スルドの声(嚶鳴2) terceira homenagem

桜のはなびら

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【失くしてから、生まれたもの4】

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 人の手になんて負えないからこそ、目の前のひとつひとつを懸命にやっていくしかないだろう。
 それが禊になるとは思えないが、その先に、懸命を積んで積み上げていったその先に。
 見えてくる何かがあるかもしれない。
 少なくとも、そうやって時間を使い続けていった自分の中には、世の中だの他人だのを見て、批評家ぶって嫌悪するような隙間は、もうなくなっているだろうから。
 
 
「……電話でも入れてみるか」
 
 このセッティングが終われば、今日の仕事は終わりだ。まだ日は高いだろう。
 徹夜明けだからまっすぐ帰って寝てしまおうと思ったが、今は何だか妙に妹と話したかった。
 近くに住んでいて、いつでも話せる間柄。
 不本意な結果で、夢を諦めた妹。
 頼まれてもいないのに、妹を追い詰めた連中に勝手に制裁を加えた兄。
 この間、特に会話はしていなかった兄妹。
 
 妹が今何を考えていて、何を望んでいるのか。
 いや、もっと日常的な……例えば、今好きな音楽があるのかとか、食べたいものがあるのかとか、そんなことすら、知らなかった。

 電話はワンコールもしないで繋がった。
 たまたまスマホをいじっていただけかもしれない。
 けれどもなぜか、「遅いよ」という妹の声が聞こえた気がした。
 
 自分から掛けておいて。
 何を言うかも決めていなかった俺は、妙に泡食ってしまって。笑いながら呆れながら、「どうしたのよ」なんて言う妹に下手な言い訳しながら。
 最後は妹に主導権をとられながら。

 いつだって機会なんてあったはずなのに、ろくに設けてはこなかった、兄妹が語らう時間。

 兄の方が若干手際悪くしどろもどろで。妹の方があれこれと仕切って決める。
 俺は俺が思うほど、有能でも達観してもいなかったようで、そう言う関係性の方が、物事はスムーズに進むようだ。
 色々思うところはあるが、そこに気づけただけでも、この一連の出来事は、俺の人生にとっては価値のある出来事だったのだろう。

 無能さも情けなさも受け入れて。
 それでも、できることとすべきことを、正しく確実に積み上げていこう。
 
「日々を懸命に生きる」の中には、そういうこともきっと含まれているだろうから。
 
 そう思うと、計画性なんて欠片もない「目先を頑張る」なんて行為が、目的に至るために計画を立て推進していたあの日々よりも、気力がみなぎってくる気がした。
 徹夜なんてものともしなかった、希望とやりがいに満ちていた若手だった頃のように。
 
 
 赦されることを目的にしない。
 懸命に生きたその日々の成果こそが。
 きっと禊と呼ばれるものだ。


 
 その先に。もし、あるいは。道が交わることがあるとしたら、その時はーー。



 
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