【完結】今更、好きだと言われても困ります……不仲な幼馴染が夫になりまして!

Rohdea

文字の大きさ
22 / 27

20. 私の幸せ

しおりを挟む


「ヒューズ、バカ王……ヨーゼフ殿下はこのままでいいの?」

  私の肩を抱いて部屋を出るヒューズ。
  つい、私の中の恋心が爆発してうっとりと彼を見つめてしまっていたけれど、よくよく考えるとあのバカ王子を放置するのはどうなのかと思う。

「ヨーゼフは必ず追い詰めるよ。次の機会には必ず」
「次?」

  私がそう聞き返すとヒューズは手を伸ばしてそっと私の頬に触れる。

「ヨーゼフはオリヴィアの事をまだ諦めていないだろうからね。放っておいても向こうから絡んでくるさ」
「そんな!」

  迷惑である事も、私がヒューズを想っている事もはっきり告げたのに?

「どこまで馬鹿なの……?」
「馬鹿だからここまでの事態になったんだと思う」
「……」

  ヒューズの言う通りで、本当に気持ち悪い人だと思った。

「大丈夫だ。俺も何も考えていないわけでは無いから」
「……分かったわ」

  ヒューズのその言葉を信じようと思った。
  
「オリヴィア……」
「ヒューズ?」

  チュッ!

  熱っぽい声で名前を呼ばれたので顔を上げると、ヒューズが軽く私に口付けた。
  ハッと我に返り恥ずかしくなる。

「も、もう!  さっきから何回するの?」
「そんな事を言わないでくれよ。やっとこうしてオリヴィアに触れられる。触れる事を許されたんだから」
「ヒューズ……」

  5年越しのヒューズの想い。
  そして、子供の頃からの想い。それらが全て伝わって来る。

「ヒューズ、大好き……」
「オリヴィア……」

  そうして再び私達の顔が近付き、唇が重なろうとした時……
  その声が邪魔をして来た。

「お、お前達!  廊下こんなところで、何をしているんだ!?」
「……」
「……お父様」

  その声の主は、どこか怒った様子のお父様。
  聞こえていたはずなのに、あれだけの騒ぎにこれまで一切顔を出さず、今になってようやくノコノコ現れた。

「ヒューズ殿も……止めるのをを聞かずにオリヴィアの部屋に行ってしまったと思えば二人揃ってこんな所で何を…………ん?  そうだ、そんな事よりもお前達、ヨーゼフ殿下はどうしたんだ!」
「どうって……」

  (呆然としている様子の所を私の部屋に置いて来たけれど……)

「まさかとは思うが怒らせたわけでは無いだろうな!?  そんな事は許さんぞ!」

  (そのまさかですけど……)

  そんな私の心の声も知らずにお父様はどんどん捲し立てて来る。

「オリヴィア、殿下から話があっただろう?  なんと殿下はやはりお前がいいらしい。今日はその話をする為にお前に会いにわざわざ来てくれたそうだぞ!」
「……」
「ヒューズ殿も部屋に押しかけたならその話を聞いただろう?  一度は殿下に捨てられ、令嬢としての価値も嫁ぎ先も無くなった残念な娘なのだが、なんと幸運な事に殿下はもう一度と望んでくれている……」

  ──殿下に捨てられて、令嬢としての価値も嫁ぎ先も無くなった娘。

  (分かってはいたけれど……お父様がそういう人だって事は分かっていたけれど……!)

  その言い方は酷い。

「ヒューズ殿。行き場の無かったオリヴィアに手を差し伸べてくれた事には感謝しているが、オリヴィアは王子に嫁いだ方が幸せになれるんだ。君もそう思うだろう?  だから、すまないがオリヴィアとは離縁を……あぁ、慰謝料はもちろん……」

  (なっ!)

  お父様は遂に離縁の話までヒューズに持ち出した。
  その事が許せなくて私の身体が怒りでプルプル震える。そして……

「わ、私の幸せを勝手に決めないで!!」
「黙って聞いていれば……ふざけるな!!」

  私とヒューズはお父様に向かって同時に叫んでいた。

「な、何なんだ?  二人共……」

  お父様は怒鳴られた事に驚いたのか唖然としている。
  私は我慢出来ずに更に声を張り上げる。 

「王子に嫁いだ方が幸せ?  そんなはずないでしょう!?」
「だ、だが、オリヴィア……」
「私の幸せは私が決める!  お父様が決める事じゃないわ!  私はバカ王……じゃない、ヨーゼフ殿下ではなく、ヒューズの事が好きなの!  ずっとずっと好きだったの!」
「オ、オリヴィア……」

  お父様はとても驚いた顔をしていた。

「オリヴィア……もう、行こう?  話しても無駄だ」
「ヒューズ……」

  興奮しすぎて肩でハァハァと息をする私をヒューズが優しく抱き寄せてくれる。
  私はヒューズに、身体を預けながら小さく頷いた。

「……それでは、お邪魔しました。我々はこれで。ヨーゼフ殿下はオリヴィアの部屋にいるのでどうぞ後はよろしく」

  ヒューズがお父様に冷たい視線を向けながら言った。
  お父様の目がオロオロと泳いでいる。

「オ、オリヴィア……ヒューズ殿……」
「……イドバイド侯爵」
「?」

  ヒューズはにっこり笑って言う。

「もう、この先オリヴィアがこの家に……あなたに会いに来る事は無いと思って下さい」
「え?  どういう意味だ……?  おい、待っ……」

  驚いているお父様の声を無視して、ヒューズは「それでは失礼します」とばっさり会話を打ち切って歩き出した。


──


「オリヴィア……大丈夫か?」
「……うん」

  馬車に乗り込むとようやく緊張が解れたのか、大きな疲労感に襲われた。
  そんな私をヒューズは優しく抱きとめてくれている。

「……ヒューズの温もり……好き、大好き……」
「!」

  私がヘニャッとした笑顔でそう言うとヒューズの顔が真っ赤になった。

「……っ!  そ、そんな、か…………顔でそんな事を言うなよ」
「何で?」
「…………っ、止まらなくなる」
「ヒュ……」

  その先は言葉にならない。
  ヒューズがギュッと私を抱きしめたまま、本日何度目かも分からない口付けが始まったから。
 
  チュッ

「ん……」
「オリヴィア……」
   
  (こ、声が甘い!  デロンデロンに甘いわ)

