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日が落ち星が隠れたとしても
焼け跡2
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暁は問うた。
行動によって生じた因果と、因果が結んだ結果に対する責任。因果と結果を結びつけることが証明できなかったとしても、それが無関係だとする証明にはならない。
「……遠因になっている可能性はあるよ。俺たちが余計なことをしなければ起こらなかったかもしれない、もっと言えば、俺たちが街の治安を良くする生き方をしていたら、こんな事件を起こす奴らを減らせたかもしれない。だから俺たちのせいだと言われれば、それはその通りだよ!」
そう、羽龍にも充分わかっていた。
罪の意識で押しつぶされそうだった。
崩れ落ちてしまいたかった。
それでも、暁を、生来は楽天的でありながら、思い詰めがちでもある暁を、後悔の先へと進めさせてはいけないと、必死に堪えて、立ちはだかる壁で在ろうとしていたのだ。
「でも、間違えちゃいけないのは、原因はあくまでも加害者だ。誰のせいかと言われれば加害者のせいだし、誰が悪いかと言われればそれも加害者だ。
それを責任逃れというなら、それで構わない。ままならない、コントロールできない、自分が生きていくことで起こる影響の全てに責任を持たなくてはならないなら、誰も生きてはいけないよ」
羽龍は隣に座る暁を真っ直ぐに見続け、話し続けた。
暁の昏く無機質な表情からは、硬く鋭く、しかし割れたら取り返しのつかないガラスのような儚さを感じていた。
バックミラーに映っている自分はどうだろうかと羽龍は思った。暁と同じようだろうか。それとも、既にヒビでも入ってしまっているだろうか。
それでも構わない。自分ならしなやかな復元力があると思っていた。
「しなかった未来なんて見られないのだから、ありとあらゆる遠因になり得た可能性を後悔しても、意味づけしていても、仕様がないじゃないか。人間なんてそんな特別なものじゃないよ。生きることにも死ぬことにも、意味も理由もない」
「だったら、生き方なんて」
暁は背もたれに身体を預け、息を吐き出すようにしながら言った。
「だからこそ、意味も理由も自分でつけるんじゃないか!」
暁を向こう側に行かせはしない。
かつて喪った母のようにはさせない。
羽龍は普段は潜ませている強い気持ちを心の奥から取り出した。
「だからこそ、どんな結果になるのかわからなし、努力も正しさもより良い未来の保証にならないからこそ、自分が納得できる生き方をするんじゃないか。
ままならない人生を少しでも受け入れられるようにするために。心のままに、生きてきたんじゃないか……」
羽龍はガビの言葉を思い出していた。
「そうだな。その生き方に後悔の念を抱いてしまったのだとしたら、俺は心のままに生きられていなかったのかもしれない」
「アキちゃん」
暁を子どもの頃の呼び方で呼ぶ時の羽龍は、いつも少し哀しそうな眼をしていた。
「自分を責めないと耐えられないこともあると思う。
だから自分のせいだと思うのをやめろとは言わないし、やめられるものでもないと思う。
でも俺は、アキちゃんの隣でずっと言い続けるからな。アキちゃんのせいじゃないって」
暁はいつだって傍にいてくれた羽龍の声を聴いていた。いつだってこの声に、心を救われてきていたような気がしていた。
「生き方のあってる間違ってるなんてのも、後になってわかるもんだろ。走り続けてるその瞬間に何が正しいかだなんてわかるもんか!
