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しおりを挟む「ロディオ様……」
「ソフィア?」
連行されて行く二人を見守っていたロディオ様がこっちに振り向く。
──名前を呼んだのはいいけれど、なんて言えば良いのかしら?
その前に聞きたい事もたくさんあるし……
(何でキ……モニョモニョ……したの? とか、さっきの愛してるって何? とか)
言いたい事、聞きたい事がたくさんあり過ぎる。
(……でも、一番言いたい事は……)
「ロディオ様、手を」
「手?」
ロディオ様は首を傾げながらも私に手を差し出す。私はその手をそっと取って私の頬へと持っていく。
ふに……
「……ソ、ソフィア? 何で自分から……」
「ロディオ様……私はこんな頬しか持たない身ですけど、あなたが好き……好きなのです」
「……ソフィア?」
ふにふに……
ロディオ様が驚き目を丸くしたまま固まる。
「わ、私を選んで下されば……えっと、その、こんな風に、こ、これからもずっとふにふにし放題です!」
「ふにふにし放題」
ふにふにふに……
(何だか自分から、頬をふにふにさせるのって恥ずかしい……!)
でも、この頬っぺたでしかロディオ様を振り向かせる方法が無いんだもの!
と、私は自分自身に喝を入れる。
「まずはこの頬からでも構いません! だから、ロディオ様! 私と本当の……」
「ソフィア!」
フニッ!
「!!」
ロディオ様が再びフニッと私の唇を塞ぐ。
(ま、また!?)
「ソフィア……」
「んっ……!」
フニッ、フニッ
「君は本当に小悪魔だ……」
「んん……っ」
フニッ、フニッフニッ……
「ここまでされてなんで気付かないんだ!?」
「……?」
ロディオ様からの唇へのキ……モニョモニョ……が続く。全然止まる気配が無い。
令嬢達のまた始まったぁぁぁ、なんて泣き叫ぶ声が遠くに感じるほど、ロディオ様しか見えない。
フニッ、フニッ、フニッ、フニッ……
「ソフィア。俺は君を愛してる…………ずっと言っている。もうソフィア、君は俺の嫁だと」
「ひゃっ!?」
そう言ったロディオ様は、突然私を抱き抱えて横抱きにした。
そして、そのまま歩き出す。
「ロ、ロディオ様……?」
「さっき言っただろう? 今夜は帰れないよ、と」
「……え? ですからそれって……どういう……」
「……」
戸惑う私に向けて、破壊力満点の笑顔でニッコリと微笑んだロディオ様は、そのまま私の質問に答える事の無いまま歩き続け、会場の外に出る時に伯爵家の使用人と思える人に何かを告げ、やり取りをしていた。
「……?? ロディオ……様?」
「どうもさ、俺の可愛い可愛いお嫁さんは鈍すぎるみたいでね。ちっとも俺の気持ちに気付かないんだ」
廊下を歩きながらロディオ様がそうポツポツと話す。
「なのに、物凄い誘惑してくるんだよ」
「えっと?」
「だから、俺の薄っぺら~~い理性は旅に出てしまったので…………お、ここだ」
そう言ってロディオ様はある一室の部屋の扉の鍵を開けるとそのまま中へと入った。その後、ガチャっと鍵をかけると抱えていた私をベッドに降ろして座らせ、自身もその横に腰をおろす。
「……」
えっと、これって……
今夜は帰れない……この部屋にお泊まり…………え? つまり……?
私が混乱した頭の中を整理しようとしていたら──
フニフニ……
ロディオ様が私の頬をふにふにし始めた。
「君が好きだよ、ソフィア」
「……ほっぺ」
私が反射的にそう答えるとロディオ様は少し驚いた顔を見せる。
「ふにふにし過ぎたから、そう思ってしまうのも仕方ないのか……ソフィアのその魅惑の頬っぺたも大好きだが、俺はソフィア自身、君の事が好きだ」
「!!」
フニフニフニフニ……
「ふ、ふにふにしながら言われても、説得力に欠けます……」
フニフニフニフニフニフニ……
「うん、まぁ、それはその通りなんだけどね」
「……」
フニフニフニフニフニフニフニ……
「君の、強さや真っ直ぐさ、物怖じしないで明け透けな所もいい。すぐ顔を赤くするのも可愛いし、涙目で上目遣いされた時なんて……」
「ロ、ロディオ様!! な、何を言い出して……!」
フニフニフニフニフニフニフニフニフニ……ギュッ!
「あ……」
恥ずかしさのあまり、詰め寄ろうとしたらそのまま抱きしめられた。
「頬っぺた以外のソフィアの好きな所、可愛いところを語っているのに止めないでくれよ」
「なっ!」
「こんなにもソフィアの事を愛してるのに“愛が足りない”なんて言われるとは思ってもみなかった」
「あ、あれは──……」
頬っぺた以外も愛して欲しくて───……
「ソフィア。俺は頬っぺたが好きなわけじゃないよ」
フニフニフニフニフニフニフニフニフニフニフニフニ……
ロディオ様は真剣な顔でどう考えても行動と噛み合っていない事を口にする。
「……」
「そんな目をしないでくれ! 俺は、可愛くて大好きなソフィアの身体の一部だから好きなんだよ。だから例え今後、どんなにモチモチで柔らかな頬っぺたの持ち主が目の前に現れようとも、俺がふにふにしたいのはソフィアだけだよ」
「……ロディオ……様 」
フニッ!
ロディオ様の唇が私の唇に重なる。
そして、そのままベッドの上に押し倒され、私の上にロディオ様が覆い被さって来る。
さり気なく手も絡められ、私は逃げられない。
(な、何この体勢ーー!? え、待って、ロディオ様、これって本気で……?)
内心大慌ての私の気持ちを分かっているのかいないのか、そのままの体勢で話を続ける。
「……ソフィアは、俺との婚約を期間限定……半年? マッフィーをどうにかするまでの間だけの関係だと思っていたみたいだけど──」
「あ……」
「契約なんかじゃない。俺はずっとずっと本気だったよ?」
「!!」
フニッ、フニッ!
(あ、甘い……ロディオ様からの言葉とキ……スが甘くて頭の中がデロンデロンになりそう!)
「ソフィアはもう俺の嫁。ずっとそう思って接してる」
「ロディ…… 」
フニッ、フニッ、フニッ!
「あぁ、そうだ。安心して? 侯爵家は君を迎える準備は出来ている。今すぐ嫁に来ても問題無い」
「今……すぐ?」
ロディオ様が笑顔でとんでもない事を言い出した!!
フニッフニッ、フニッ、フニッ!
「まぁ、ソフィアの気持ちもあるし、男爵が泣いちゃいそうだから、君を本格的に連れ去るのはもう少し我慢するけどね……でも」
「でも?」
「今夜は帰さない。それで、俺の妄想ではなく本当のお嫁さんになって? …………ソフィア?」
「!!」
ずるい! なんてずるいの! 今、最後の“ソフィア”を耳元で囁いたーー!!
「……ははは、可愛い。強気なソフィアも大好きだが、ヘニョヘニョになってるソフィアも可愛い。可愛いしかない」
「んんっ……あっ、ロディオ、様」
ロディオ様はそんな事を言いながら、私のドレスにそっと手をかけ緩めていく。
「今夜は……全身、フニフニさせてね? ソフィア」
「~~~っ!!」
フニフニフニ……
────その晩、ロディオ様の愛(ふにふに)は止まること無く続いた。
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