【完結】出来損ないと罵られ続けた“無能な姫”は、姉の代わりに嫁ぐ事になりましたが幸せです ~あなた達の後悔なんて知りません~

Rohdea

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第18話 私の願い

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 ───クローディア。
 あなたのその心が曇らない事を願っているわ。私がいなくなっても誰か代わりにあなたを愛してくれる人が現れると良いのだけど。

 一人残される私の事を心配して、そう語っていたお母様。

(お母様、私ね?  愛する人を見つけて愛される事も知ったの)

 その人はね、ちょっぴり愛が重いけれど、すごくすごく私を大事にしてくれるのよ───




 コンコンと私の部屋の扉がノックされる。
 私はチラッと時計を見る。
 今日もなかなか遅い時間の訪問だった。
   
(本当に毎日、遅くまで大変な方だわ)

「お帰りなさいませ!  ベルナルド様。今日も一日お疲れさ……」
「クローディア!」

 私が笑顔で出迎えると、ベルナルド様が有無を言わさず抱きしめてくれる。
 ここはまだ部屋の入口だと言うのに。
 それでも嬉しいから私もギュッと抱きしめ返す。

「クローディアは凄いね」
「?  何がでしょう?」

 私が聞き返すと頭の上でベルナルド様がフッと微笑んだ気配がした。

「こうしてるだけで、疲れという疲れが全部吹き飛んでいくんだよ」
「そうは言いますけど……特別な事は何もしていないですよ?」
「そうなのかな?」
「そうですよ!  あ、でも」
「でも?」

 ベルナルド様が優しく聞き返してくれので、私は笑顔で答えた。

「私はベルナルド様の事が大好きなので、ベルナルド様の疲れが早く取れますように!  と願いを込めてこうしています!」
「くっ!  ……また、そんな可愛い事をそんな可愛い顔で……言う」

 ベルナルド様の顔があっという間に真っ赤になった。



 ファーレンハイト国で私が過ごすようになってから早数日。
 ベルナルド様はこうして毎晩、私の部屋にやって来ては一緒に眠るようになった。

(本当に一緒に眠るだけなの……ちょっとびっくり……)

「クローディア」
「はい…………あっ」

 ベルナルド様は愛しそうに私の名前を呼んでくれたので、そっと顔を上げるとそっと甘い口付けが降って来た。
 私は幸せを噛み締める。

「と……ところでさ、日に日にクローディアの格好がスケスケになっている気がするのだけど?」
「もちろん、悩殺続行中だからです!!」
「の……」

 部屋の入口で暫く互いの熱を堪能した後は、ベルナルド様は慣れた手付きで私をベッドに運ぶ。
 そして、ベッドに降ろされた所でガウンを脱がされる……というのがここ毎晩の決まった流れになっていた。
 そして、本日も同じ流れで脱がされた時、ベルナルド様が頬を染めて目をまん丸にしながら訊ねてきた。

(さすがベルナルド様!  なんて目ざといの!)

 そう。
 ベルナルド様の言う通りで、毎晩の私の夜着は少しずつだけど、色っぽい物へと変わっていった。

(ラブラブ恋人用にも種類がたくさんあるなんて知らなかったわ)

 最初に着たのは初々しいラブラブ恋人用。
 最近は新婚目前ラブラブ恋人用なのだと侍女は言っていた。

 侍女が「徐々に色っぽくしていって悩殺して、もっと陛下をメロメロにさせちゃおう作戦です」と言うので私はそれに全力で乗っかった。
 だって飽きられたくないもの!

「ベルナルド様は今までの中ではどれがお好みでしたか?」
「どれがって……それ聞く?」
    
 顔を真っ赤にしたベルナルド様は返答に困っている。

「え、選べない。どれも全てクローディアに似合っていて可愛くて……でも、今日くらいスケスケだと……色々と我慢が……」
「我慢?」
「うん。そろそろ……我慢するのも限界なんだ」
「え!  ひゃっ!?」

