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第25話 会いに行く
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「陛下! 本気ですか? 本気であなた自らクローディアに会いに……」
「マデリン、執拗いぞ」
「ですが……!」
その頃。
アピリンツ国の王宮では、王と王妃が揉めていた。
それは先日、クローディアを一旦国に戻してくれというファーレンハイトの国王に送った手紙の返信が“会いたければ自分達で来い”というものだった為、国王が自ら動こうとしていたからだった。
「それに、ナターシャもブルームも何故かファーレンハイトに入国出来ないと言うではないか! それに他にもそういう者がチラホラ居ると聞いた。どういう事なのかも確かめた方がいいだろう?」
「なっ」
これまで散々引きこもっていたくせに偉そうにそう語る国王に王妃マデリンは呆れる。
「陛下……あなたはクローディアが国に戻ってくればこのおかしな現象は収まると本当にお思いですか? クローディアには何かの力があると……?」
「クローディアは無能だ。それは誰もが知っている話だ。違うと言い続けていたのはロディナだけだった」
「……っ」
ロディナの名に王妃の顔色が変わる。
だが、国王はそのことには一切気付かないまま話を続ける。
「ロディナもそうだったが、未だにクローディアには大きな力があると信じている貴族もいるからな。この機会にハッキリさせるべきだろう」
「ですが陛下……万が一、本当にクローディアが国に戻るだけでこの天変地異が収まった時はどうするのです?」
「ははっ! 有り得んだろう」
国王は馬鹿にしたように鼻で笑う。
「だが、そうだな。万が一、そんな事が起きた場合は──……」
────
「……ん、眩し……」
「クローディア、おはよう」
「!」
目が覚めると、朝からベルナルド様の麗しいお顔が至近距離にあって心臓が飛び出しそうになる。
「お、おはようございます……」
「ああ、今日も可愛いね? 俺のクローディア」
「……っ」
そう言って甘い言葉を囁き、私の腰に手を回して身体を抱き寄せてもう片方の手で私の髪を梳くベルナルド様。
(何度迎えても、この目覚めだけは慣れないわーー!)
おかげで毎朝、ドキドキが止まらない。
そんな私の気も知らずに今日も朝からベルナルド様は絶好調だった。
「クローディア……柔らかくて気持ちいい」
「そ、そういうことは思っても口に出さないで下さい……」
あまりの恥ずかしさに私がそう答えると、ベルナルド様は可笑しそうに声を立てて笑う。
「本当のことだからなぁ……早く結婚したい。そしてもっと触れたい」
「……っ!!」
「あれ? クローディア、照れてる?」
「……ませんっ!」
絶対に今、私の顔は赤い。
口で反論しても無駄だと分かっていてもついついそう言ってしまう。
「ははは、クローディアのそういう所も可愛くて大好きだ」
「~~っっ!」
そう言ってベルナルド様は腰に回している手にギュッと力を込めた。
──
「クローディア様、そちらのヴェールを被って行かれるのですか?」
「え、ええ。陛下……ベルナルド様が絶対に着けてくれと言うものですから」
「あらあら、まあ!」
ベルナルド様の来るなら来い!
という強気な返信を受けて、お父様は激怒するかと思いきや、本当にファーレンハイト国を訪ねて来るという。
しかも王妃……お義母様まで伴って。
(まさか、お父様が自ら動くとは思わなかったわ)
だけど、きっとお父様もお義母様も国境を越える事は出来ない。
それならば、そこで決着を付けてしまおうとベルナルド様は言った。
よって今は、私もその国境に向かう準備を進めている所だった。
そこで何故かベルナルド様は、
「外に出る時は、あのこの国に来た時に着けていたというヴェールを着けていて欲しい」
と言った。
「陛下は、クローディア様の美しさを隠しておきたいのですね?」
「え? 美しさ??」
「何故、驚かれるのですか? だってそうでしょう? クローディア様はとてもお綺麗な方ですから」
「……私が?」
確かにベルナルド様は、可愛い可愛いとよく言ってくださるけれど、それは完全に単なる贔屓目の欲目だと私は思っている。
「私はナターシャ王女ではないのよ?」
「いえいえ、クローディア様。私は初めてヴェールを脱いだクローディア様を見た時、なんて綺麗な方なのだろうかと思い言葉を失いました」
「ええ?」
私はあの時の様子を思い出す。
(あの沈黙は、大陸一の美姫が思っていたのと違う……ではなかったの?)
