【完結】真実の愛とやらに負けて悪役にされてポイ捨てまでされましたので

Rohdea

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25. 悪役にされた令息は絡まれる

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  ───その時の俺は、あの得体の知れないクッキーの成分の分析結果が出た所で、王宮の書庫で調べ物をした帰りだった。
  ついでに頭の中は、あいつらを追い払った後、可愛いシャルロッテと約束した次のデートをどこに行こうかな?  と考えている所でもあった。

「ドゥラメンテ公爵令息様~!」
「!」

  (……この気持ち悪い声は……)

  だから、突然背後から聞こえて来たそのどこか甘えたような気持ち悪い声に、俺の中の妄想の超絶可愛いシャルロッテが消されてしまい非常に苛立った。
  仕方なく振り返ると、声だけでなく浮かべている笑顔までもが気持ち悪かった。

「こんにちは、奇遇ですねぇ~」
「……あぁ、どうも」

  声も仕草も何もかもがわざとらしい。
  “私、可愛いでしょう?”全身でそう言っているみたいだ。

  (本当に“可愛い”のは、シャルロッテみたいに無自覚なのを言うと思うんだが)

  シャルロッテはこの目の前の女と違って自分が可愛いなんて欠片も思っていないからな……
  まぁ、全部ジョーシン殿下のせいだが。

「ドゥラメンテ公爵令息様、先日はすみませんでした~」
「いや」
「……」

  俺のその返事でプリマデント男爵令嬢は、あれっ?  という顔をした。

「あの……もしかして、先日のクッキーはお気に召しませんでしたか?」

  俺の態度で力が効いていない事が分かったのだろう。
  この女は、目をうるうるさせて俺の顔を見つめる。可愛いと思ってやっているんだろうが逆効果だ。

「いや、実は頂こうとした所で誤って床に落としてしまってね」
「まぁ!  そうだったんですね?」

  とりあえず、食べなかった理由を適当に言って誤魔化す。

「それなら、丁度良かったです!  実は私、今日もたくさん持って来ているんですよ!」
「へぇ……」

  俺が気のない返事を返すと、自分の世界に浸っているこの女は目にうっすら涙を浮かべ悲しそうに語る。
 
「本当は……殿下の為に、と思って持って来たのですけど……」
「受け取ってもらえなかった?」
「そうなんです。それどころか公務に邁進したいから、暫く距離を置きたいとまで言われてしまって……」

  そう言って涙を流すプリマデント男爵令嬢。
  そんな彼女を俺はどうでもいい気持ちで見つめる。おそらく、慰めを期待しているのだろうが、全力で遠慮したい。

  (それにしても、公務に邁進したいから……ねぇ)

  ジョーシン殿下は俺に王位を奪われると危機感を持ち、そう思ったらしい。
  ……本当に“今更”なのだが。

  (そこの女とイチャイチャしていて仕事しなかった間の溜まるに溜まったたくさんの書類、誰が捌いたと思っているんだろうな)

  ここ数日の俺の仕事は全部この手伝いだったというのに。
  まぁ、おかげで有難い事にこれで王宮での俺の評価が上がったわけだが。

  (シャルロッテも喜ぶだろうな)

「……私ってそんなに魅力……が、無いのでしょうか……」
「……」

  無い!  と大声で言ってやりたいが、多分、言うのは今じゃない。
  そして、男爵令嬢の自分語りは続く。

「……殿下と私は……身分差を超えての……“真実の愛”で結ばれていると思っていました」
「……」
「ですが……本当は違ったのかもしれません……私、今、ドゥラメンテ公爵令息様とこうして話していて“運命”のようなものを感じます……」
「……」

  (本当にどこまでも薄っぺらい“真実の愛”だな)

「私の……私の本当の“真実の愛”のお相手は────んぎゃっ!?」

  そう言ってプリマデント男爵令嬢が俺に抱きついてこようとしたので、咄嗟にかわしたら、勢い余ったのか変な声を上げて床に転んでいた。

「…………さ、避けられた……」

  小さな声でそんな不満を漏らしながら起き上がる男爵令嬢。
  
「…………やっぱり食べさせないとダメなのね…………しかも助けてくれないなんて気が利かないわ……」
「……」

  小さな声で俺にそんな文句を言いながら、男爵令嬢が立ち上がったその時だった。

「……っ!  お前達、そこで何をしている!」
「!  ジョ、ジョーシン殿下!」
「……」

  (このタイミングで現れるのか……)

  面倒な人が面倒な所にやって来た。
  早く帰ってシャルロッテとイチャイチャしたいのに邪魔ばかりしやがって!

