【完結】真実の愛とやらに負けて悪役にされてポイ捨てまでされましたので

Rohdea

文字の大きさ
26 / 45

26. 悪役にされた令嬢と令息は何かを企む双子の“力”について考える

しおりを挟む


  (抱っこ!?  何故私は抱っこされているの??)

  今日もいつものようにディライト様を出迎えて、お父様に怒られると分かっていながらギューッと抱きついたら、何故か抱えられてしまった。

  ───大丈夫だよ、皆、今日も俺たちは仲良しだなって思うくらいさ。でも、それが大事なんだ。

  そう言われてしまったら、私は頷く事しか出来ないのだけど。

  (だけどドキドキが凄いの)

  こんなに密着したら私の心臓の音がディライト様に聞こえてしまうんじゃないかしら?
  そのまま、私の気持ちも全部筒抜けになってしまいそう。
  そんな事をぐるぐる考えていたら、ディライト様は額にキスまでして来た!

  (もう!  演技が徹底しすぎているわ!)

  その後、すごく大事そうに部屋まで運ばれてそっとベッドの上に降ろされた。
  何でベッドの上なの!?
  と、軽く脳内がパニックになったけれど、そのまま私の隣に腰を下ろしたディライト様が言ったわ。

「シャルロッテ。あの男爵令嬢の配っていたクッキーの成分の分析が終わったよ」

  ───と。
  何だか一人で勝手にワタワタしてしまったじゃないの……恥ずかしい。
  それよりも、今はイザベル様のクッキーの件の方が大事!

  いったいイザベル様はどんな成分が入った物を作り出しては、多くの人に食べさせて来たのか……
  私はドキドキしながら話の続きを待った。

「……結論から言うと“毒物”は検出されなかったよ」
「……!」
  
  ディライト様は淡々とそう話す。
  毒ではない……?
  では何が?

「毒物は……という事は他のものは何か検出されたのですか?」
「媚薬成分と、この国では使用が禁止されている作用のある薬物の成分が検出された」
「……!」

  何も見つからないなんて事は無いと思っていたけれど、こうしてはっきりすると驚かずにはいられない。しかも禁止薬物……

「禁止されている作用とは何ですか?」
「主に幻覚剤と言われているものだ」
「!」

  媚薬に幻覚剤だなんて!  なんてものをクッキーに混ぜ込んでいるの!?

「実はさ、そんな成分入りの物を王族を含め多くの者に食べさせただけで、既に地下牢に繋げられるくらいの犯罪ではあるんだけど、ちょっと不可解な点が多すぎるんだ」
「どういう事ですか?」
「男爵家をどんなに探っても媚薬と幻覚剤の入手ルートが分からない。あと、厳密に言うと既存の幻覚剤とも少し違うらしい。媚薬も今まで見た事のない種類なんだそうだ」
「つまり……」

  私はゴクリと唾を飲み込んだ。
 
「ある意味全く未知のものって事になる。強いて言うならそんな未知の二つの成分が混ざった事で“惚れ薬”に近いものが出来上がったんじゃないかと思ってる」
「……惚れ薬」

  (なるほど……)

「それにしては不可解な事も多いけどね。でも、媚薬成分と幻覚剤成分が含まれている結果はちゃんと検出されたから、この事で追い詰めるしかない」
「そんなの知らなかったわ!  と、逃げられてしまいそう……」
「そうなんだよ。ただ“何か”が入っているのは知っていて、殿下を含む周囲に食べさせていた点は話を立ち聞きしたからね。追求は出来る」
「……」

  ディライト様がそっと私を抱き寄せる。

「シャルロッテを早く外に出られるようにしてあげたいから、どうにか始末して早く終わらせたい」
「ディライト様……」
「俺だって早くシャルロッテとデートがしたい」
「え?」
「また、可愛らしくはしゃぐシャルロッテが見たい」
「ディライト様……」

