スルドの声(嚶鳴2) terceira homenagem

桜のはなびら

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監督の主張

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 普段は見かけたことのない、スーツ姿の男性に、露骨に不機嫌そうな監督が不遜な態度で対応していた。
 
「ご要望は伺いましたがよ、この手の話はおぐっちゃんにすんのが筋じゃねえのか?」
 
 なんか難しい敬語の使い方をしているなと思ったら、結局タメ口に戻っている監督。
 でも一応敬語で話そうとしていた当たり、近すぎる関係者では無いのかも。それか、気を使うべき相手、上下で言えば、上の相手。

 
「勿論そうします。小国さんは本日もいらっしゃっていると伺っていましたが、まだ来られていないようですね。ただ、小国さんが承認されても、監督の一存で覆ることもあるでしょう? あの人は現場を優先しますからね。なら、監督から話をしても無駄ではないなと。もっといえば、監督から要望を上げていただいた方が早く、確実かもしれない」
 
「ふん……まあそれならそれで良いがね。俺が決めて良いなら、どちらにしてもそちらのご要望通りにはならないぞ。素人か玄人か。そんな価値観で撮ってねぇんだこの現場は。言っとくが、そこの誉はな、この作品作りに必要な俳優陣のひとりだ。替えなんて無い役者のひとりなんだよ」

 
 ええと、私が問題視されている、ということ?
 素人云々ということは、私が本職でないのに出ていることが問題視されていると想像できた。
 作品について問題点があれば、指摘し是正を勧告できる立場の人が、それをしに来たという構図なのだろうか。

 いや、それよりも。
 
「なるほど、わかります。確かに素晴らしい演技をされていたと思いますよ。今から替えようなんて、乱暴なことはそもそも本線ではなかった。素人さんが足を引っ張ってしまうようなことがあるなら、それも選択肢だと申したまでで」
 
「見てたんだろうがよ? 誉を! 誉の映を! 今素晴らしいと喋った口で、足を引っ張ってしまうようなことがあるならなんて選択肢が出てくること自体がおかしいじゃねえか。あんたの言うとおり、今更変えて撮り直しなんて現実的じゃねえのは当然だが、それだけじゃない。映は誉以外考えられるか!」
 
 監督が、私を、私の演技を、認めてくれているような発言をしている。
 そして、私を庇っている?
 監督が私を配慮や同情で庇うことなんてないと思う。だから優しくしてくれているわけではない。認めるべきところは認める、映画や作品に対しては真摯であるという側面からの発言だとすれば、掛け値なしに私の仕事は認めてもらえたのだ。
 あの厭味ったらしい誰かが何を言いたいのかわからないしなんか言い回しが不愉快だけれど、そんなことはどうでも良いと思えるくらい嬉しくなった。

 あんなにたくさんひどいこと言われたのに、私もちょろいものだ。
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