「後に、陛下がクローディア様に一目惚れしていたと聞いて納得しました」
「え、えっと……?」
戸惑う私に侍女はにっこり笑って告げる。
「クローディア様、どうか自信を持って下さい。クローディア様はとてもお綺麗で可愛らしくて……あ、それで陛下はもうメロメロですね! 悩殺されまくりですよ!」
「……え、いや、あの……」
「陛下はクローディア様と出会ってから本当に毎日お幸せそうです」
「それなら、良かった……けれど」
私が照れると彼女は目を伏せた。
「…………陛下にはもう他に家族がいませんから」
「あ!」
そうだった。
ベルナルド様はローランド前陛下を亡くし、お母様もとっくに亡くされている。
(家族がいない……)
「陛下はクローディア様と家族になれる日を今か今かと待っていますからね」
「……私も」
早くベルナルド様の家族になりたい。
(───その為にも、あの人達を何とかしなくては!)
私は改めてそう強く思った。
◇◇◇
「うーん…………俺が言い出したことではあるんだけれど、クローディアの可愛い顔が全く分からない」
「……」
出発の時、ヴェールを被って現れた私にベルナルド様が嘆いた。
「余計な虫はつかなくていいけど、何だろう……こう勿体ないという思いがムクムクと湧いてくる……」
「ベルナルド様ったら」
何だかいつもの調子のベルナルド様にホッとした。
(ふふ……)
「あ、クローディア。今笑ったね?」
「うっ! わ、分かりましたか?」
「もちろん、顔が見えなくても分かるさ。俺の可愛いクローディアのことなんだから」
「……」
ベルナルド様がまたまたいい笑顔でそう言い切る。
「あ、今度は照れた」
「!!」
「ははは! それじゃ、行こうか。可愛い可愛い俺のクローディア」
「は、はい」
やっばり何もかも見抜かれながら差し出された手に私はそっと自分の手を重ねる。
そして私たちは馬車へと乗り込んだ。
「そういえば……」
「?」
馬車の中から、ファーレンハイトの街並みを興味深く眺めていると、隣に座っていたベルナルド様が小さな声で呟く。
「クローディアと一緒に外に出かけた事ってないんだな」
「あ……そうですね。私はファーレンハイトに着いてから王宮の外には出ていませんから」
「……」
「……ベルナルド様?」
ベルナルド様が無言になったので首を傾げていると、そっと抱き寄せられた。
そして私の耳元で囁く。
「全部片付いたら、一緒に出かけよう? クローディア」
「!」
「護衛はつくから完全に二人っきりは無理だけど、それでも」
「……お忙しいのでは?」
「ははは、クローディアの為ならいくらだって時間を作るよ」
「ベルナルド様……」
(その言葉が嬉しい……)
「ありがとうございます! 楽しみにしています!」
私が笑顔で答えたら、ベルナルド様がまた沈黙する。
なんだか身体も震えている?
「ベルナルド様?」
「くっ…………ヴェール越しでも分かるこの可愛さは何なんだーー!」
「え!?」
「俺のクローディアはやっぱりどんな格好でも何をしていても可愛いーー!」
「ベルナ……」
そう言って、ベルナルド様は私のヴェールを捲りあげてチュッと口付けをした。
私はびっくりしてベルナルド様を見つめ返す。
「クローディアの可愛い顔だ……」
「な、何ですかそれ?」
ベルナルド様はふふん、と嬉しそうに笑う。
「俺のことが大好きだと言ってる顔だよ」
「だって……大好きですから」
そう言って私は自分からそっとベルナルド様の首に腕を回す。
すると、もう一度優しい口付けが降って来た。
ベルナルド様のこれでもか、というたくさんの愛を受けながら私は、
(全てを綺麗さっぱり片付けて、ベルナルド様ともっとイチャイチャ……そして、二人でお出かけするのよ!)
新たな野望を胸に秘め私は国境へと向かった。
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