【完結】今更、好きだと言われても困ります……不仲な幼馴染が夫になりまして!

Rohdea

文字の大きさ
16 / 27

絶望と葛藤の日々 ② (ヒューズ視点)

しおりを挟む



  辺境の地で生きるか死ぬかの危険と共に生きながら、俺は“魔術師”の事を調べた。
  人数は少ないが、不思議な力を宿している民族だという。
  力は様々で、術のような物を使う者、物に力を与えて不思議な道具を作り出す者……

  そして知る。
  昔オリヴィアと遊んだ時の、父上の持っていた特殊な用紙とインクは、魔術師が作ったものだった事を。

  (なるほどなー……)

  オリヴィアと楽しく過ごしていたあの頃……
  もう戻らない日々……

  (オリヴィアは幸せに過ごしているのだろうか?)

  オリヴィアさえ幸せなら、俺は──
  と、思うもあんな卑怯な事をする王子と本当に幸せになれるのだろうか?

  (今更だ……それに辺境からは戻れないし、呪われていてオリヴィアに嫌われた俺は何もしてやれない)


  …………だが、事態は大きく動く。


『……婚約破棄?』
『あぁ、ヨーゼフ殿下が婚約者にそう通告したらしい』

  噂好きの男がその話を持って来た。
  俺は衝撃で言葉がうまく出ない。

  (どういう事だ!?)

  ヨーゼフは俺を出し抜いてまでオリヴィアを手に入れたかったんじゃないのか!?

『噂では殿下は身分の低い男爵令嬢にご執心とか』
『……』

  (ふざけるな!  あんな形で俺からオリヴィアを奪っておいて!!)

  怒りしかなかった。

  そして、気持ちを落ち着けた後はオリヴィアはどんな気持ちで過ごしているのかと心配になった。
  他の女に心変わりされたなんてショックに違いない。
  しかも、婚約破棄。それも公の場で……

  (オリヴィア……)
  
  ──あーあ、誰かあの王子を引きずり下ろしてくれないかなぁー……

  本当だな。
  あんな奴をこのままのさばらせておいていいのか?

  (王都に戻れたなら……俺が)

  ──そんな気持ちが天に届いたのか、タイミングよく隣国との休戦が結ばれ辺境に追いやられていた俺達は戻る事を許される。

  (今しかない!)

  オリヴィアを取り戻すのも、ヨーゼフを引きずり下ろすのも!
 
  

  ヨーゼフを引きずり下ろすには時間が必要だ。
  王子に嵌められた人間の証言、証拠、そして、魔術師の存在など明らかにしないといけない事が多すぎる。
  
  (だが、辺境にいた人達はヨーゼフを恨んでる者ばかりだ)

  俺は5年も辺境にいた。その人脈は活かせば何とかなるはずだ。彼らは喜んで証言してくれるだろう。
  だから、俺はまずはオリヴィアを……
  オリヴィアを取り戻す事を優先にする事にした。



  魔術師の事を調べたら、俺のこれは“呪い”の類だと知った。
  人にも物にも好きだと言えない呪い。
  口にした場合は真逆の言葉が飛び出す。
  何より厄介なのは、“呪いにかかっている事は、人には言えないし伝える事も出来ない”事だった。

  (だから、言い訳の手紙もダメだったのか)

「……手紙?  待てよ。そう言えば……」

  昔、オリヴィアと遊んだ時のあの手紙。
  あの特殊な紙とインクは魔術師のお手製……あれなら、他の紙と違って伝える事も可能なのでは?

  (あの紙、1枚は使わずに残っていたはずだ!)

  俺はそこに最後の望みをかける事にした。




  そうして俺はオリヴィアへの求婚の準備に取りかかる──

「伝わって良かった……」

  その日、俺は心の底から安堵していた。
  オリヴィアに求婚すると決めたものの、まずは周りにそれをどう伝えるのか……それが大きな課題だった。
  おそらく“オリヴィアと結婚したい”と言おうものなら、“オリヴィアとの結婚なんてごめんだ”くらいの発言になるだろう。想像するだけで恐ろしい。

  しかし……

「オリヴィア……結婚……求婚」

  と、単語を並べたら何故か母上が瞬時に理解した。
  目を輝かせてこう言った。

「まぁぁ!  オリヴィアちゃんと結婚したい?  とうとう求婚するのね!?  そうよね。今しかないわ!  大賛成よ、ヒューズ!  さぁ、他の人に先を越されないように急ぐわよ!!」
「え……」

  母上は凄い。父上は首を傾げていたのに。
  単語しか言えなかったのも勝手に照れ隠しだと解釈していた。
  何だあれはとも思うが……でも助かった。

  こうして、俺の要望は両親に伝わり、イドバイド侯爵家には父上から連絡を入れて貰った。

  (後はオリヴィアへの手紙だ!)