だから生き方を後悔することはないとも言い続けるよ。だけど、いつ生き方を変えても良いんだとも。その時は、必ず俺も付き合うとも」
暁はずっと羽龍を引っ張ってきていたつもりだった。
巻き込んだとも思っていた。それは事実である。が、その道が正しくても間違っていても、必ず支えてくれていた存在としての羽龍がいたからこそ、ここまで来られたことを強く感じていた。
無論そんなことは重々理解していたが、改めて思い知った。暁の中に生じた、扱いを決めかねていた怨讐は、形を定める前にその表面を溶かし始めていた。
「……ミカは俺にとっても幼馴染で、弟みたいに思っていたよ。俺にだって後悔はあるし、自分を責める気持ちもある。だからアキちゃんの気持ちも少しはわかるつもりだよ」
「両親にも、美嘉の彼女にも全て話すよ」
言う暁の顔は疲れ果ててはいたが、憑かれていたかのような険しさは無くなっていた。
「罰されないと気が済まないのもわかるよ。そこまで含めて俺たちは一蓮托生だからね?全てを詳らかに話すのは、むしろそうしてほしい。その時には必ず、俺も含めてくれよ。ひとりでなんてさせないからな」
羽龍は少し安心して、力強くはないがそれでも笑顔でそう言った。
「ああ、前にも言ったろ。今更格好付けるつもりはないよ。最期まで頼む」
行動によって生じた因果と、因果が結んだ結果に対する責任。因果と結果を結びつけることが証明できなかったとしても、それが無関係だとする証明にはならない。
「……遠因になっている可能性はあるよ。俺たちが余計なことをしなければ起こらなかったかもしれない、もっと言えば、俺たちが街の治安を良くする生き方をしていたら、こんな事件を起こす奴らを減らせたかもしれない。だから俺たちのせいだと言われれば、それはその通りだよ!」
そう、羽龍にも充分わかっていた。
罪の意識で押しつぶされそうだった。
崩れ落ちてしまいたかった。
それでも、暁を、生来は楽天的でありながら、思い詰めがちでもある暁を、後悔の先へと進めさせてはいけないと、必死に堪えて、立ちはだかる壁で在ろうとしていたのだ。
「でも、間違えちゃいけないのは、原因はあくまでも加害者だ。誰のせいかと言われれば加害者のせいだし、誰が悪いかと言われればそれも加害者だ。
それを責任逃れというなら、それで構わない。ままならない、コントロールできない、自分が生きていくことで起こる影響の全てに責任を持たなくてはならないなら、誰も生きてはいけないよ」
羽龍は隣に座る暁を真っ直ぐに見続け、話し続けた。
暁の昏く無機質な表情からは、硬く鋭く、しかし割れたら取り返しのつかないガラスのような儚さを感じていた。
バックミラーに映っている自分はどうだろうかと羽龍は思った。暁と同じようだろうか。それとも、既にヒビでも入ってしまっているだろうか。
それでも構わない。自分ならしなやかな復元力があると思っていた。
「しなかった未来なんて見られないのだから、ありとあらゆる遠因になり得た可能性を後悔しても、意味づけしていても、仕様がないじゃないか。人間なんてそんな特別なものじゃないよ。生きることにも死ぬことにも、意味も理由もない」
「だったら、生き方なんて」
暁は背もたれに身体を預け、息を吐き出すようにしながら言った。
「だからこそ、意味も理由も自分でつけるんじゃないか!」
暁を向こう側に行かせはしない。
かつて喪った母のようにはさせない。
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「だからこそ、どんな結果になるのかわからなし、努力も正しさもより良い未来の保証にならないからこそ、自分が納得できる生き方をするんじゃないか。
ままならない人生を少しでも受け入れられるようにするために。心のままに、生きてきたんじゃないか……」
羽龍はガビの言葉を思い出していた。
「そうだな。その生き方に後悔の念を抱いてしまったのだとしたら、俺は心のままに生きられていなかったのかもしれない」
「アキちゃん」
暁を子どもの頃の呼び方で呼ぶ時の羽龍は、いつも少し哀しそうな眼をしていた。
「自分を責めないと耐えられないこともあると思う。
だから自分のせいだと思うのをやめろとは言わないし、やめられるものでもないと思う。
でも俺は、アキちゃんの隣でずっと言い続けるからな。アキちゃんのせいじゃないって」
暁はいつだって傍にいてくれた羽龍の声を聴いていた。いつだってこの声に、心を救われてきていたような気がしていた。
「生き方のあってる間違ってるなんてのも、後になってわかるもんだろ。走り続けてるその瞬間に何が正しいかだなんてわかるもんか!
だから生き方を後悔することはないとも言い続けるよ。だけど、いつ生き方を変えても良いんだとも。その時は、必ず俺も付き合うとも」
暁はずっと羽龍を引っ張ってきていたつもりだった。
巻き込んだとも思っていた。それは事実である。が、その道が正しくても間違っていても、必ず支えてくれていた存在としての羽龍がいたからこそ、ここまで来られたことを強く感じていた。
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「罰されないと気が済まないのもわかるよ。そこまで含めて俺たちは一蓮托生だからね?全てを詳らかに話すのは、むしろそうしてほしい。その時には必ず、俺も含めてくれよ。ひとりでなんてさせないからな」
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