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後日譚 やがて響きあうその日まで5
しおりを挟む「……言わない方が良いかとも思ったんだけどよ……お前見てたら、たぶん違うなと思ったから言うわ。この現場、全部おぐっちゃんが整えてたぞ。もう、たぶん、このプロジェクトが終わるまでおぐっちゃんが誉の前に立つことはないんだろうな……でも、あの頃と変わらず、現場の、計画の……誉の、支えの一部におぐっちゃんがいることを知っていてもらえると……俺は嬉しい」
あいつはどう思うか知んねえけどな、と笑った監督は、少し楽しそうで、少し寂しそうだった。
監督の口から嬉しいなんて言葉を聞かされたことに驚いていた私も、たしか少し笑った気がする。
金津社長も、要さんも、あの人の身勝手な復讐劇に、巻き込まれた被害者として私を扱ってくれる。気を使ってくれる。
つまりそれは、彼――小国さんを、加害者という立ち位置にしている。
私は、被害者なのだろうか。
嘘偽りの言葉で私を惑わし、動かし、利用したのだとしたら――そのうえで、損害があったなら、被害者なのかもしれない。
私は小国さんの言葉や行動で、嬉しさや感謝を感じていた。
そしてそれが私を動かし利用するための手段だと知ったとき――確かに私は、ショックを受けた。間違いなく傷ついた。それは、明らかな損害だろう。
だけど、前提条件が違ったら?
意図や目的はあったとしても、言葉や行動に装飾があったとしても、必ずしも嘘とは言えなかったとしたら?
妃夜さんは、小国さんの言葉の中には、小国さん自身すら気付いていない意思が隠れているのだというようなことを言っていた。
もし、小国さんの言葉や行動が、思惑と嘘のみで構成されていたのではないとしたら。その言葉や行動の中に、一端の真実が含まれているのなら。
私は別に、傷つく必要がないのではないだろうか。
まだ記憶に残っている。
慣れない撮影現場という環境の中で。
小国さんが私に掛けてくれた配慮の言葉。気遣いの行き届いた環境設定。それでも心許ない私を見守る、心配そうな目線。
その全てが、嘘だったの? 本当に?
いのりがまとめてくれた、小国さん周りに関する調査結果の資料。
説明会の後、なんとなく資料を眺めていたしょーちゃんがふと漏らした言葉を思い出した。
「小国さんの妹さん……アコちゃんって、見た目とかそういうことじゃなくて、なんていうか、雰囲気、ちょっと誉ちゃんに似てない?」
しょーちゃんは、動画を流していたスマホを眺めながら独り言のように言った後、すこし動画の再生位置を戻し、テーブルの上に置いた。私は覗き込むように、その画面を観た。
荒い画質の画面の中で、体操服のような格好で懸命に風船を膨らませてなんらかのゲームに挑み、失敗して粉をかぶっている少女の姿があった。所在なさそうに座り込んでいるその子が、私に似ているのかはわからなかった。
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