【完結】出来損ないと罵られ続けた“無能な姫”は、姉の代わりに嫁ぐ事になりましたが幸せです ~あなた達の後悔なんて知りません~

Rohdea

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第17話 愚かな人達

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「───クローディアが国から出て行ったから天変地異が起きている、だと?」
「は、はい!  もはやその事が原因としか思えません」

 王族の話し合いの場にやって来て、突然そんな進言をする臣下たちにアピリンツ国王は“こやつらは何をふざけたことを抜かしているのだ!”という思いで聞いていた。
 あの冴えない出来損ないの無能な娘にそんな秘められた力があるだと?  
 にわかには信じがたい話だった。

「……それだと、クローディアは何らかの“力”を持っていたという事になりますね」

 ブルームがそう言った。

「有り得ないわ!  あんな無能にそこまでの力があるわけないわ!  この件とは無関係よ。ねぇ、お母様!」
「……」

 臣下たちの手前、ナターシャは絶対にクローディアに力があるなんてことは認めない。
 王妃は力が無いので口を挟めない。
 ずっと無言だった。

「だが、ナターシャ。どうせクローディアは今頃、ファーレンハイト国王に身代わりがバレている頃だろう。国を謀った姫はこちらで始末するから返してもらえないか?  と交渉してみるのもいいかもしれない」
「お兄様!?」
「私だってあのクローディアに今更、力がなんて信じられない!  だが……一理ある」

 ブルームは考える。
 完璧だったはずの自分の守護が揺らいだのは何故だ?
 あの出来損ないの妹が何かしたのか。
 もし、本当にあの妹に何かしらの力があるなら、これからは大いに自分の役に立ってもらおう。
 ブルームの考えと興味はそれだけだった。

「いいえ!  もう、あんな出来損ないの顔なんてわたくしは見たくないの!  一緒に過ごすのもごめんですわよ!」

 ナターシャはクローディアがファーレンハイト国王に処分される事を心から望んでいる。
 その為にクローディアを陥れる為の手紙まで書いてもらった。
 だから、のこのこ帰って来るなんて絶対に絶対に許せない。

(今頃、クローディアはボロボロなぞんざいな扱いをされているに違いないもの!  ふふ、想像するだけで愉快よ!  笑いが止まらない!)

 クローディアの“力”に関して、半信半疑な国王。
 無関心な王妃。
 自分の事しか考えない王子フルールに、そして絶対に認めない王女ナターシャ……

 ───クローディア様を呼び戻したらどうか?
 という臣下たちからの意見に対する結論は平行線のままだった。


「……陛下、ファーレンハイト国から手紙が届いていますが?」

 どうしたものかと肩を落としたそんなタイミングで、アピリンツ国の王宮にファーレンハイト国からの手紙が届く。
 もしや、これは!

 ───我々が望んだのはナターシャ王女。クローディア王女なんていらないから送り返す。

 そんな内容の手紙では?
 臣下たちはそんな非道とも取れる内容の手紙ではないかと期待した。
 そうなればクローディア様は再び我が国に戻って来れるからこの天変地異の理由が色々確かめられる!  
 さぁ、クローディア様をさっさと追放して送り返してくれ!
 そう思った。

 ……が!

 手紙の内容を知った彼らは驚愕する。
 もちろん、国王達も。

「代替わりした……?  “花嫁”はこのまま、新国王が妃として娶る……?」

 まさか、身代わりなのも知っていて新しい国王はそのままクローディア様を妃にすると言っているのか!?
 そんな手紙の内容に全員が大きな衝撃を受けていると、ナターシャ王女が悲痛な声で叫んだ。

「嘘でしょう!?  何で処分しないの??  あの子が……あんな無能がファーレンハイト国の王妃になるですって!?」

(こんなはずではなかったのに!  まさか、新国王が誕生していたなんて最悪じゃないの!  ん?  新国王?)
  
 そこで、ナターシャはハッとある男性の姿を思い出す。

(そうよ!  ファーレンハイト国の王太子ってあの……有名な美形な方……ベルナルド殿下では!?)

