スルドの声(嚶鳴2) terceira homenagem

桜のはなびら

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(畠山 祥子)


「キックオフ時、プロジェクトのアウトラインの説明をさせていただいた際にお伝えいたしましたが、サンバという聞きなじみはあっても日本国内での浸透度は極めてといっていいくらいに低く......」

 一堂に向けて語るしょーちゃんの姿に、私は見惚れていた。

 今日はしょーちゃんの先輩の遊佐さんは不在だが、しょーちゃんの立ち振る舞いは堂々としていて、弁舌は見事だった。
 しょーちゃんはまだ社歴の浅い新人のはずだが、すでに一人前として認められているのかもしれない。

「しかし、文化としては宗教や奴隷といったセンシティブな背景も内包しつつ、「ダンス」「音楽」「カーニバル」「ショービジネス」といったいくつもの側面と、それぞれの側面に相当の深みを持っているという、高低差というか温度差というか、そういうものを埋める点と、表現に誤解や誤りが起こらないようにするチェック機能という点を、ラフカットの段階で担ってもらうことを意図とし、演者でもある現役サンビスタの誉に加え、彼女と同じサンバチームに所属している現役サンビスタの姫田祷さんを起用します」
 
 もちろん、各段階に於いて最終チェックとして専門家の判断は仰いでいる。文化的、歴史的、宗教的な見解に関しては、専門家だったとしても意見が分かれることもあるから、慎重にならざるを得ない。
 どちらかといえば、祷や私に求められているのは、リアルなサンビスタの肌感覚の部分だったりする。
 
「誉に任せた事前の台本チェックの際も、当時既に本件打診済みだった祷には閲覧許可を与えていて、リモートでチェックに入ってもらっています」
 
 この件は、全員にとって周知済みの事実で、形式上と確認の趣旨で、前段として述べているにすぎず、特に異論も反論もなく進む。
 
「現状、制作も順調に進んでいて、誉の撮影は……追加撮影が増えたと聞いていますが、それを入れても、だいぶ終わりが見えてきた段階になってきましたので、誉と祷のチームで映像のチェック作業に入ってもらうにあたり、顔合わせを兼ねてこの場を設けさせていただきました。この後のスケジュール感の確認、共有を図る目的もあります」
 
 配られた手元の資料も、要点をまとめた簡単なもの。
 皆、発表するしょーちゃんを見ながら、時折資料に目を落としている。
 
「プロデューサーの小国さんに戻す前に、改めて姫田祷さんをご紹介します。彼女は今や重要なアクターでもある誉と同じサンバチームであることは先ほどお伝えした通りですが、同じ大学の先輩でもあります。事務所に所属していない誉のメンタルケアやマネジメント的なところを担う、エキストラとしても参画してくれている要もまた、同大学在籍で、三年生の要、二年生の祷、一年生の誉という関係性です。学部も細かいところは異なっていますが、かなり近しく、民俗学、歴史学、言語学といった分野を学ぶ優秀な学生です。それをアサインの理由に挙げていますが、若干こじつけであることは自覚しています。『現役サンビスタ』で、『誉と関係性が深い』ことが重要で、対外的にその人選を認めさせるために引っ張ってきた素養であることは否定できません。が、有していて困る能力でもありません。また、彼女自身、サンバの振興に前向きで、学生の身でありながら自身でも独自のプロジェクトをいくつも水平展開していて、着実に実績も積み上げています。求めていた機能以外の部分でも、当プロジェクトに寄与してくれるものと期待できます」

 普段のしょーちゃんからは全くイメージできない。今目の前には真面目そうで賢そうなしょーちゃんの姿。

 みんな、仕事の時はちゃんとしてるんだなぁ。
 るいぷるも仕事ではちゃんとしてるのかな? いや、るいぷるの同僚でタンボリン奏者のアイジは仕事でもイカれてるって言ってた気がする。
 人それぞれか。

 なんて。
 そう遠くない将来、社会に出る私。
 どんな仕事をしているのかさえ、今はまだ何のイメージも湧いていないけど、なんとなく働く自分の姿を想像していた。
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