「これはどうもジョーシン殿下、ご」
「どうでもいい挨拶はいい!  私のイザベルと何をしていたと聞いているんだ!」
「……」

  ジョーシン殿下は機嫌が悪そうだ。
  あぁ、そうか。さっき聞いたように公務に邁進しようと意気込み、仕事を求めてみたら“何も無かった”のだろうな。なぜなら殿下に回す仕事はもう無いと聞いている。

「おい!  聞いているのかっ!」

  殿下の大声につられて、少し人が集まり出してきた。

  (せっかくなので突っついてみるか)

「…………プリマデント男爵令嬢が俺に“運命”を感じたそうですよ」
「は?」
「えっ!?」

  俺の言葉にジョーシン殿下は固まり、男爵令嬢の方も顔が引き攣る。

「本当の“真実の愛”がと、プリマデント男爵令嬢は口にしていまして……」
「ほ、本当の“真実の愛”だと!?  おい、イザベル!  どういう意味だ!?」
「……っ!」

  殿下は凄い剣幕で男爵令嬢へと詰め寄る。
  まさか、暴露されるとは思わなかったのだろう。令嬢の顔は引き攣ったままだった。

「おい!  イザベル、何とか言え!  君はさっき私と……」
「い、嫌ですわ、殿下。それはきっとドゥラメンテ公爵令息様の勘違いで……」
「ならば何故、私の目を見て答えない!?」
「そ、それは……」

   醜い二人の言い争いが始まった。
  またやってる……舞踏会でも酷かったな……そんな声が聞こえて来るので、二人が醜い言い争いをするのは初めてではないのだろう。

  (どんどん化けの皮が剥がれていくな)

「ディライトもディライトだ!  イザベルが私の女だと知って王位継承の様に横から手を出……」
「ははは、ご冗談を殿下」

  殿下の怒りの矛先がこっちに来た。凄く面倒だ。

「私は婚約者のシャルロッテ・アーベント公爵令嬢を愛していますので。そちらの男爵令嬢には欠片も興味などありませんよ」
「……シャルロ……っ!」
「なっ!」

  二人がそれぞれ声を上げる。
  殿下は“シャルロッテ”と呼び捨てにしようとしたな?
  俺は睨みながら念を押す。

「シャルロッテ以外の他の女性になんて興味はありません」

  チッ……そんな舌打ちが聞こえた気がした。おそらくプリマデント男爵令嬢だろう。

「俺はシャルロッテの事が可愛いくて可愛くて仕方が無いので。あぁ、どうやらそちらの殿下にはお分かりにならないようですがね」
「くっ!  貴様!」
「そういう事なので……あぁ、プリマデント男爵令嬢も周りに誤解される言動や行動は自重した方がいいと思いますよ?」
「なっ!」

  二人がそれぞれ悔しそうな顔をする。

「どうぞ、お二人の“真実の愛”を最後まで貫いてください。真実の愛とやらで結ばれた二人なら幸せに暮らせるでしょうし、ね」
「「!!」」

  色々と含みを持たせて言ってみた。

「それでは。俺は早く愛しい婚約者の元へ行きたいのでこれで失礼致します」


  (シャルロッテに会いに行って癒されたら、男爵令嬢達の罪を問う準備の開始だ!)




───



「ディライト様!」
「シャルロッテ!」

  今日もアーベント公爵家を訪ねると、可愛い可愛いふわふわシャルロッテが出迎えてくれる。
  あぁ、本当に毎日可愛い!
  俺は手を伸ばし腕の中に閉じ込める。

「ディラ……!  お、お父様が……また……使用人……」
「……」

  そんな戸惑うシャルロッテがまた可愛くて。
  もはや、おなじみの光景となったそこでプルプル震えているアーベント公爵家の使用人達も、シャルロッテの可憐さ、可愛さにやられているんだろう。

「分かっているよ。だが、俺のシャルロッテが今日も可愛すぎて愛でずにはいられないんだ」
「ディライト様……」

  うーん、可愛いシャルロッテのその顔。
  照れながらも、またまた大袈裟な……そんな顔をしているな。

  (早く終わらせて告白するぞ!)

  俺はそのままシャルロッテを持ち上げて抱きかかえる。

「え!?  ディライト様!?」
「今日は抱っこして部屋までシャルロッテを運ぼうかなと」
「だ、だ、抱っこ!?  恥ずか……おろし……」

  うん、照れるシャルロッテは可愛い!
  
「ほらほら、危ないからね。暴れないで?」
「うぅ……」
「大丈夫だよ、皆、今日も俺たちは仲良しだなって思うくらいさ。でも、それが大事なんだ」
「わ、分かっています……」

  そう言って顔を赤くしたままギュッと俺にしがみつくシャルロッテが、これまた可愛すぎて、我慢出来なかった俺はその流れでチュッと額にキスをした。

「!?」
「お、もっと真っ赤になった!」
「~~~!!」

  無言でワタワタするシャルロッテに俺も内心で悶えながら、シャルロッテを宝物の様に抱きかかえたまま部屋の中に入った。



  甘い甘い雰囲気のままでいたかったけれど、ちゃんと報告をしないといけない。
  そっと可愛いシャルロッテをベッドの上に下ろすと、俺もその隣に腰を下ろす。
  このまま押し倒してしまいたい気持ちが満々だけど……今は我慢だ!
  

「シャルロッテ。あの男爵令嬢の配っていたクッキーの成分の分析が終わったよ」
「!」

  シャルロッテが聞きたいような聞きたくないような、でも、聞かないと!
  そんな(やっぱり可愛い)顔で俺を見た。

  
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