  私が思っている以上にディライト様が、次のデートを楽しみにしてくれているようで、それが嬉しくて頬が緩んでしまう。
  だけど、ここで一つの疑問が浮かぶ。

「……マルセロ様はどうやっているのでしょう?」
「うん?」
「彼はイザベル様と違って食べ物を配っていないですよね?  では、彼はどうやって……?」
「これは、成分結果からの推測となるけど、おそらくあの男は“匂い”を媒介にしている」
「匂い?」
「この媚薬と幻覚剤にはどちらからも香料が検出されている。本来は香りなんて無いはずなんだ。香りだから相手の身体に浸透するまでクッキーより時間がかかると思っているんだけど」

  そう言われてハッと思い出す。

「そう言えば、マルセロ様が我が家に訪ねて来る時に応対した者達が、彼からこれまであまり嗅いだ事のない匂いがしたと」
「それだ!」
「……やっぱり彼は、我が家の使用人を誘惑してこの家に入り込もうとしていたんですね」

  毎日応対させる者を変更させていて良かったわ。

「それで、手引きしてもらって俺のシャルロッテに接近して誘惑するつもりだったと…………うん。やっぱり許せないな、消そう」

  ディライト様が笑顔で物騒な事を言い出した!

「け、消す!?  捕まえるのではなくて?」
「あの男はシャルロッテに邪な思いを抱いた時点で俺の中で抹消リストに記載されている」
「抹消リスト……」

  ディライト様は何でそんなリストを用意しているのかしら?  
  なんて疑問に思った時だった。

「───誰かが、訪ねて来ていますね」

  部屋の窓が開いていたのと風向きのせいか、外の声が部屋の中まで聞こえて来た。
 
「門の前で揉めてるような声だ」
「……この声って」
「……」
「……」

  私とディライト様は無言で見つめ合う。
  これは、もしかしなくてもプリマデント男爵家の双子の弟、マルセロ様な気がする。
  ご丁寧に本日もやって来た……

「これは……凄いタイミングだね。うん、まずは、弟の退治からといこうか?」
「……」

  ディライト様が今すぐにでも殺ってしまいそうな目付きでそう言った。


───

  
  マルセロ様の力の件は仮説ではあるけれど、匂いを嗅がないように気をつける為に、鼻と口元を覆うものを用意して私達はマルセロ様が騒いでいる門へと向かう。

  ただ、ふと思った。
  あの時、立ち聞きした会話の中では、彼らに“好意”があれば力は効きやすいと話していた。

「ディライト様、私、マルセロ様に対して好意も無ければときめいた事すらも無いのですが。それでも匂いを嗅いだら誘惑されてしまうんでしょうか?」
「……俺もだな。むしろ好感度はマイナスだ……ちなみに同性の場合は恋情ではなく、崇拝したり盲目的に慕うようになるらしいが……」
「私は彼に見惚れた事も無いですね」
「え?」

  そこでディライト様がピタッと立ち止まって不自然に黙り込む。

「どうかしましたか?」
「……いや、シャルロッテがあの男に、ときめいた事も見惚れた事すら無いというのが嬉しくて」

  ディライト様が嬉しそうにそんな事を言うのでびっくりした。

「それはそうですよ!  だって私がときめくのはディライト様だけですもの」
「そうだよな、シャルロッテがときめくのは俺だけ───ん?  俺?  ジョーシン殿下では無くて…………俺?」
「…………え?」

  私は顔を上げる。
  ディライト様の驚きで目一杯見開かれた瞳とばっちり目が合った。

  (あれ?  今、私……さらっと、ときめくのはディライト様だけって……言った??)

