【完結】真実の愛とやらに負けて悪役にされてポイ捨てまでされましたので

Rohdea

文字の大きさ
31 / 45

31. 悪役にされた令嬢と令息は攻撃を開始する!

しおりを挟む


  会場に着くと、私とディライト様は一斉に注目を集めた。

  ───ドゥラメンテ公爵令息様とアーベント公爵令嬢だ!
  ───相変わらず、惚れ惚れするくらい美しい二人……
  ───今日もお似合いだ!

  (……前と違って今日はかなり最初から好意的な反応が多い気がするわね)

  やっぱり風向きは変わっている。これなら!
  そうして私が改めて気合いを入れ直していると、何故かディライト様はキョロキョロと辺りを見回している。

「ジョーシン様達はまだのようですよ?」
「あぁ、うん。そうではなくて……」
「?」

  ディライト様が鋭い目付きだったので、そんなに警戒しないといけないような人が他にもいたのかしらと思ったら、

「抹殺リスト5位、あれは10位、あいつは……」
「……」

  (また物騒な言葉が聞こえる……)

  あまりにも気になったので、ディライト様が5位と口にした時に睨んでいた人をこっそり試しに見てみた。

  (あの方は──)

  確か、前回の舞踏会で……

  “いや~、まさかアーベント公爵令嬢がこんなに美しい方だったとは!”
  “以前から美しいとは思っていたんですよ、特にその身体とか……”
  “どうですか?  婚約者に内緒で今度私と一晩……”

  ディライト様と少しだけ離れた時に、すかさず近寄って来ていやらしい目で私を見て暴言を吐いていた人だわ!

  (ディライト様が戻ってくる前にさっさと追い払ったけれど、もしかしてディライト様はそれを知っていた……??)

  私がまさかと思い無言でじっとディライト様を見つめると目が合った。
  ディライト様は甘く微笑んだ。

「どうかした?  シャルロッテ」
「い……え!」

  私は照れながら首を横に振る。

  (守られている……)

  ディライト様ったら“抹殺”なんて物騒な表現を使っているけれど、要するに私に危害を与えそうな人を警戒しているという事みたい。

  (なるほどね!  そういう意味だったのね!  心配性なんだから)

  その気持ちが嬉しくて微笑んだら、ディライト様は小さく息を呑み少しだけ固まる。
  そんなディライト様の後方では何故か数人の男性が苦しそうに蹲っていた。

「シャルロッテ」
「はい?」

  後方のおかしな様子の人達に気を取られてしまっていたら、ディライト様が私の名前を呼ぶ。

  ……チュッ!

  そして、そのまま抱き寄せられ額にキスをされた。
  思っていた以上に私達は注目されていたようで、その瞬間、会場内に大きな騒めきが起きる。

「!?」
「こんなに美しいシャルロッテが誰のものなのか……牽制しておかないとね」

  そう言って甘く微笑むディライト様。
  その瞬間、今度は悲鳴と共に自分の後方からバタバタと人が倒れる音がした。



  最初に会場にやって来たのはミンティナ殿下だった。
  ミンティナ殿下はとても機嫌が悪そうで、ギロリとした目で会場内を見渡していた。

  (マルセロ様を探しているのね)

「お目当ての人物がいなくて相当、苛立っているな」
「ええ、怖いくらいです」

  あの変な力──マルセロ様がディライト様による(脅しという名の)取り調べの時に“魅了”と呼んでいた力。
  マルセロ様は観念したようにその魅了についてポツポツ話をしてくれたけれど、正直よく分からない事が多かった。しかも、困った事にマルセロ様自身もよく分からない事ばかりなのだと言う。

  (イザベル様と力を使いながら二人で色々と面白おかしく確かめて来たって……最低!!)