 突然、捕食者の様な目になったベルナルド様にそのまま押し倒される。
 そのまま、額、頬などに口付けをされ、チュッと首筋にも吸い付かれた。

「あ……ベルナルド様、それ……」
「ん?」
「く、び……痕、が」
「うん?  ああ、これはわざと残している。クローディアが俺の可愛いクローディアだって印だ」

 チュッ……
 そう言ってまた一つ、私の身体にそっと痕を残していくベルナルド様。

「~~も、もう!  これ結構、見られるの恥ずかしいんですよ?  聞いてますか?  ベルナ…………んっ」

 私の抗議は甘い唇に塞がれて言葉に出来ない。

「いやいや、そんな可愛い顔をして、誘惑するクローディアがいけないんだよ」
「え、それは……あ、ベル……」
「俺のクローディアは本当に可愛い……」
「ん……」

 侍女考案のもっと陛下をメロメロにしちゃおう作戦の結果は、息が苦しくなるくらいの甘くて幸せな口付け攻撃が待っていた。


───


「そうだ───クローディア。実はさ最近、ちょっと我が国で不思議な事が起きているんだ」
「ふ、不思議な事……ですか?」

 ベルナルド様は私の身体をたっぷり堪能した後、そっと体勢を変えるとポツリポツリと話し出した。

「些細と言えば些細な事だったりするんだけれど、でも……」
「?」
「例えば……枯れ気味だった田畑が完全復活したり、農業に適していない土地だと分かっていたけれどダメ元で植えてみていた作物が実り始めたり……」
「まあ!」

 私が声を弾ませるとベルナルド様が苦笑する。

「一つ一つはこんな感じで些細な事だったりするんだけど──あまりにも件数が多い」
「……」
「ああ。あと、魔獣の目撃情報がガクンっと減ったかな。結構退治するのに手を焼いていたんだけど」
「……」

 ベルナルド様はそう言いながら、最近報告を受けたという不思議な事をいくつか語って聞かせてくれた。
  
「クローディア?  どうかした?」
「はい?」
「いや、段々無言になっていったから。何か心当たりでもあった?」
「……」

 そう言われるとあるような無いような……
 私はそんな複雑な表情をベルナルド様に向けた。

(だって……)

 ファーレンハイト国に入国して王宮に向かうまでの間、色々な土地を通った時に私は思った。
 意外と田畑が荒れているわ、と。
 それに、国境越えたすぐ後には魔獣が出るから気を付けてと注意を受けたし、実際何度か遭遇しては護衛に助けられていた。

(どれもこれも祖国ではあまり見られなかった光景で驚いたの……)

 だから、私は願った。
 ファーレンハイト国も、祖国みたいに緑豊かで自然溢れる土地になるといいなって。
 農作物もちゃんと実るといいなって。
 そして、魔獣も。
 国の安全を脅かす存在はご遠慮願いたい、と。

(不思議だわ。まるであの時の私のが天に届いたみたい──……)

 ふふっと、ベルナルド様の温もりに身を任せながら、私はそんな事を考えていた。




 ───その手紙が届いたのはそれから更に数日後。

「クローディア。アピリンツ国から君宛に手紙が届いている」

 まだ、昼間なのに私の部屋を訪ねて来たベルナルド様は一通の手紙を持っていた。
 私の眉間に皺が寄る。

「え?  今更ですか?」
「そう。今更。どういうつもりなんだろうね?」
「……」

 中身は読まなくたって分かるわ。
 あの人たちからの手紙にまともな事が書かれているはずがない。

(読まずに散り散りに破り捨ててしまいたいわ!)

「どうする?  どうせゴミみたいな内容しか書いていないだろうから破る?  燃やす?」

 ベルナルド様も私と同じ様な事を思っていたのが分かって思わず笑ってしまった。

「ふふ……」

 そんな私を見たベルナルド様は肩を竦める。

「そもそも、俺の可愛いクローディアにそんな曇り顔をさせる所からして彼らは許し難いんだよ」
「まあ!  ベルナルド様ったら」
「本当だよ」

 そう言って優しく私の額に口付けを落とすベルナルド様。
 “愛”を感じて嬉しくなる。

「ありがとうございます。でも、とりあえず中は読んでみます」
「うん、分かった」

 そうして手紙を受け取り、開封した祖国からの手紙───

「!」

 私は目を大きく見開き、ヒュッと息を呑んだ。

 その手紙の内容は、無理やりファーレンハイト国に嫁がせた私を気遣う言葉などは一つも書かれておらず……
   
 ───アピリンツ国内で再度、色々検討した決定事項として、
 ファーレンハイト国王へと差し出す花嫁は、当初の予定通りナターシャに戻すことにした。
 既にナターシャは国を出発しファーレンハイトに向かっている。
 到着したら速やかにナターシャに立場を譲ってクローディアは帰国しろ。

 と、いうかなり自分勝手な横暴とも言える内容が書かれていた。
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