スルドの声(嚶鳴2) terceira homenagem

桜のはなびら

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 撮影現場に不意に訪れたスポンサー担当者、河内さん。
 あのコワモテクセ強の千屋監督に、割とフリーダムな要求を叩きつけ、一刀両断に断られても、監督が怒りよりも呆れてしまうほどの粘りを見せた。
 現場に混乱と停滞をもたらした彼は、それでも思い通りに現場を掌握することはできず、プロデューサーの小国さんにアプローチをかける。
 その日はたまたま現場に来てはいなかった小国さんへは、河内さんはその場を辞去した後に改めて連絡を入れ、要求を申し入れたのだという。


 小国さんからの電話で。
 まずは直近の話題として、この件について、現場での様子は見ていない小国さんに、その時の様子を私は話し。
 その後に対応したやりとりの内容について、小国さんは私に教えてくれた。


 当然と言えば当然だけれど、私の中で河内さんの印象は良くなかった。
 それは今も大きく変わっていないけれども、彼の立場とその在り方については、一定の高評価を与えて良いと思った。また、妹さんとの話は、プロフェッショナルに徹し感情に左右されなかった河内さんの、人間らしい一面が窺い知れて親近感も少し感じられたことは、良かったように思えた。立場や価値観的に、どうしても相入れない人はいる。そんな人でも、どこか一点でも、理解できたり共感できたりするポイントが見つけられれば、争い以外の結末だって見出せる。

 相手のそういう要素を引き出した小国さんは、やっぱり優秀なのだろう。

 ひとつの話題が終わり、次の話題への移行を予感させる空白。お互いが無言の一瞬。
 電話口の向こうの、そんな優秀な小国さんからは、逡巡するような気配。

「それで、ですね……あの、」
 
 説明やプレゼンなどは、立て板に水のように滑らかに語る小国さんが、何やら言い難そうにしていた。
 
「あ、この前の、お返事……ですよね?」
 
 自分から切り出すのは少し勇気が要った。しかし、なんとなくわかっているのに言い難そうな相手からの言葉を待つのは卑怯な気がした。
 
「はい、急かしてしまったようで申し訳ありませんが……」
 
「いえ、予約とかの都合もありますもんね。すみません、こちらから連絡できず。あの、ええと、お受けしたいなと思っています。で、人数は、私だけ……で、あの、お願い、します」
 
 別に大した話をしているわけではない。
 食事に行けるかどうかの確認、yes。行けるならその人数、ひとり。ただそれだけの、特に複雑でも難しくもない業務報告のような内容なのに、要さんとしょーちゃんが、デートがどうのとか好意がこうのとか余計なことを言うので、余計な意識をしてしまうではないか。
 
 
「おお、それは、ありがとうございます……!」
 
 言った小国さんの声は、監督のことを話題にしたときに聞こえた明るい笑い声よりも、弾むような声だと感じたのは、聞いている側の感情の影響だろうか。
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