【完結】本物の聖女は私!? 妹に取って代わられた冷遇王女、通称・氷の貴公子様に拾われて幸せになります

Rohdea

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40. 王国の最期 ①

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「……マリアーナが民衆に偽聖女と呼ばれて、フルボッコにされている……ですか?」
 
  陛下がグォンドラ王国へと向かう出発の調整がついたとの連絡を貰ったので、王宮を訪ねると陛下は現時点でのグォンドラ王国の……主にあの人達の様子を教えてくれた。

「これまでも何度か起きていたが、王宮が焼け落ちた頃とほぼ同時に今までより大きな民衆の暴動が起きたようだ。マリアーナ王女はどうやらそのタイミングで帰国し、王宮に辿り着いたようだな。何とも間の悪い……これも天罰の一つだろうか……」
「暴動……“聖女”が誕生したはずなのに国が荒れてしまったから?」

  民衆は大いに期待した分、裏切られたという思いも強く出てしまった……
  それに長く続いた雨で大変な思いをしたのは、王族のあの人たちよりも民衆。これまで平和に暮らしていたのだから尚更だ。

「……そういう事だろう。完全に自業自得だな」
「にゃん!」

  ダグラス様とティティも決して同情はしない。
 
「にゃんにゃー!  にゃ!」
「……ティティが言うには、現在、神様はこれ以上の天罰を加えるのは止めたそうだ」
「止めた?  雨が止んだのはそのせい?」
「にゃ!  にゃん!」
「リディエンヌがこっちの国で幸せそうだから、もういいか、と溜飲が下がったらしい。だから、これ以上の天罰はやめてずっと国を護って来た加護を外したそうだ」

  気温が低下した……という話は神様の護りが無くなったから?
  護りが無くなるだけで、まさかそんなにも変わってしまうなんて。
  
「にゃん!  にゃー」
「……本来、グォンドラ王国はこの大陸内で最も悪条件の重なった国だったにゃ?」  
「にゃーん」
「このままでは、この国で生物は生きられない。そう思った神様は自分が護り加護を与える事でグォンドラ王国を安定させていたにゃ……だそうだ」
「……」

  生物は生きられないくらいの悪条件?
  ……グォンドラ王国の歴史を学んでも、そんな事はどこにも伝わっていない話……聞いた事がない。
  意図的に隠された話なのか、純粋にずっと誰も知らなかっただけなのか……
  でも、守護者であるティティが知っていて普通に話しているのだから、神様は歴代の聖女にちゃんと伝えていた気がする。だから、何となく前者かなと私は思った。

  (大陸の他の国と違って我らは神に護られている!  そんな傲慢な気持ちが、グォンドラ王国の王家の人達の心をどんどん歪ませていったのかも)

  だとすると悲しい。
  今は私の事を気に入ってくれているという神様。
  私はその気持ちに恥じない人間でありたいと改めて思った。

「……リディエンヌ王女」
「はい」

  陛下が神妙な顔をして私に声をかけた。

「これからのグォンドラ王国の事、本当にこちらに全て任せる、でいいのか?  はっきり言ってしまえば、現王族の彼らを追放して君が女王になる事だって……」
「私は女王にはなりません」

  私はキッパリとそう口にして首を横に振る。

「……私は、ただのリディエンヌとして大好きなダグラス様とティティとこのラッシェル国で生きていきたいので」
「リディエンヌ……」
「にゃ……」

  ダグラス様とティティがギュッと抱きついてくる。

「え?  ダグラス様もティティもどうしたのですか?」
「…………俺を、いや、俺達を選んでくれた事がたまらなく嬉しい」
「にゃん!」

  そう。
  私はもうここで生きていく。自分が居たい場所を見つけたから。



◆◆◆◆◆



「俺たちをバカにして楽しかったですか?  偽聖女さま?」
「失礼ね!  バカになんてしていな……」
「……していたから、こんな事になっているんだろ!?」
「ひっ!」

  (……何で、どうしてこんな事になってしまったの?)

  本当に何もかもがメチャクチャだ。

  ───どうして、王女である私が民衆に尋問されなくちゃならないのよ!?
 




  王宮に辿り着き、焼け落ちた建物を見て呆然としていたら聞こえて来た民衆達の怒りの声。
  彼らが詰め寄っていた相手は……

  (お父様!  お母様にお兄様まで!  やっぱり生きてた!)

  あそこにいるのは間違いなく私の家族。
  命からがら逃げ出したせいなのか、姿はボロボロ。特にお母様の自慢の髪はチリチリだった。
  やっぱり生きていたわね!  当然よ!  
  と、思ったけれど今はそれよりも……

  (聖女を出せ……だなんて)

  お父様達はそう詰め寄られていた。私がラッシェル国に行ったままだから、お父様はどうすべきか困っているように見えた。
  さすがの私でも、彼らが聖女である私を呼び出している理由が、チヤホヤする為ではない事くらいは分かっている。

  (やだ!  今、見つかったら私まであんな風になっちゃう!)

  そう考えた私は、竦んで動かない足をどうにかして“逃げる”つもりだった。  
  なのに───

「───マリアーナ王女、逃げるおつもりですか?」
「っ!!」
「あなたはこの光景を見ても家族である彼らも見捨てて自分だけは、と逃げようと言うのですか?」
「なっ」

  (ちょっ……なんでそこで大声で私の名前を呼ぶのよォ!?)

「ほぅ、そこにいたんですね、聖女様……いえ、マリアーナ殿下!」
「~~~っ!」

  リード様がそんな大声を出したものだから、私はあっさり彼らに見つかってしまった。


───


  (何がマリアーナ殿下は反省して罪を償うべき、よ!  リード様のバカ!)

  と、愛してたはずの婚約者に内心で憤っていたら、民衆達がまだ何か喚いている。

「そこまで言うなら、聖女だという証拠を見せて欲しいものだよな~」
「……っ!」
「確か、腕に印があるんだっけ?  儀式の時に掲げていたはず」

  そう言って彼らは私の腕を見た。

  (……まずいわ。腕に偽造した印はもう……)

  あの儀式の日にその場にいた神官は簡単に騙せた。そもそも模様は知っているけれど、どう浮かび上がるのかを知らない神官共なら正しい模様さえ描ければ騙せる!  そう思った。
  そこまでは上手くいったのに──……

  (ラッシェル国でも偽聖女とバレたし。グォンドラ王国も時間の問題……)

  どうして神様は私ではなくお姉様を選んだのよ!
  私を選んでくれていればこんな事にはならなかったのに!

「しかし、王女サマ?  何やらボロボロのようだけどその傷は火事とは関係なさそうな傷ですね?」
「確かに……」
「この王女様の事だから、皆が火事で逃げ回ってた間もどこかで遊んでいたんじゃないか?」
「あー有り得る」

  民衆共が私をバカにする。
  なんて奴らなの!  王宮を建て直して権威を取り戻した後は、牢屋にぶち込んでやりたいわ!

「そもそも、マリアーナ王女はは可愛い王女って言われていたもんな~」
「そうそう、顔だけ。肝心の頭の中身はな空っぽ……ははは」
「その傷じゃ、もう、その顔も武器には出来ないですね、王女サマ」
「……っ!」

  顔だけ……頭の中身は……空っぽ……
  私は、民衆にそんな風に思われていた事を初めて知った。

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