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第2章
side フリード③
しおりを挟む「はぁ……まさか、本気でこうなるとはな」
「フリード?」
俺は手元の報告書を見てため息をついた。
内容はフィーに関する事と、弟ニコラスの動向だ。
自国リュンベルンにいた時から、ニコラスを王位につけたい貴族達の動きがある事は知っていた。
しかし、当のニコラスが「何を言ってるんですか!? 私では無理ですよ! 兄上が王になるべきです!」と常に言っていて全くその気にならなかったから、実際に行動を起こそうとする輩はいなかったのだが……
まさかここに来て動き出すとは。
「セレン・エンバース男爵令嬢か……」
この男爵令嬢と会ってニコラスは随分と変わったらしい。
ただ、恋に落ちただけ……と言うにしては変わりすぎだ。
まず、婚約者であるフィーを煙たがるようになり、人目も憚らず件の男爵令嬢とイチャイチャしているようだ。
……王族の自覚に欠けているとしか思えない。
そして王位に目を向けた事。
おそらくだが、その男爵令嬢に何か吹き込まれたのだろう。
ニコラスが王位を望み始めた事で、ニコラスを王位につけたい! と、かねてから思っていた貴族達も行動を起こそうとしている。
「キース。お前、先に帰国しろ」
「は? 何言ってるんだ?」
「俺はあともう少しここでやる事がある。だから、お前は先にリュンベルンに帰ってニコラス達の動きを阻止しろ……そしてフィーを守ってくれ……」
フィーとニコラスの婚約を聞いてから、急いで進めてきた計画も無事に軌道に乗った。
王女との婚姻を結ばなくても問題ないだけの手段は整えた。
後は諸々の調整だけなので、予定より半年早く帰国できる見通しだ。
帰国したら、その足でフィーを取り戻すつもりだったが……
フィーの立場は今、とても微妙だ。
学院内では、件の男爵令嬢にフィーがイジメや嫌がらせを行っていると噂がかなり広まっていた。
本当の目撃者など誰1人いないはずなのに、アレもこれもフィーがした事になっている。そのせいで今、フィーの評判は最悪と言っていい。もちろん、その男爵令嬢が仕組んでる事は間違いない。
幸い、教師達はこれまでのフィーの素行を思ったのか簡単には信じてはいない。
そのおかげか、今のところフィーは学院から処分を受けるまでの事態には陥っていないが、これからもっと噂が広がっていくとどうなるか分からない。
だが、実際に嫌がらせを受けているのはフィーの方だ。
まぁ、嫌がらせを行っているのは、男爵令嬢本人ではないようだが。
今の所、ケガをするような酷い嫌がらせを受けたという報告は受けていないが、これもいつエスカレートするか分からない。
「はぁ……」
本当は、今すぐ俺が帰国してこの手で守りたい。だがまだ無理だった。
思うように動けない自分がこんなにももどかしくて堪らない。
「スフィア嬢の噂と嫌がらせの件ですか?」
「……俺はフィーを傷付ける人間を許す気にはなれないからな……例えそれが、実の弟であっても」
「フリード。俺はお前を敵にだけはまわしたくないよ」
キースは、呆れ交じりの顔と声で言う。
「そうか? それは、光栄だな」
あれから連絡をとっていないから、フィーが今、何を考えているのかは分からない。
ニコラスとエンバース男爵令嬢の関係をどう思っているのかも。
そもそも、フィーはニコラスの事をどう思っているのか。
件の男爵令嬢が現れるまでの二人は、婚約者として夜会やパーティーに参加していた事は報告を受けていたが、フィーの本当の気持ちはどうなんだ?
……もし、フィーがニコラスに惚れていたら。
俺は必死にその可能性を頭の中で打ち消す。
今の俺がすべき事は一刻も早く帰国し、ニコラスとの婚約をさっさと解消させて、フィーを口説く事だ。
あの頃、まだ告げる事を許されなかった俺の気持ちを今度こそ伝える。
あれだけ鈍いフィーの事だ。まずは俺の事を意識させなきゃ話にならないからな。
「……フィー……」
俺は、絶対にフィーの事を諦めない。改めてそう決心した。
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