 ナターシャは数年前に国の集まりでファーレンハイト国の王太子殿下を見かけた事があった。
 あんなに格好いい人は初めて見た、私につり合う最高の男!  と、心惹かれた事を思い出す。
 心をときめかせたものの、他国に嫁げない身だからと泣く泣く諦めた。

(嘘っ……あの時の殿下が、クローディアなんかの夫に……?)

 この瞬間、ナターシャの嫉妬心に火がついた。
 そんなの許せない。
 あんなに格好いい人となら、わたくしの方が相応しいし、何もかもつり合っている!

(そうよ!)

 いいことを思いついたナターシャはニヤリとほくそ笑む。

「───あなたたち!  そんなにもクローディアを呼び戻したいのなら、わたくしと交換するというのはどうかしら?」

 突然のナターシャの言葉に皆が首を傾げる。

「ファーレンハイトの新国王は、クローディアを妃に……つまり、我が国──アピリンツの王女を妃にするおつもりなのでしょう?  それなら、戻してくれないかもしれません」

 それは……と臣下たちも顔を見合わせる。

「ですから、わたくしとクローディアを交換すれば良いと思うのだけど、どうかしら?」

 ナターシャはにっこり笑って言う。

「わたくしがあの国の王妃となってクローディアは我が国に戻らせて、この現象の原因を探る!  これで全てが丸く収まるのではなくて?」

 ナターシャの全くもって相手の気持ち微塵も考えていない愚かなこの発言。
 この時、こんな天変地異などが起きておらず、この場にいる誰もが冷静だったなら……
 ナターシャのこの言葉はファーレンハイト国に再び喧嘩を売っている事は明白だったし咎めただろう。
 しかし……

「なるほど、交換……」
「緑の力のナターシャ王女を失うのは痛手だが……」
「だが、クローディア様よりナターシャ様の方が美しいし、新国王も喜ぶに違いない!」

 皆、この初めての緊急事態に動揺し狂っていた。
 だから、ナターシャのその発言をおかしいと感じて咎めるものは…………いなかった。



────……



(……温かい)

 そんな心地良さで目が覚めた。
 ずっとずっと身体が温かい。まるで“守られている”そんな気分。

「……あ!」

 後ろから私を抱きしめているのは、ベルナルド様だわ。
 温もりの正体を思い出しただけで自分の胸がドキドキし始める。

(そうよ私、昨夜、一緒に眠ったんだわ……ベルナルド様と)

 ベルナルド様のことを心の中で強く思った時だった。

「おはよう。俺の可愛いクローディア」
「!?」

 優しい声がしてギュッと後ろから抱きしめられた。

「お、起きていたのですか?  早起きなんですね!」
「うん……まぁ」

 ベルナルド様はそこは何とも歯切れの悪い返事。
 そして、さらに強く抱きしめられる。

「ベルナルド様?」
「クローディア。少し力を緩めるから、顔……こっちを向いてくれる?」
「は、はい!」

 私はベッドの中でゴソゴソと向きを変えてベルナルド様と向かい合う。

(ひぇっ!?)

 その破壊力に言葉を失う。

「おはよう、クローディア」
「お、おはよう、ございます」  

(ダメ、顔を直視出来ない!)

 昨夜はたくさん口付けは交わしたけれど、それ以上の事はしていない。
 ただ、抱きしめて眠っただけ……なのに!

(この照れくささは何ごと?)

 目が覚めたばかりなのにどんどん自分の顔が火照っていく。
 一方のベルナルド様は弾んだ声で言った。

「……あー、幸せだ……何これ、もう一生分の幸せを貰った気分」
「?」

 よく分からずそっと目線を合わせる。
 ベルナルド様は幸せそうに微笑んだ。

「目が覚めたら愛しい人が俺の腕の中!  クローディアは寝起きも可愛いね」
「お、大袈裟ですってば!」
「いいや?  大袈裟なものか……」

 そう言ってベルナルド様が向かい合わせになった私を抱き寄せた。
 そしてこう囁いた。

「愛してるよ、俺のクローディア」
「……!」

 ───あぁ、ベルナルド様ともう離れたくない。ずっとここにいさせて。

 強く強くそう思った。


 だけど、数日後。
 ファーレンハイト国にも、ちょっとした変化が起こり始めたその頃。
 私宛てに祖国からの手紙が届いた────……

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