎」
 
 カヨ、ふたば、カモエリがそれぞれ表情と言葉で心配や怒りを表していた。
 
「みんな、気持ちわかるけど、それは後にしよう! ねえ、のんち? 敢えて遠回りと言うか、避けているというか……やってない?」
 
 自覚はしていなかった。全てつまびらかにして、情報を整理したいと思っていたから。
 でも、ササの言う通りかもしれない。
 
「ん……ごめん、複雑化、させてたかも。意識してそうしていないことは誓って言えるけど、無意識下で、逃げようとしていた気持ちは……改めて自分に問うと、ある、気がする」
 
「のんちのその気持ちも、わかる。恋愛ごととかさ、勝手に芽吹いて育っていくのが楽しいんじゃんね。ありうる事柄はみんな可能性の種だよ。だから、あり得るからって実を持っている種とは限らない。なのに、その種のひとつをターゲットにして、無理やり芽生えさせられたって、産業植物みたいで嫌だよね。でも、のんちが覚悟を決めたというなら、ここは避けたらだめだよ」
 
 ササの例えは迂遠で複雑で、カモエリやカヨはちょっと不思議そうな顔をしていたけど、わたしには言いたいことは伝わった。
 
「うん。片岡さんのそのセリフは、情報の種類としては事実の箱に入れられるもの。事実として、わたしに対し、女であることを責めた。男絡みであることへの揶揄が明らかな、悪意ある言葉をぶつけられた。ってことは、共通項にある與田くんか渡辺くん……たぶん、與田くんなのかな。與田くんと仲の良さそうなわたしが気に食わない……つまり、片岡さんは與田くんが好き、で、嫉妬でわたしに攻撃した……ってことなのだと思う」
 
「うん、たぶんそう! そしてそれ、その日のうちに何となくみんなそんな感じのこと言ってたよね? だからそれって、今さらのことなの!」
 今だって、三段論法みたいな感じで結論を導いていたけど、みんな感覚で直接答えにたどりいていたよと、説いて聞かせるように言うササ。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スルドの声(嚶鳴2) terceira homenagem

桜のはなびら
現代文学
何かを諦めて。 代わりに得たもの。 色部誉にとってそれは、『サンバ』という音楽で使用する打楽器、『スルド』だった。 大学進学を機に入ったサンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』で、入会早々に大きな企画を成功させた誉。 かつて、心血を注ぎ、寝食を忘れて取り組んでいたバレエの世界では、一度たりとも届くことのなかった栄光。 どれだけの人に支えられていても。 コンクールの舞台上ではひとり。 ひとりで戦い、他者を押し退け、限られた席に座る。 そのような世界には適性のなかった誉は、サンバの世界で知ることになる。 誉は多くの人に支えられていることを。 多くの人が、誉のやろうとしている企画を助けに来てくれた。 成功を収めた企画の発起人という栄誉を手に入れた誉。 誉の周りには、新たに人が集まってくる。 それは、誉の世界を広げるはずだ。 広がる世界が、良いか悪いかはともかくとして。

スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem

桜のはなびら
現代文学
 大学生となった誉。  慣れないひとり暮らしは想像以上に大変で。  想像もできなかったこともあったりして。  周囲に助けられながら、どうにか新生活が軌道に乗り始めて。  誉は受験以降休んでいたスルドを再開したいと思った。  スルド。  それはサンバで使用する打楽器のひとつ。  嘗て。  何も。その手には何も無いと思い知った時。  何もかもを諦め。  無為な日々を送っていた誉は、ある日偶然サンバパレードを目にした。  唯一でも随一でなくても。  主役なんかでなくても。  多数の中の一人に過ぎなかったとしても。  それでも、パレードの演者ひとりひとりが欠かせない存在に見えた。  気づけば誉は、サンバ隊の一員としてスルドという大太鼓を演奏していた。    スルドを再開しようと決めた誉は、近隣でスルドを演奏できる場を探していた。そこで、ひとりのスルド奏者の存在を知る。  配信動画の中でスルドを演奏していた彼女は、打楽器隊の中にあっては多数のパーツの中のひとつであるスルド奏者でありながら、脇役や添え物などとは思えない輝きを放っていた。  過去、身を置いていた世界にて、将来を嘱望されるトップランナーでありながら、終ぞ栄光を掴むことのなかった誉。  自分には必要ないと思っていた。  それは。届かないという現実をもう見たくないがための言い訳だったのかもしれない。  誉という名を持ちながら、縁のなかった栄光や栄誉。  もう一度。  今度はこの世界でもう一度。  誉はもう一度、栄光を追求する道に足を踏み入れる決意をする。  果てなく終わりのないスルドの道は、誉に何をもたらすのだろうか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スルドの声(共鳴) terceira esperança

桜のはなびら
現代文学
 日々を楽しく生きる。  望にとって、それはなによりも大切なこと。  大げさな夢も、大それた目標も、無くたって人生の価値が下がるわけではない。  それでも、心の奥に燻る思いには気が付いていた。  向かうべき場所。  到着したい場所。  そこに向かって懸命に突き進んでいる者。  得るべきもの。  手に入れたいもの。  それに向かって必死に手を伸ばしている者。  全部自分の都合じゃん。  全部自分の欲得じゃん。  などと嘯いてはみても、やっぱりそういうひとたちの努力は美しかった。  そういう対象がある者が羨ましかった。  望みを持たない望が、望みを得ていく物語。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...