「…………っっ!」

  ボンッと、一瞬で私の顔が真っ赤になる。

「シャ、シャルロッテ……」
「ああああの!  えっと、こ、これはですね?  わ、私は……そ、その……」
「……」

  私は言い訳をするために何かを言おうとすればするほど、どんどん発言がおかしくなっていく。

「ディライト様がいつだって素敵でカッコよすぎて…………あ、違っ……いえ、違わない……あまりにもカッコいい……ドキドキが……?」
「────シャルロッテ!」

  ディライト様が私の両肩をがっちり掴んで揺さぶる。

「は、ははははい……!」
「……君は、俺にときめいてる?  ときめいてくれている?  …………俺はそう思っていい?」
「そ、それは……」
「教えて?  シャルロッテ」

  か、顔が!  ディライト様の麗しの顔が近い……!
  あと、表情と声が甘い……すごくすごーーーく甘い!!

  (こんな顔を見せられたら“好き”が溢れそう!)

「わ、私……ディライト様が……」

  と、思わずディライト様に想いを告げそうになったその時、

「あぁ、もう!  毎日、毎日、シャルロッテ様には会わせられないの一点張りだ!  それなら、僕はどうすれば会わせて貰えるんですか!?  彼女に会わせてくれ!!」

  マルセロ様の苛立った大声が門の方から聞こえて来た。

しおりを挟む
感想 290

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました

チャビューヘ
恋愛
三度目の婚約破棄で、ようやく自由を手に入れた。 王太子から「冷酷で心がない」と糾弾され、大広間で婚約を破棄されたエリナ。しかし彼女は泣かない。なぜなら、これは三度目のループだから。前世は過労死した41歳の経営コンサル。一周目は泣き崩れ、二周目は慌てふためいた。でも三周目の今回は違う。「ありがとうございます、殿下。これで自由になれます」──優雅に微笑み、誰も予想しない行動に出る。 エリナが選んだのは、誰も欲しがらない辺境の荒れ地。人口わずか4500人、干ばつで荒廃した最悪の土地を、金貨100枚で買い取った。貴族たちは嘲笑う。「追放された令嬢が、荒れ地で野垂れ死にするだけだ」と。 だが、彼らは知らない。エリナが前世で培った、経営コンサルタントとしての圧倒的な知識を。三圃式農業、ブランド戦略、人材採用術、物流システム──現代日本の経営ノウハウを、中世ファンタジー世界で全力展開。わずか半年で領地は緑に変わり、住民たちは希望を取り戻す。一年後には人口は倍増、財政は奇跡の黒字化。「辺境の奇跡」として王国中で噂になり始めた。 そして現れたのが、王国一の冷徹さで知られる財務大臣、カイル・ヴェルナー。氷のような視線、容赦ない数字の追及。貴族たちが震え上がる彼が、なぜか月に一度の「定期視察」を提案してくる。そして月一が週一になり、やがて──「経済政策の話がしたいだけです」という言い訳とともに、毎日のように訪ねてくるようになった。 夜遅くまで経済理論を語り合い、気づけば星空の下で二人きり。「あなたは、何者なんだ」と問う彼の瞳には、もはや氷の冷たさはない。部下たちは囁く。「閣下、またフェルゼン領ですか」。本人は「重要案件だ」と言い張るが、その頬は微かに赤い。 一方、エリナを捨てた元婚約者の王太子リオンは、彼女の成功を知って後悔に苛まれる。「俺は…取り返しのつかないことを」。かつてエリナを馬鹿にした貴族たちも掌を返し、継母は「戻ってきて」と懇願する。だがエリナは冷静に微笑むだけ。「もう、過去のことです」。ざまあみろ、ではなく──もっと前を向いている。 知的で戦略的な領地経営。冷徹な財務大臣の不器用な溺愛。そして、自分を捨てた者たちへの圧倒的な「ざまぁ」。三周目だからこそ完璧に描ける、逆転と成功の物語。 経済政策で国を変え、本物の愛を見つける──これは、消去法で選ばれただけの婚約者が、自らの知恵と努力で勝ち取った、最高の人生逆転ストーリー。

悪役令嬢発溺愛幼女着

みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」  わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。  響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。  わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。  冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。  どうして。  誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

処理中です...