「それだけ殿下は深く“魅了”されてしまっているんですね」
「ミンティナは気に入るととことん自分の側にその人を置きたがるからな。影響を受けすぎたのかもしれない」
「……」

  なるほど……という思いと共に心の奥がモヤっとする。

「シャルロッテ?  可愛い顔が曇ったよ?」
「え?  あ……」

  ディライト様には何でもお見通しのようで、すぐに見透かされてしまう。ディライト様には隠し事なんて絶対に出来ない、そう思った。

「……ミ、ミンティナ殿下はディライト様の事もずっとお側に置いていた、と思ったら……こう、私の中でですね、黒い気持ちが……」
「……!」

  私が包み隠さずに言葉にすると、何故かディライト様は嬉しそうに笑う。

「……何で嬉しそうなんですか?」
「はは、ごめん。自分でも不謹慎だなとは思うけれど、シャルロッテが嫉妬してくれてると思うと……うん、こう勝手に頬が緩む」
「……」
「俺は忙しかったしそこまでじゃなかったよ。そもそも、ミンティナの為に時間を作ろうとはあまり思わなかったな。シャルロッテの為ならどんな事をしても時間を作るけど」
「ディライト様……」

  そんな風にディライト様が嬉しそうに話す顔を見ていたら、単純な私はそれだけでモヤモヤが薄れていく。

  (……ディライト様には何度か確認したけど、やっぱりミンティナ殿下に未練はなさそうだわ)

「───さて、面倒だけどさっさと片付けようか」
「ディライト様……本音がだだ漏れています。ここは“挨拶に行ってこよう”という場面ですよ……」

  ははは、と笑いながら私達はミンティナ殿下の元に向かった。



  ミンティナ殿下はかなり苛立っていた。
  その怒りのオーラが怖くて、実はさっきから誰一人として挨拶に向かった者はいない。
  なので、挨拶に向かう私達を猛者が現れた!  というような目で他の人達は見ていた。

「王女殿下、ご無沙汰しております。ご機嫌いか……」
「……煩いわよ!  ご機嫌いかがですって?  そんなの見れば分かるでしょう!!  最悪よ、さ・い・あ・く!」

  挨拶を遮ってのこの態度。かなり荒ぶっている。

  (王女殿下なのに、こんな姿を周囲に見せたらどう思われるのかも、分からなくなっているのかもしれない)

「殿下、王女殿下ともあろう方がそのような態……」
「黙りなさい!  ディライトのくせに!  わたくしに偉そうに意見を述べるなんて許される事ではな……」
「いいえ、殿下。その言葉、後で後悔する事になりますよ?」
「…………え?」

  ディライト様が含みを持たせてそう言うと、ミンティナ殿下の顔色が変わる。

「あなた……ディライトのくせに……!  あの時のお兄様を蹴落として王位継承を狙う言葉は本気で言っていたというの!?」
「当然ですよ。あの場で嘘をつく必要がどこにあります?」
「あぁ!  そうなのね?   つまりその為に、そこの悪役女と婚約を。おかしいと思っていましたの……よ…………ひいっ!?」

  ディライト様が無言で睨み、その顔を見たミンティナ殿下は更に脅えだした。

「ミンティナ殿下。訂正してください」
「な、何をですの……」
「決まっていますよ、悪役女です。俺の大事な愛するシャルロッテをそう呼ぶ事は許さないと申し上げたはずです。あぁ、どうやら目の検査は受診しなかったようですね?」 

  その言葉にミンティナ殿下はカッとなる。

「あ、当たり前でしょう?  わたくしはそこの女など……」
「シャルロッテを侮辱するな!」
「……ひっ!?」
「前にも言った!  俺はシャルロッテを愛している!!」

  ミンティナ殿下は誰かにこんな風に怒鳴られる事は普段から無いのかもしれない。
  “何で怒鳴られなくてはならないの?”という顔をしている。
  そんなミンティナ殿下の様子を見ながらディライト様は、小さなため息を吐いた。

「以前はここまで愚かでは無かったのに。よほど、プリマデント男爵姉弟に影響を受けたんだな」
「はっ!  そうよ!  マルセロ。マルセロはどこ?  何でいないのよ!?」

  ミンティナ殿下は、マルセロ様の名前を聞いてハッとしたように取り乱す。

「もう、何日も会ってない!  こんなの初めてよ……今日だってマルセロの為のパーティーなのに!  何で来ないのよ!?」

  (いえ、居るんですけどね)