  簡単に許して貰えるとは思わないが、5年前の真実と、俺がいかにオリヴィアの事を愛しているかを伝えたい。
  その上で俺の手を取ってくれたなら……

  (こんなに幸せな事は無い)

「もし、オリヴィアが受けいれてくれたなら、結婚は早めないと……」
 
  ヨーゼフが何を考えているか分からないからな。
  早い内にヨーゼフに手出しが出来ないようにしないと……

  そんな気持ちで書き出した手紙は、魔術師効果なのか、今まで書こうとしても書けなかった文が書けそうだった。

  (書ける!  今まで口に出来なかった事が……)

  この紙とインクの特殊性で文字は書いても真っ白にはなるが、これらは一般に売られている物だから、知っている人は知っている。つまり、読める人には読めてしまう。
  なので万が一、他の誰かに盗み見られても大丈夫なように内容も暗号をふんだんに使う事にした。

  (オリヴィアなら真っ白の紙を見て気付くはず。そして、暗号にした内容も解けるはずだ)

  そう信じて俺はようやく5年越しのオリヴィアが大好きだという想いと真実を書き記した。



  ───そうして、この想いがようやく届いたのか俺はオリヴィアと……




───────……



「……届いたと思ったのにな」

  まさか、手紙を読んでいなかったとは。
  5年前の誤解は解けないまま、オリヴィアは俺の元にやって来て俺は初夜でやらかした。

  (結婚出来たから呪いは解けたと思ったのが甘かった……)

「……だが、もう一度……」

  父上があの紙を手配してくれれば今度こそ。
  直接口では伝えられないが、このアクセサリーと共に俺の気持ちを───……

  領地に行ったおかげなのか、二人での時間を過ごしたからかオリヴィアの態度が少し変わった気がしたので俺も少しだけ大胆になってみた。
  真っ赤になったオリヴィアは超絶可愛い。あんな可愛い生き物は他に知らない。
  愛は囁けなくても一生大切にする!

「オリヴィア……」

  (そう言えば、オリヴィアは何をしに実家に戻ったのだろう?)

  忘れ物とか言っていたが……

「顔がみたいな。少し早く迎えに行ってもいいだろうか……」

  そう思った時だった。

「……えっとぉ、ヒューズ・カルランブル侯爵令息様ですかぁ?」
「?」

  見慣れない甘ったるい声の女が俺に声をかけてきた。

しおりを挟む
感想 201

あなたにおすすめの小説

何も決めなかった王国は、静かに席を失う』

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 表には立たず、裏で国を支えてきた公爵令嬢ネフェリア。 だが―― 彼女が追い出されたのは、嫉妬でも陰謀でもなかった。 ただ一つ、「決める役割」を、国が彼女一人に押しつけていたからだ。 婚約破棄の後、ネフェリアを失った王国は変わろうとする。 制度を整え、会議を重ね、慎重に、正しく―― けれどその“正しさ”は、何一つ決断を生まなかった。 一方、帝国は違った。 完璧ではなくとも、期限内に返事をする。 責任を分け、判断を止めない。 その差は、やがて「呼ばれない会議」「残らない席」「知らされない決定」となって現れる。 王国は滅びない。 だが、何も決めない国は、静かに舞台の外へ追いやられていく。 ――そして迎える、最後の選択。 これは、 剣も魔法も振るわない“静かなざまぁ”。 何も決めなかった過去に、国そのものが向き合う物語。

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮
恋愛
出会いは、ブライトン公爵邸で行われたガーデンパーティ。それまで婚約者候補の顔合わせのパーティに、一度も顔を出さなかったエレアーナが出席したのが始まりで。 彼女のあまりの美しさに、王太子レオンハルトと宰相の一人息子ケインバッハが声をかけるも、恋愛に興味がないエレアーナの対応はとてもあっさりしていて。 優しくて清廉潔白でちょっと意地悪なところもあるレオンハルトと、真面目で正義感に溢れるロマンチストのケインバッハは、彼女の心を射止めるべく、正々堂々と頑張っていくのだが・・・。 王太子妃の座を狙う政敵が、エレアーナを狙って罠を仕掛ける。 忍びよる魔の手から、エレアーナを無事、守ることは出来るのか? 彼女の心を射止めるのは、レオンハルトか、それともケインバッハか? お話は、のんびりゆったりペースで進みます。

お飾りの私と怖そうな隣国の王子様

mahiro
恋愛
お飾りの婚約者だった。 だって、私とあの人が出会う前からあの人には好きな人がいた。 その人は隣国の王女様で、昔から二人はお互いを思い合っているように見えた。 「エディス、今すぐ婚約を破棄してくれ」 そう言ってきた王子様は真剣そのもので、拒否は許さないと目がそう訴えていた。 いつかこの日が来るとは思っていた。 思い合っている二人が両思いになる日が来ればいつの日か、と。 思いが叶った彼に祝いの言葉と、破棄を受け入れるような発言をしたけれど、もう私には用はないと彼は一切私を見ることなどなく、部屋を出て行ってしまった。

殿下、私以外の誰かを愛してください。

八雲
恋愛
公爵令嬢ラブリーは、第一王子クロードを誰よりも愛していました。しかし、自分の愛が重すぎて殿下の負担になっている(と勘違いした)彼女は、愛する殿下を自由にするため、あえて「悪役令嬢」として振る舞い、円満に婚約破棄されるという前代未聞の計画を立てる。協力者として男爵令嬢ミリーを「ヒロイン役」に任命し、準備は整った。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。

藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。 どうして、こんなことになってしまったんだろう……。 私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。 そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した…… はずだった。 目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全11話で完結になります。

処理中です...