【完結】モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした

Rohdea

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第2章

8. 悪役令嬢スフィアへの断罪

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  リリアの屋敷を訪ねる事が出来たのは、夜会の前日だった。
  どうにか間に合って良かった……とホッとした。


  リリアは、本当に私の事も覚えていなくて、「ス、スフィア様?」と呼ばれた時はどうしようかと思ったけれど。
  本当は少し会うのが怖かった。
  でも、記憶が無くてもリリアはリリアですごく安心した。
  
  ロベルトとの距離感に戸惑っている様子だったけど……どうやらリリアは再びロベルトに恋をしているようだった。

「記憶があってもなくても行き着く想いは変わらない……か」

  何だか凄いなぁって素直に思えた。
  それだけ二人の絆は強いって事だから。

  ロベルトもロベルトで動いてるようだし……大丈夫………二人はきっと幸せになってくれる。そう確信出来た。

  あの箱の鍵も、ちょっと強引だったかもしれないけどリリアに託す事も出来たし。

  けれど、

  “おそらくもう会えない”

  そんな思いが頭の中を過ぎってしまったから別れ際に、

『またね』

  とは言えなかった。
  もしかすると、そこは少し不審に思われたかもしれない。


  それでも帰る前に、ロベルトとも話が出来て彼の覚悟を聞くことが出来た。
  私はそれだけで満足だ。
  ロベルトは、全力でリリアを守るだろう。


「大丈夫、大丈夫、大丈夫……」


  私は自分にそう言い聞かせた。







  そして翌日。遂に───夜会の日がやって来た。




「お嬢様……」

  いつもなら、「お似合いですー!」と、言っては笑ってくれるサラの元気が無い。
  そもそもサラはフリード殿下推しだったらしく、私がニコラス殿下と婚約したと知った時は膝から崩れ落ちていた。「何で、何で……」と、ひたすら嘆いていてちょっと怖かったくらい。
  いくらサラがフリード殿下推しだとしても……私がどんなに彼を想っていたとしても、私とフリード殿下の道は交わらないのだから仕方ない。
  フリード殿下には私とでは無い、ちゃんと幸せになる道があるのだから。


「サラ?  何て顔をしているの?  このドレス、そんなに似合ってないかしら?」
「いえ、お嬢様は何を着てもお似合いです……」
「なら、いつものように元気に声をかけて欲しいわ?」

  私は精一杯の笑顔でそう言った。

「お嬢様……!」

  ……だって、もう何もかも最後かもしれないんだもの。
  いつもの元気なサラの声を聞いておきたい。

「あ、ねぇ……サラ。私の大事な物を入れているあの箱がどこにあるか知ってたかしら?」

  サラは箱の存在は知ってたけど、場所まで把握しているか聞いておかないと。

「えっ?  あの大事な物を入れてた箱ですか?  知っていますよ。机の引き出し、ですよね?」
「あら、やだ……やっぱり知ってたのね……」

  どうやら、ちゃんと知っていたらしい。流石だわ!  これで大丈夫……

「あの箱がどうかしましたか?」
「ううん、ちょっと聞いてみただけよ」
「そうですか……?」

  私が遠い目をしたから、あの中に何が入ってるか知ってる(証拠品の事はもちろん知らない)サラは複雑そうな顔を見せた。


「それじゃ、行ってくるわ」
「行ってらっしゃいませ、お嬢様!」

  サラがいつものように笑ってくれた。それだけで嬉しかった。

  ──元気でね、サラ。今までありがとう。
  口には出せなかったけど、私は心の中でお礼を告げた。




◇◇◇




「女は支度に時間がかかって困るな」

  会場で落ち合うなり、開口一番にそう言ってくる婚約者のニコラス殿下。
  この人は、嫌味を言わないと生きていけないのかしら?

「……今日は、何か特別な事でもあるのですか?」

  嫌味はスルーして、切り込んでみる事にした。

「な、な、何故だ?」

  ニコラス殿下は少し動揺した。なんて分かりやすいの……

「殿下がエスコートしてくださるのは、半年ぶりでしたから。珍しい事もあるものだわ、と思っただけです」
「チッ……婚約者をエスコートするのに特別も何もないだろう?  当たり前の事だ」
「まぁ!」

  ……チッとか舌打ちしたんですけど?  しかもその言葉! どの口が言ってるんだろうか。その当たり前の事を半年間放棄していたのは貴方でしょうに。

「ドレスもありがとうございました」
「……一応、スフィアは私の婚約者だからな。仕方ないだろう」

  すごく嫌そうな顔で言われた。
  ──これはかなり嫌われたものね……どう考えても悪化しているわ。

  私は隣に並ぶニコラス殿下に気付かれないくらいの小さなため息を吐いた。







  会場入りして周囲を見渡し気付いた。

  (ニコラス派の貴族ばっかり……)

