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第1章
5. 頻繁に届く贈り物
しおりを挟む「お嬢様、いつものお届けものです」
先日、無事に社交界デビューを無事に終えた私の元には、頻繁にお茶会へのお誘いやお祝いの贈り物が届くようになった。
私とお近付きになりたい人は多いらしい。
ランバルド公爵家という我が家の力を改めて思い知った。
社交界デビューした事で、もしや……と、心配していたニコラス殿下との縁談の話は、今のところ特に持ち上がっていないようで、私はとりあえず安堵していた。
安堵ついでにこれだけのお誘いや贈り物が届くのだ。もしや縁談の一つや二つ来ているのでは、と思いダメ元でお父様に話を振ってみるも、今までのように困った顔をして首を横に振るだけだった。
……どうやら、そっち方面での私は人気が無いらしい。
なので、相変わらず先手を打って別の人と婚約して逃げるのは難しそうだった。
やっぱり、いずれどこかのタイミングでニコラス殿下と婚約する事になるのかも、と思うとちょっと落ち込んだ。
そして、今日も私の元には贈り物が届いている。
サラのこの言い方。
それは、数々のお誘いと贈り物の中でも、やたらと頻繁に届く贈り物を指している。
その贈り主は──
「……もしかして、また?」
「はい……また、あの御方からです」
「…………」
あの御方──そう。フリード殿下。
あれから私の社交界デビューの日以降、私の元にはフリード殿下から定期的にお花と手紙が届くようになった。
大きな花束では無い所にちょっとした気遣いを感じる……が、とにかく頻繁なのだ!
「今日は、リナリアの花ね」
確か、今まで頂いたのは黄色の薔薇から始まって、ペチュニア、ロベリア、パンジー、サンタビリア……
「毎度毎度、律儀よねぇ」
「………………」
「サラ、どうかした?」
サラはいつも贈られてくる花を見ては何か言いたそうな顔をする。
だけど、聞いても答えてくれないのよね。
自分で考えて下さいって言われたわ。
「…………どこまで続く事になるの……不憫だわ……」
サラが小さく呟いた。
「サラ?」
「あ、何でもありません。今日も綺麗なお花ですね!」
「そうね……だけど、いつも手紙も特に用事があるって感じじゃないし、フリード殿下は何がしたいのかし……あ! もしかして友人がいない私を気遣ってくれてるのかな?」
「お嬢様……?」
今まで引きこもっていた私には友人と呼べるほど親しい人がまだいない。
フリード殿下からの手紙の内容は、単なる時候の挨拶だったり、私の健康をうかがうような内容ばかりなので、特に用事があるわけでな無さそうなのだ。
なのに、わざわざ手紙を送り、私の事をこんなに気にかけてくれている。
7年前の罪滅ぼしをあんな形でする人だもの。
私が、ずっと引きこもって友人がいない事を自分の責任だと思ってるのかも!
理由は何であれ、こうして届く花や手紙は……とても嬉しい。
あまりにも嬉しかったので、花は枯れる前に押し花にして残してある。
だってせっかく綺麗な花なんだもの、どうにかしてとっておきたいじゃない?
この世界にはカメラが無いのが残念で仕方なかった。
「お返事書かれますか?」
「えぇ、そうね。サラ、紙とペンをちょうだい」
王子様相手に文通なんて言うにはおそれ多いけれど、でも私はフリード殿下とのこんなやり取りをひっそり楽しんでいた。
◇◇◇
「今日は、ベゴニア? 本当に毎度毎度違うお花ばっかり。凄いわ」
「…………」
「サラ? どうかした?」
今日も相変わらず、贈られた花を見たサラは変な顔をしている。
ここまで来るとさすがに気になってしょうがないのだけど。
だけど分からないのよ……
別に変わった花や珍しい花を贈られているわけでは無いのに。
「いえ、今日もキレイな花ですね!」
「えぇ、そうねー……あら?」
いつものように同封されていた手紙を開封すると、今日の手紙の内容はいつもと違っていた。
“5日後、もし良ければ一緒に街に行かないか?”
そんな事が書かれていた。
「一緒に街に……?」
「あらあら、お嬢様!! これは……デー」
「何か視察でもあるのかしらね」
「…………えっ!」
サラが今までにないくらい吃驚した顔を向けてくる。
「だって、そうでしょう? 王子様が街に行くのって視察が目的よね?」
「………………」
「何で私を誘って……あ! あのデビューの日に私が街に行った事が無いって話をした事を覚えていてくれたのかしら?」
雑談している時にそんな話をした記憶がある。
私がそんな事を思い出していたら、サラが何かに絶望したような顔をしていた。
「サラ?」
……何でこの世の終わりみたいな顔してるのよ?
「私はお嬢様の将来が心配です……」
……何で未来の心配されてるの、私。
ちなみに、その後、
『視察ですか?』
と、返事をしたら、
『違う。お忍びで出かけるんだ。もちろん護衛はいる』
と返信が来た。
視察じゃ無かった。
何故私が誘われるのだ……? と思わなくも無いけれど、あんな些細な話を覚えていてくれて、街へのお出かけを誘ってくれたのだとしたら、これも罪滅ぼしの一つなのかもしれない。
だけど、何で私は婚約者となるはずのヒーローであるニコラス殿下とではなく、モブのフリード殿下と仲を深めているんだろう?
まだ物語は開始していないからそういう事もあるのかな?
すでにストーリーが変わっている所は変わってるわけだしね、と思いとりあえず納得した。
◇◇◇
街へ出かけるにはお父様の許可が必要なので、確認したところ最初は驚いてたけれど、「殿下と殿下の護衛がいるなら、大丈夫だろう」と言ってくれたので、私は喜んで承諾の返事を返した。
殿下からも「楽しみにしている」って返事が来た。
「ねぇねぇ、お忍びって事は目立たない格好の方がいいのよね?」
「そうですねぇ……」
サラは、街に行けると目を輝かせている私とは対照的に困った表情を浮かべながら言った。
「お嬢様もフリード殿下も、どんなに目立たない格好をしても、滲み出るオーラは隠し切れない気がします」
「え? 何言ってるの? 殿下ならともかく私はそんな事無いわよ」
「……お嬢様……」
この時、サラが残念そうな子を見るような目をしていたのだけれど、私は全く気付かず、
「けど、まさか街に行けるなんて思ってなかったわ! 楽しみ!!」
と、浮かれまくっていた。
これまで私の世界は狭かった。
護衛を連れていけば街に行く事も許可されただろうけど、私はなるべく外に出ない日々を過ごしていた。
婚約云々の心配事だけでなく、筆頭公爵家の娘である私は、自由気ままに動き回るには色々と面倒な事が付き纏う。
けれど自分で決めた事とはいえ、やはりどこか寂しかったのは事実だ。
「最近の……殿下と交流をはかるようになってからのお嬢様は毎日が楽しそうですね?」
「え? そう、かしら?」
「はい。以前よりも表情が豊かになりましたよ」
そう言ってサラが微笑む。
正直、自分ではよく分からないけれど、昔から私の事を見てきたサラが言うのだから、きっとその通りなのだろう。
確かに、殿下から頻繁に届くお花は今日は何だろう? って楽しみにしてるし、手紙を送り合うのも楽しい。
そう考えたら、何だかムズムズした気持ちになった。
「楽しんで来てくださいね、お嬢様!」
「えぇ!」
サラの言葉に私は満面の笑みで答えた。
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