【完結】モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした

Rohdea

文字の大きさ
14 / 43
第2章

side フリード②

しおりを挟む

「どういう事なんだ!?」

  俺は留学先のカーチェラ国の部屋で頭を抱えていた。
  その原因は……

  先日、スフィア……フィーから届いた手紙だ。
  何度も何度も読み返したが文面は変わらない。

「もう手紙を書けない?  俺からの手紙も受け取れないって何だよ……!」

  フィーに何があった?
  俺は嫌われるような事をしてしまったのか?

  考えても考えても心当たりがない。
  留学して1年半。やっと外交手段の政策もまとまって形が見えてきた所だ。
  あと残りの1年半をかけて磐石なものにすれば、俺はやっとフィーに求婚出来る!
  それだけを思ってやって来たのに。

  コンコンと扉のノックの音と共に側近が入室して来た。
  その表情がどことなく硬い。

「ちょっと良いか?  フリード。……心して聞いて欲しい事がある」
「……?  何だキース。俺は今、最高に機嫌が悪いぞ?」

  一緒に留学してきた側近のミラバース伯爵家の嫡男キースは、学院時代からの友人だ。
  俺が何のために留学しているかもよく知っている。
  だから、言葉遣いも公の場以外では崩してもらっているのだが。

  そんな友人キースが、酷く真剣な顔をして、心して話を聞けと言ってきた。
  スフィアからの手紙で混乱している所に一体何の話があるというのか。

  ……嫌な予感しかしない。
  俺の本能がそう告げている。

「……お前にとって、とてもとても悪い話だ。よく聞け。…………ランバルド公爵令嬢が婚約をした」
「………………は?」

  聞き間違いか?  ランバルド公爵令嬢ってフィーの事だろ?
  フィーが婚約!?
  嘘だろ?  何の冗談だよ……
  俺は、自分の身体が震えているのを感じた。

「落ち着け!  聞き間違いじゃない。お前の最愛のスフィア嬢が婚約した。……相手はお前の弟、ニコラス殿下だ」

  ガーンと頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。

  フィーが婚約……しかもその相手はニコラス?
  どうしてだ?  何があった?  
  二人は今、学院の同級生だ。俺の知らない間の1年半に二人は心を通わせたとでも言うのか?
  だから、フィーは俺に拒絶の手紙を送ってきたのか?

  俺はあまりの混乱と悔しさで手に持っていたスフィアからの手紙を思わず、グシャリと握り潰していた。

「おい、フリード!!  しっかりしろ!」

  キースが俺の両肩を持って前後に揺らす。

「…………」
「大丈夫じゃないのは分かってるが、今は続きを聞いてくれ!」

  続き?  続きって何だ?  フィーとニコラスが仲睦まじく過ごしてる話なんて死んでも聞きたくないんだが。

「スフィア嬢とニコラス殿下の婚約は、大臣や有力貴族達が望み、陛下へと進言されたらしい。陛下もランバルド公爵もいい顔はしなかった。だが、そういった声が出ている以上、無視も出来ずスフィア嬢の意向を伺う事になった。そこで……」
「フィーが承諾の返事をしたのか……」

  キースは無言で頷く。

  何でだよ……!  俺は『待っていて欲しい』と手紙にも書いたじゃないか!
  拒否の返事は無かったから、俺は心のどこかで、もしかしたらフィーも俺の事を……なんて期待してしまっていた。
  直接言わなかったからか!?  俺の勘違いだったのか!?
  だから学院に入学してからのこの1年半でニコラスとの距離が縮まってアイツに惚れたのか!?

  色んな思いが頭の中を駆け巡ったが、キースは更に続けた。
  そして、その内容には別の意味で衝撃を受けた。

「……スフィア嬢とニコラス殿下は、別にそこまで仲が良いとは言えない。ニコラス殿下の態度は、報告によるとあまり良い態度とは言えないようだしな」
「どういう意味だ?」
「ニコラス殿下のスフィア嬢への態度は、キツい物言いをするわ、睨むわ……と少なくとも好意を抱く人間にする態度とは言えない」
「……」

  キースのその言葉に何だか嫌な予感がした。

「二人の接点となると、学院で同じクラス。そしてニコラス殿下が一方的にスフィア嬢に絡んではいたようではあるが、当のスフィア嬢は困っていたようだ」
「…………ニコラスが、フィーに絡んでた?」

  初めて聞くその話に俺の心臓が嫌な音を立てた。
  ニコラスの性格は俺が良く知っている。
  ニコラスは嫌いな人間に自ら絡んでいくようなヤツでは無い。
  むしろ、好意を抱く人間の側に近寄って行く傾向がある……
  そして、そういう相手を前にする時のニコラスは素直になれず、変な意地を張るんだ。

「はは、嘘だろ?」
「おい、フリード?  しっかりしろ!!」

   ──そうだった。俺達がフィーに初めて会ったあの日も、ニコラスも俺と同じでフィーに見惚れていたじゃないか……!

