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しおりを挟む「もう! や、やり過ぎですよ!」
「ははは!」
色んな意味で大騒ぎとなったパーティーを終え、今、私達は帰る為の馬車に乗っている。
ロディオ様は律儀に私を屋敷まで送ってくれると言った。
「一人で帰れますよ?」と言ったのだけど、そこは“恋人”としてちゃんと送らせて欲しい、そう言うので甘える事にした。
(言われてみれば、確かに恋人なら屋敷まで送るのが普通よね……)
そうして乗り込んだ馬車の車内で私は、今日のことを振り返り文句を言わずにはいられなかった。
マッフィー様との婚約阻止の為に“恋人”を引き受けてくれた事には感謝しかない。
でも、凄かった。
なんか凄かった!
頬へのふにふにとか、ち……ちゅう……とか!
何度、心臓が飛び出すかと思ったわ。
「わ、笑う所ですか!? アンジェーラ様を始め、多くの令嬢が倒れてしまったんですよ! もう、これは事件です!」
「ははは!」
私が何を言ってもロディオ様は笑うばかり。
私達の関係が親密なのだと周囲にアピールは出来たとは思うけど……けど!
「はは、でもさ、マッフィーは俺たちの関係を疑ったまま帰ってしまったけど、残った人達にはたくさんアピール出来たんだから良かっただろ?」
「そ、それは、そうなんですけど」
「これなら、マッフィーが今後“嘘だ”とか騒いでも周りがお前の方こそ何言っているんだって目で見られるはずだ」
「!」
そう言われると何も言えない。
ロディオ様のおかげで色々と助かった事は事実だ。
「……あ、ありがとうございます」
私がお礼を言うと、ロディオ様はまたあの笑顔を向けて言った。
「お礼なんていらないよ、俺の可愛い恋人」
「────っ!!」
(その笑顔は反則よーー!)
極上の笑顔に思わず私が見惚れてしまっていると、何故か向かい側に座っていたロディオ様が、私の隣に移動して来た。
(密着ぅぅ!)
「ど、ど、どうしたんですか?」
「……色々あって、ソフィア疲れてると思って」
「え?」
ロディオ様は驚いている私の肩に腕を回すと、やや強引に私の頭を自分の肩に寄りかからせた。
(!?!?)
「屋敷に着いたら、ちゃんと起こすからそれまで眠っているといいよ」
「こ、これは……?」
「肩を貸そうと思って」
「……!」
こ、こんなのドキドキして眠れるわけが無ー……
(……あ、あれ?)
そう思ったのに、自分で思っている以上にやっぱり疲れていたのか、瞼がだんだん重くなってくる。
この温もりも、何だか心地良い──……
そのうち、うとうとし始めた。
「……」
「…………おやすみ、ソフィア」
ロディオ様の優しい声を最後に私はそのままロディオ様の肩に寄りかかって眠りに落ちた───……
────────……
『ソフィア・イッフェンバルド男爵令嬢の死因は毒殺か……』
ロディオにとって、マッフィー・ミスフリン侯爵子息は、ちょっと面倒な友人だった。
同い年で同じ家格の侯爵子息である事から、周囲に比べられる事が多かった二人。
特にマッフィー・ミスフリン侯爵子息はプライドも高く、よくロディオをライバル視してくる事が多かった。
(事ある毎に噛み付いて来る様子さえ無ければ悪くない友人なんだけどな)
ロディオはそんな事を思いながらも、婚約者を亡くして別人のように元気を無くしてしまったマッフィーを放ってはおけなかった。
(病気や事故……ではなく、明らかに他殺だったからな)
ロディオはマッフィーの婚約者の事はよく知らない。名前だけだ。
会った事は無いが、こんな理不尽な形で未来を奪われた彼女が気の毒でならない。
すぐに見つかるかと思った犯人探しは思っていたより難航しているらしい。
マッフィーの為にも、彼女──ソフィア嬢の為にも犯人の手がかりをみつけたい。ロディオはそんな思いで事件の事を調べる事にした。
毒殺されたソフィア・イッフェンバルド男爵令嬢はお茶を好んでよく飲んでいたという。
財力のある男爵家は変わった茶葉もよく取り寄せていたそうだ。
どうも、毒は茶葉に仕掛けられていたらしい。
それに家の伝手を使って関係者に聞いたところ、ソフィア嬢は検死の結果───……
様々な情報を入手したロディオは男爵家がよく購入していたという街の茶葉販売店を訪ねて見る事にした。
ロディオが店に入り、店内を物色していると店員らしき人が近付いて声をかけて来た。
『何かお探しですか?』
少し甘めの可愛らしい声。その声につられてロディオは振り返った────
─────……
…………フニッ
──ん? 何だろう? フニッ?
(もう! せっかくいい所なのにーー!! ヒーローとヒロインが出会……)
「……柔ら……か……」
──ヒーロー!?
そこで、バチッと目が覚めた。
「……っ!!」
「?」
頭の上から小さく息を呑む気配を感じた。
……ロディオ様だ。
何に彼は驚いたのー? そう思ってふと気付く。
彼の右手が私の頬に触れている。まるで優しく撫でるように。
「……」
ロディオ様の左手は彼に寄りかかっている私の肩を抱いている。
しかし、この右手は何故、私の頬に?
「…………やぁ、ソフィア! 目が覚めた……みたいだね?」
「……」
ロディオ様が、そぅっと私の頬から手を離していく。目が泳いでる。
いかにも疚しい事がありました!
そんな目だ!
「……ロディオ様、その、今、私の頬から離れていくそれは何でしょう?」
「…………何だろう?」
「私にはあなたの手に見えます」
「…………そうか」
「……」
「……」
ロディオ様は、素直に犯行を認める気は無いらしい。
でもね? ロディオ様、バレバレよ!
何よりあなたのその顔! 真っ赤じゃないのーー!!
……しかも、そうよ! 目が覚める直前に「……柔ら……か……」って声も聞いたわ!
(これは、現行犯よ!!)
私はだんだん意識がはっきりして来たので、ロディオ様に詰め寄る事にした。
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