【完結】真実の愛とやらに負けて悪役にされてポイ捨てまでされましたので

Rohdea

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11. 悪役にされた令嬢は令息に振り回される

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   あれこれ目に映るものが新鮮ではしゃいでばかりだった私は、突然ふと、我に返った。

「……おかしいです」
「どうかした?  シャルロッテ」

  今、私達は花屋の前にいた。

  それと言うのも。
  屋台を満喫した後、他のお店を覗いては、私はディライト様にあれは何ですか?  これは何ですか?  と聞いてばかりだった。
  そんな中、花屋の前を通り、そう言えば……先日は花束をありがとうございました!  と、改めてお礼を言ったら、ディライト様が「花は好き?」と聞いてきたので「好きです」と答えたら「分かった」と言われた。
  そして、何故かディライト様は私に「待ってて?」とだけ言って花屋に入って行った……
  
  (あれ……?)

  そして今、私の目の前には何故かまた花束が。

「はい、これ。初デート記念」
「あ、ありがとうございます……」

  反射的に受け取ってしまってから慌てる。

「……で、ですが!  やっぱりおかしいです!  きょ、今日は……」
「今日は?」

  ディライト様がきょとんとした顔で首を傾げている。

「ディライト様に私が上着のお礼をする場であって、私が何かを買ってもらう場ではありません」
「ははは。そんなの、俺がシャルロッテに贈りたかったから良いんだよ」
「なっ……」

  そんなの申し訳なさすぎるわ!
  と、私が首を横に降ると、ディライト様がうーん……と悩んだ表情を見せた。

「さっき、シャルロッテは俺の欲しい物を聞いたよね?」
「はい」
「なら、シャルロッテの笑顔が欲しい」

  ディライト様はそんなとんでもない言葉を破壊力満点の笑顔で言った。

「わ、たしの笑顔……ですか!?」
「そう。シャルロッテのその可愛い笑顔が欲しい。まぁ、本当に欲しいのは………………だけど」

  後半はよく聞こえなかった。

「え、がお……」
「その可愛い顔で俺だけにたくさん笑ってくれたら嬉しい」
「~~~!!」

   ディライト様はそんなとんでもない発言をしながら、私の頬にそっと触れる。

「シャルロッテ……顔が真っ赤だよ?」
「ディライト様のせいですよ……」

  私がそう返すとディライト様はまた、あははと可笑しそうに笑う。

「シャルロッテ、俺と君は婚約者なんだ」
「そうですが、偽……」

  偽装のです!  と言いかけたのに、ディライト様の指が私の口を塞いでしまう。

「だからね?  愛しい愛しい婚約者の笑顔が最高の俺へのプレゼントだと思わないかい?」
「……!」

  (これ、もしかしてからかわれているのかしら?)

  だって、ここまでする必要……ある?

  私は頼まれた笑顔ではなく、むくれた顔をしてしまう。 
  そんな私の顔を見たディライト様がまじまじと私の顔を見つめながら言った。

「うーん、シャルロッテは、そういう顔も可愛いんだね」
「!?」
「笑っててもむくれていても可愛いとか反則だよ」
「!?!?」

  ディライト様はとても嬉しそうに甘く蕩ける笑顔でまたまたとんでもない事を言った。





  ───こうして、初デート……はお礼らしいお礼も出来ないまま終わりを迎え、私達は帰る事になった。

  (まともにお礼が出来た気がしないわ……でも、ディライト様が嬉しそうだからいいのかしら……)

  帰りの馬車の中で、何故か向かい側ではなく私の隣に座ったディライト様のその美しい顔をじっと横から見つめる。

「シャルロッテ?  何か俺の顔に付いている?」
「い、え……」

  ディライト様がこっちを向いて目が合うと優しく微笑まれた。

  (やっぱりその微笑みはドキドキする!)

  そんな内心動揺している私にディライト様は微笑みを崩さぬまま訊ねる。

「シャルロッテ、今日は楽しかった?」
「はい……楽しかったです」

  私は少し照れながらも微笑んだ。
  ───楽しかった。
  だって、これは嘘じゃない。私の心からの気持ちだった。

「……っ!  そ、それなら良かったよ」 

  少しだけディライト様の顔が赤くなった気がした。

「なら、さ。また、付き合ってくれる?」
「は、はい。私で良ければ……」
「……ありがとう!」

  またしても、とんでもなく嬉しそうな顔で笑ってお礼を言われたので、胸のドキドキが止まらなかった。
  

────


  そして、もうすぐ私の屋敷に着くぞという所で、ディライト様が少し真面目な顔と声のトーンで私に声をかけて来た。

「────シャルロッテ。今度、王宮で舞踏会がある」
「え?」
「俺達が婚約してからの初めての公の催しだ」
「……公の」

  (……それは、つまり)

「ジョーシン殿下とミンティナ殿下もと参加するはずだ」
「!」

  (やっぱり……ついに、来た!)

「……宣戦布告の時、ですね」
「あぁ」

  とうとうこの日が!
  そう思ったら無意識に膝の上で固く拳を握りしめていた。

「シャルロッテ、ダメだ……跡が残ってしまうよ」
  
  私の手に気付き、そう言いながら優しく手を解こうとするディライト様。
  その優しさにも胸が高鳴る。
  そんな私の手を解いたディライト様はそのままそっと私の手を握った。

「……きっと周りからは色んな目で見られる」
「ドンと来いですよ!」
「強いな……だが、公爵にも誓ったように、俺にシャルロッテを守らせて欲しい」
「ディライト様……」

  (本当に、この人は優しいわ)

  そう思ったら自然と笑がこぼれる。

「ありがとうございます」
「当日は絶対に俺から離れないでくれ」
「分かりました」

  絶対に守る。
  そんな気持ちがしっかり伝わって来て、嬉しかった私は微笑みながら頷いた。

「それと。ジョーシン殿下とミンティナ殿下は必ず俺達に“婚約”の件を問い質して来るはずだ」
「はい……」

  (二人は、婚約の事はさすがに知っているはず。いったい私達にどんな反応を見せるのかしら?)

  まさかとは思うけれど、少し後悔……なんてしたりするのかしら?
  ふと、そんな事を考えてしまった。

「……ディライト様。もしも、もしもの話ですが」
「うん?」
「ミンティナ殿下が、“あの時の自分が間違っていた。やっぱりディライト様でないとダメなの”というような事を言って謝って来たらどうされますか?」
「……」

  私のその質問にディライト様はとても驚いた顔をした。
  だけど、すぐに表情を戻すとキッパリと言った。

「どうもしない。俺の婚約者は、今、目の前にいる可愛いシャルロッテだけだ」
「!」

  迷いなんて何一つ無い目だった。

「…………テは?」
「え?  何ですか?」

  何かを聞かれたのは分かったけれどよく、聞こえなかった。

「シャルロッテは?  シャルロッテは、もしもジョーシン殿下が同じ事を君に言って来たらどうするんだ?」
「同じ事……」
「“真実の愛”の相手はイザベル嬢ではなくシャルロッテだったんだ!  ……というように」
「……!」

  ジョーシン様の“真実の愛”の相手がイザベル様ではなく、私だったと言われたらですって??

  頭の中に、ジョーシン様と過ごした8年分の思い出が駆け巡る。
  好きだった。大好きだった……私の全てだったジョーシン様……

「……」

  そっと、そんな事を訪ねて来たディライト様の顔を見る。

  (不思議。どうして、そう訊ねてくるディライト様の瞳が不安そうに揺れているのかしら?)

「そうですね…………もしも、本当にそのような事を言われた時は───」

  私は目を伏せながらそっと口を開いた。

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