  ずっとニコラスがどの婚約者候補の名前を聞いても頷かないのが不思議だった。
  フィーの名前はニコラスの候補に入っていても、1度もアイツに伝えられていなかったんだ……俺が全力で阻止していたから。
  ニコラスがいつも頷かなかったその理由は──まさか……

  その考えに至った俺の顔色は更に悪くなっていただろう。
  そんな俺の様子にキースが困っている。

「フリード……頼むから落ち着いてくれ。スフィア嬢が王宮に訪ねた日も二人は言い合いをしていたとの報告があがっている。……正直、上手くいく組み合わせには思えない」
「……………クソっ」

  フィーを幸せにするのは俺だ。ニコラスじゃない。
  今更、横からやって来て奪っていくなんて冗談じゃない!

「キース……予定を早めるぞ」
「は?  何だ、急に」

  フィーとニコラスはまだ学生だ。婚約だけで今すぐ結婚は有り得ない。
  しかし、このままでは卒業と同時に結婚となる可能性はとても高い。
  俺の留学予定期間を終えてからの帰国ではもしかすると間に合わないかもしれない。

「あと1年の間に蹴りをつけて帰国する。俺は絶対にフィーとニコラスを結婚なんてさせない!」
「フリード!?」
「それまでは、せいぜいニコラスにはフィーの虫除けにでもなってて貰おう」
「お、おう……」
「それから、フィーには俺の“影”をつける」
「は?  フリード、何言って……」

  キースが困惑した顔を俺に向ける。
  分かってるさ。
  俺の婚約者でもない、ましてやニコラスの婚約者となってしまったフィーに俺の影をつけるのはおかしな話だ。有り得ないし許可されるものでも無い。これは俺の独断だ。
  だが、形振り構ってなどいられない。

  ニコラスがフィーにどんな想いを抱いているにせよ、あの性格だ。
  そんな簡単に手を出しはしないだろう。
  だが、念には念を入れてこっそりつけさせてもらう。


  俺は決めた。
  フィーの拒絶の手紙が、ニコラスと婚約したからなのか、婚約は関係なく単にフィーが俺を嫌いになったからなのかは分からない。
  だが、そんな事俺には関係無い。
  俺は、絶対にどんな事をしてもフィーを取り戻す。


「……言ったよな、フィー。……俺は諦めが悪いって」


しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

【完結】公爵令嬢の育て方~平民の私が殿下から溺愛されるいわれはないので、ポーション開発に励みます。

buchi
恋愛
ポーシャは、平民の特待生として貴族の学園に入学したが、容貌もパッとしなければ魔力もなさそうと蔑視の対象に。それなのに、入学早々、第二王子のルーカス殿下はポーシャのことを婚約者と呼んで付きまとう。デロ甘・辛辣・溺愛・鈍感コメディ(?)。殿下の一方通行がかわいそう。ポジティブで金儲けに熱心なポーシャは、殿下を無視して自分の道を突き進む。がんばれ、殿下! がんばれ、ポーシャ? 

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

転生賢妻は最高のスパダリ辺境伯の愛を独占し、やがて王国を救う〜現代知識で悪女と王都の陰謀を打ち砕く溺愛新婚記〜

紅葉山参
恋愛
ブラック企業から辺境伯夫人アナスタシアとして転生した私は、愛する完璧な夫マクナル様と溺愛の新婚生活を送っていた。私は前世の「合理的常識」と「科学知識」を駆使し、元公爵令嬢ローナのあらゆる悪意を打ち破り、彼女を辺境の落ちぶれた貴族の元へ追放した。 第一の試練を乗り越えた辺境伯領は、私の導入した投資戦略とシンプルな経営手法により、瞬く間に王国一の経済力を確立する。この成功は、王都の中央貴族、特に王弟公爵とその腹心である奸猾な財務大臣の強烈な嫉妬と警戒を引き寄せる。彼らは、辺境伯領の富を「危険な独立勢力」と見なし、マクナル様を王都へ召喚し、アナスタシアを孤立させる第二の試練を仕掛けてきた。 夫が不在となる中、アナスタシアは辺境領の全ての重責を一人で背負うことになる。王都からの横暴な監査団の干渉、領地の資源を狙う裏切り者、そして辺境ならではの飢饉と疫病の発生。アナスタシアは「現代のインフラ技術」と「危機管理広報」を駆使し、夫の留守を完璧に守り抜くだけでなく、王都の監査団を論破し、辺境領の半独立的な経済圏を確立する。 第三の試練として、隣国との緊張が高まり、王国全体が未曽有の財政危機に瀕する。マクナル様は王国の窮地を救うため王都へ戻るが、保守派の貴族に阻まれ無力化される。この時、アナスタシアは辺境伯夫人として王都へ乗り込むことを決意する。彼女は前世の「国家予算の再建理論」や「国際金融の知識」を武器に、王国の経済再建計画を提案する。 最終的に、アナスタシアとマクナル様は、王国の腐敗した権力構造と対峙し、愛と知恵、そして辺境の強大な経済力を背景に、全ての敵対勢力を打ち砕く。王国の危機を救った二人は、辺境伯としての地位を王国の基盤として確立し、二人の愛の結晶と共に、永遠に続く溺愛と繁栄の歴史を築き上げる。 予定です……

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

処理中です...