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相変わらずチョロい私は安心した。
しおりを挟む「何かを間違えた気がするわ!!」
屋敷に帰り部屋で今日の事を振り返っていた私はハタッと気付いて一人叫んだ。
「セイラ様が聖女としての力に目覚めて、ビーグル……じゃない、ビーブル殿下とやらにざまぁするのはもちろん構わないけれど、その場合の必須な真ヒーローはどうなるの!?」
すっかり応援モードになっていた私だけれど完全に真ヒーローの存在が抜け落ちていた事にようやく気付いた。
~婚約者に真実の愛に目覚めたと言って追放された元聖女ですが、隣国の王子に拾われて溺愛されています~
というフレーズが再び私の頭の中に浮かぶ。
どうしてまた浮かぶのよ!?
「拾ってない。シュナイダー様は別に聖女様を拾ってないわ……そんな出会い方はしていない。向こうからやって来た……だから違う」
私は全力で首を横に振る。
「……うぅ」
勢いよく頭を振り過ぎたせいかちょっとクラクラした。
なのに何故か広がる不安。
シュナイダー様は変わらず私を愛してくれているし、聖女様は私達が仲睦まじくしているのを知っていて喜んでいた。
知っていて横恋慕するような人にも見えなかった。
「だから、大丈夫。何も問題など起きていない……起きていないのよ」
私は必死にそう自分に言い聞かせた。
いつものように、放課後はお妃教育のために王宮を訪ねる。
(シュナイダー様ともここでしか会える時間が取れないのが寂しい……)
そんな事を考えながら歩いていると目の前からは愛しのシュナイダー様の姿が!
私に気付いたシュナイダー様が甘く微笑んだ。
「キャロライン! 来ていたんだね」
「シュナイダー様!!」
早速会えるなんて! 今日はとても幸先がいいわ!
王家の歴史100年分くらいは暗記出来る気がして来た!
(やっぱりシュナイダー様の顔を見れば不安なんて全て吹き飛んでしまうわ)
「キャロライン!」
「きゃあっ!?」
シュナイダー様は有無を言わさず私を抱きしめてくる。
ここは、廊下のなのに。嬉しいけれど、人目! 人目を気にして? シュナイダー様!
ほら、側近と護衛も目を逸らしてるじゃないのーー!
「あぁ、キャロラインはやっぱり僕の癒しだ!」
「……シュナイダー様? お疲れですか?」
「ん? あぁ、ごめんね。ちょっと周囲が煩くて」
シュナイダー様が一瞬だけ鋭い顔を見せた気がした。
煩い?
「でも、大丈夫だ。キャロラインの顔を見たら疲れも何もかもが吹き飛ぶよ」
「シュナイダー様ったら……大袈裟です」
「大袈裟なものか! 前から言ってるよね?」
そんな事を言いながらシュナイダー様は私の頬にキスを落とす。
何だかくすぐったい。
(うん、ほらね大丈夫! シュナイダー様は変わらない)
良くも悪くもいつもと変わらないシュナイダー様の様子に相変わらずチョロい私は安心した。
「そうだ、ちょうど良かったよ。キャロラインにお願い事があったんだ」
「私にお願い事ですか?」
私が聞き返すと、シュナイダー様は実はね……と語り始めた。
「え!? 聖女様が学園に通われるんですか?」
「うん。このまま何することも無く王宮で過ごしていてもね。本人もせっかくなら色んな事をしてみたいと言っているから、まずは学園に通わせるのはどうだろう? という事になったんだ」
シュナイダー様がそう説明してくれる。
「そうでしたか……」
「うん。だから、キャロライン。申し訳ないんだけど学園で彼女の面倒を見てやって貰えるかな?」
「私がですか?」
確かに慣れない国に一人でやって来ているんだもの。学園に通うのも不安はあるわよね。
(それに、私の知らない所でシュナイダー様と仲良く王宮で過ごされるよりは全然いいじゃないの!)
聖女様は王宮に滞在しているので、実を言えばその辺りもモヤモヤしていた。
自分がこんなにヤキモチ妬きだったなんて知らなかったわ。
「分かりました! 私にお任せ下さい、シュナイダー様」
「ありがとう、キャロライン」
シュナイダー様は安心したように笑ってくれた。
ふふ、シュナイダー様の喜ぶ顔が見られるならドンと来いよ!
好きな人に頼られるのは嬉しいもの!
そうして、聖女様……セイラ様は私と同じ学園に通う事になった。
そして、すぐに私はセイラ様の凄さを目の当たりにする。
「セイラ様って凄いですね……」
「何がですか?」
私のその言葉に、セイラ様は首を傾げている。
どうやら、彼女は自分の凄さというものを分かっていないらしい。
「編入して来たばかりなのに、ほぼ満点だなんて凄い以外の言葉が見つかりません」
「そ、そんな。た、たまたまです」
セイラ様は照れ臭そうに首を横に振った。
セイラ様が編入して直ぐに抜き打ちのテストがあり、今日はその結果が張り出された所だったのだけど……彼女はほぼ満点という成績を納め堂々の第1位に名前を連ねていた。
(きっと努力を欠かさない人なんだわ)
隣国では平民出身だと聞いていた。
そこから“聖女”として見出されてビーグル犬(違う)王子の婚約者となって……きっとそこには並々ならぬ努力があったに違いない。
(努力型なのね……凄くヒロインっぽいわ)
またしても、そんな事を考えてしまった。
どうして、こんなに不安になるのかしら?
メリダ様が現れた時と違ってシュナイダー様の気持ちも分かっているのに。
「キャロライン様?」
「あ、いえ、何でもないです」
「……そうですか?」
「えぇ」
セイラ様はあまり納得いっていない顔をしていたけれど、私は笑顔で押し切った。
「そう言えば、ずっと気になっていたのですが、キャロライン様とシュナイダー殿下の付き合いは長いのですか?」
「え?」
「あ! 変な意味では無いのです! お二人が本当に仲睦まじい様子でしたから、やはり付き合いも長いのかと思いまして気になってしまったのです」
「私が8歳、殿下が10歳の時に婚約しました」
懐かしいわ。
フラグ来たーーって、叫んでいたのよね。
シュナイダー様の事も勝手に俺様か腹黒かと決めつけて……
まさかの溺愛王子だったけれど!
「そんな前から……」
「……セイラ様は、ビー……ビーブル殿下とはどれくらい婚約を?」
聞いてもいいのかしら?
と、思いつつ訊ねてみた。
セイラ様は特に気にした様子もなく答えてくれた。
「私が聖女と見出されてからですから……3年ほどです」
「3年……」
それなのに、“真実の愛”とか言って浮気して! なんて王子なの!
7年も私への想いを拗らせていたシュナイダー様とは大違い!
「殿下の……“真実の愛”のお相手はどんな方だったのですか?」
「あ、それが……」
私のその質問にセイラ様は困った顔をした。
「ご、ごめんなさい! 軽々しく聞いていい事ではありませんでした……」
私が慌てて謝罪するとセイラ様は「違うのです……そうではなくて!」と焦ったように言う。
「……?」
「実は私……」
ゴクリ。
ドキドキしながらその言葉の続きを待った。
「殿下のその“真実の愛”のお相手が誰なのか知らないのです」
「へ?」
私の口からは何とも言えない間抜けな言葉が飛び出していた。
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