  そして思う。
  この状況とニコラス殿下のあの様子からして、私への婚約破棄と断罪はやっぱり今日のこの場で行われるのだろう。

「…………」

  覚悟はしていてもちょっとだけ怖い。
  私は油断すると震えそうになる身体と足をどうにか叱咤してニコラス殿下の隣に立ち続けた。
  もちろん、笑顔も忘れない。
  だけど、視線が痛いのはニコラス殿下がリリアを愛妾にする話が広まっているからだろうか。





  そろそろ夜会開始の時間かしらー……
  そう思った時、隣にいたニコラス殿下が声を張り上げて言った。

「今日は、皆に聞いてもらいたい事がある!!」

  ……えっ!  初っ端から始めるの!?
  さすがにそれは私も予想していなかった。

「私は、この隣にいるスフィア・ランバルド公爵令嬢との婚約を破棄させて貰う!」

  ザワザワ

  ニコラス殿下のその言葉には、さすがにみんな驚いたのか会場内は動揺が広がっている。
  私も別の意味で驚いた。

「セレン、おいで」
「はい!  殿下!!」

  どこにいたのか、セレン嬢が殿下の傍にやって来る。
  ニコラス殿下は、そんなセレン嬢の肩を抱きながら、私をキツく睨んで再び声を張り上げた。

「スフィア・ランバルド公爵令嬢は、こちらの令嬢……セレン・エンバース男爵令嬢の事を学院で不当に辱めて来た!!  そんな女は私の妃として相応しいとは思えない!」
「…………」
「どうした?  スフィア。驚いて声も出ないか?  大人しく罪を認めろ!  そしてセレンに謝罪しろ!!」
「殿下……私は謝罪なんて求めてませんわ……!  だって、そもそも私が……婚約者のいる殿下を好きになってしまったから……スフィア様は悪くないのです!!  そうさせてしまったのは私なんです……!」

  セレン嬢は目に涙を浮かべて訴える。
  もちろん、その中で自分が被害者であるアピールを忘れない。

「セレン……あぁ、君は何て心の清らかな女性なんだ!!  そこのスフィアとは大違いだな!!  やはり、私の妃になるのは君しかいないよ、セレン!!」
「殿下!!」

  二人は見つめ合ったと思ったら今度は抱き合ってる。

  えぇぇ……すごい茶番?  寸劇?  が始まったわ。
  物語の断罪シーンってこんなだったかしら。いや、セリフはこんな感じだったと思うけど何かが違う……!
  本来なら一番の盛り上がりを見せる所なのに、なんでこんなに薄っぺらく感じてしまうの……?

「スフィア、黙っていないで罪を認めたらどうなんだ?  こっちには証拠も証人もいるんだ!!  言い逃れは出来ないぞ!?」
「…………」
「まだ黙るか……仕方ない!  証人をここへ!」
「はい!」

  そう言って前に進み出てきたのは、学院でセレン嬢と仲良くしている令嬢の一人だ。
  確か、子爵家の令嬢だったかしら。

「私がセレン嬢と共にいる時、スフィア様はいつもーー……」

  学院で広まっていた噂をこれでもかと、臨場感たっぷりに語ってくれた。
  最初は、半信半疑だった周りの貴族達も話の内容に引き込まれ、私を見る目付きがだんだん鋭くなって来た。
  やっぱりこの話術に手法、上手いのよね。誰が伝授したのかしら?
  こんな時なのに妙に感心してしまった。

「どうだ?  スフィア!  観念したか?」
「………………」
「ムッ!  まだ黙るか!!  もう良い!  貴様は牢屋へと繋ぐ!  追ってお前の処罰を伝えるから、それまで地下牢で自分のした事を反省し後悔するがいい!  衛兵!  スフィアを牢屋へ連れていけ!!」
「はっ!!」

  近くに控えていた衛兵が私の腕を掴んで外へと連れていく。

  どうやらちゃんと小説のストーリー通りの展開になったようだ。
  ちょっとドン引きの茶番だか寸劇だかを見せられた時はどうなるのかとヒヤヒヤしたけれど。

  小説の中の悪役令嬢スフィアは、見苦しくも反論したけれど私はさっさと終わりにして欲しかったので、何を言われても反論はしないでおこうと決めていた。
  その事も、何か影響があるかもしれないと少しだけ心配したけれど、それは杞憂に終わった。


  このまま私の行き着く先は、ストーリー通りの国外追放……であると願いたい。
  ちょっと色々ストーリーが変わってしまっているから、違う処罰にならないといいのだけど。
  ……まぁ、いくら何でも命までは取らないでしょう。


  私は、連行されながらボンヤリとそんな事を考えていた。
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