  変装したマルセロ様は誰からも気付かれていない。
  真っ先に目に入るあの特殊な髪色を封印するだけでこんなにも違うのかと正直驚いた。
  あれだけ格好良いと騒がれていた容姿も、髪色あっての事だったのか、マルセロ様はありふれた色に変更させただけで……“普通”のどこにでもいそうな人になった。

  (今なら魅了とやらの力を使っても効き目薄そう)

「……ミンティナ殿下。残念ながらマルセロ・プリマデント男爵令息は二度と貴女の手を取る事はありません」

  ディライト様がきっぱりとそう告げる。

「……はぁ!?  何を言っているの!?  冗談はやめなさい!」
「いえ、冗談などでは……貴女は“真実の愛”の相手を失いました。残念ですね」
「ふざけないで!  どう……」

  ミンティナ殿下が更に大きな怒鳴り声をあげようとしたその時、その声に被せるかのようなもっと大きな声が会場内に響き渡った。

「待ちなさいよ!  ────ちょっと今の話、どういう事よ!?」

  (……来た!)

  その声の持ち主は、もちろんマルセロ様の姉、イザベル様。
  以前とは違い、お互い極力触れたくない……そんなギスギスした雰囲気を醸し出しながらジョーシン様のエスコートを受けて会場へと入って来た所だった。

「……これで揃ったな」

  ディライト様が私の横で小さくそう呟いた。

しおりを挟む
感想 290

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました

チャビューヘ
恋愛
三度目の婚約破棄で、ようやく自由を手に入れた。 王太子から「冷酷で心がない」と糾弾され、大広間で婚約を破棄されたエリナ。しかし彼女は泣かない。なぜなら、これは三度目のループだから。前世は過労死した41歳の経営コンサル。一周目は泣き崩れ、二周目は慌てふためいた。でも三周目の今回は違う。「ありがとうございます、殿下。これで自由になれます」──優雅に微笑み、誰も予想しない行動に出る。 エリナが選んだのは、誰も欲しがらない辺境の荒れ地。人口わずか4500人、干ばつで荒廃した最悪の土地を、金貨100枚で買い取った。貴族たちは嘲笑う。「追放された令嬢が、荒れ地で野垂れ死にするだけだ」と。 だが、彼らは知らない。エリナが前世で培った、経営コンサルタントとしての圧倒的な知識を。三圃式農業、ブランド戦略、人材採用術、物流システム──現代日本の経営ノウハウを、中世ファンタジー世界で全力展開。わずか半年で領地は緑に変わり、住民たちは希望を取り戻す。一年後には人口は倍増、財政は奇跡の黒字化。「辺境の奇跡」として王国中で噂になり始めた。 そして現れたのが、王国一の冷徹さで知られる財務大臣、カイル・ヴェルナー。氷のような視線、容赦ない数字の追及。貴族たちが震え上がる彼が、なぜか月に一度の「定期視察」を提案してくる。そして月一が週一になり、やがて──「経済政策の話がしたいだけです」という言い訳とともに、毎日のように訪ねてくるようになった。 夜遅くまで経済理論を語り合い、気づけば星空の下で二人きり。「あなたは、何者なんだ」と問う彼の瞳には、もはや氷の冷たさはない。部下たちは囁く。「閣下、またフェルゼン領ですか」。本人は「重要案件だ」と言い張るが、その頬は微かに赤い。 一方、エリナを捨てた元婚約者の王太子リオンは、彼女の成功を知って後悔に苛まれる。「俺は…取り返しのつかないことを」。かつてエリナを馬鹿にした貴族たちも掌を返し、継母は「戻ってきて」と懇願する。だがエリナは冷静に微笑むだけ。「もう、過去のことです」。ざまあみろ、ではなく──もっと前を向いている。 知的で戦略的な領地経営。冷徹な財務大臣の不器用な溺愛。そして、自分を捨てた者たちへの圧倒的な「ざまぁ」。三周目だからこそ完璧に描ける、逆転と成功の物語。 経済政策で国を変え、本物の愛を見つける──これは、消去法で選ばれただけの婚約者が、自らの知恵と努力で勝ち取った、最高の人生逆転ストーリー。

悪役令嬢発溺愛幼女着

みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」  わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。  響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。  わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。  冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。  どうして。  誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

処理中です...