  私の頭の中も蕩けそうだった。

  チュッ、チュッ……

「オリヴィア……オリヴィア」

  ヒューズからの甘い囁きと口付けは止まる気配が無い。

「ヒューズ……」
「……オリヴィア」

  カルランブル侯爵家の屋敷に着くまでの時間、私達は、二人きりでたくさんの口付けを交わしながら過ごした。



◇◇◇◇◇



  その日の夜───……

「……とっても濃い1日だったわ」

  目が冴えてしまって全然眠れない。
  それと言うのも、屋敷に戻って来てから、一気に疲れがやって来て少し眠ってしまったせいだろう。

「ヒューズは眠れているかしら?」

  ヒューズも凄く疲れているはず。ちゃんと身体を休めてると良いのだけど。

「……ふふ」

  (私が考えるのはいつでもヒューズの事ばかりだわ)
 
  なんて思いながら一人で笑っていたら扉がノックされる。
  まさかヒューズ?  と思ってドキドキしながら扉を開けると、やはりそこには大好きなヒューズの姿。

「ヒューズ?  どうしたの?」
「ごめん……夜遅くに。ね、眠れなくて……そうしたら……その、オ、オリヴィアの顔が見たくなった」
「まぁ!」

  こんな時、私達の気持ちは一緒なのだなと思う。そんな事すら嬉しい。
  私は微笑んでヒューズを招き入れた。



  (───って!)

  招き入れてからふと気付く。

  もう夜も遅い時間。こんな時間に夫が妻の部屋を訪ねるって───……
  
  ボンッ!!
  私の顔が真っ赤になった。

「オリヴィア!?」
「……」

  ヒューズの慌てた声が聞こえる。
  そんなヒューズの顔も赤い。彼も意識してると思うと私の胸がますます高鳴った。

「ヒューズ……」
「オリヴィア……」

  ヒューズの瞳の中に私が映っている。
  この瞳は私だけを見てくれている……
  そんな気持ちでうっとりした顔をしている私に向かって、ヒューズもほんのり頬を染めながら言った。


「オリヴィア……俺はお前を愛してなどいない!」

  ───と。

  
しおりを挟む
感想 201

あなたにおすすめの小説

何も決めなかった王国は、静かに席を失う』

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 表には立たず、裏で国を支えてきた公爵令嬢ネフェリア。 だが―― 彼女が追い出されたのは、嫉妬でも陰謀でもなかった。 ただ一つ、「決める役割」を、国が彼女一人に押しつけていたからだ。 婚約破棄の後、ネフェリアを失った王国は変わろうとする。 制度を整え、会議を重ね、慎重に、正しく―― けれどその“正しさ”は、何一つ決断を生まなかった。 一方、帝国は違った。 完璧ではなくとも、期限内に返事をする。 責任を分け、判断を止めない。 その差は、やがて「呼ばれない会議」「残らない席」「知らされない決定」となって現れる。 王国は滅びない。 だが、何も決めない国は、静かに舞台の外へ追いやられていく。 ――そして迎える、最後の選択。 これは、 剣も魔法も振るわない“静かなざまぁ”。 何も決めなかった過去に、国そのものが向き合う物語。

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮
恋愛
出会いは、ブライトン公爵邸で行われたガーデンパーティ。それまで婚約者候補の顔合わせのパーティに、一度も顔を出さなかったエレアーナが出席したのが始まりで。 彼女のあまりの美しさに、王太子レオンハルトと宰相の一人息子ケインバッハが声をかけるも、恋愛に興味がないエレアーナの対応はとてもあっさりしていて。 優しくて清廉潔白でちょっと意地悪なところもあるレオンハルトと、真面目で正義感に溢れるロマンチストのケインバッハは、彼女の心を射止めるべく、正々堂々と頑張っていくのだが・・・。 王太子妃の座を狙う政敵が、エレアーナを狙って罠を仕掛ける。 忍びよる魔の手から、エレアーナを無事、守ることは出来るのか? 彼女の心を射止めるのは、レオンハルトか、それともケインバッハか? お話は、のんびりゆったりペースで進みます。

お飾りの私と怖そうな隣国の王子様

mahiro
恋愛
お飾りの婚約者だった。 だって、私とあの人が出会う前からあの人には好きな人がいた。 その人は隣国の王女様で、昔から二人はお互いを思い合っているように見えた。 「エディス、今すぐ婚約を破棄してくれ」 そう言ってきた王子様は真剣そのもので、拒否は許さないと目がそう訴えていた。 いつかこの日が来るとは思っていた。 思い合っている二人が両思いになる日が来ればいつの日か、と。 思いが叶った彼に祝いの言葉と、破棄を受け入れるような発言をしたけれど、もう私には用はないと彼は一切私を見ることなどなく、部屋を出て行ってしまった。

殿下、私以外の誰かを愛してください。

八雲
恋愛
公爵令嬢ラブリーは、第一王子クロードを誰よりも愛していました。しかし、自分の愛が重すぎて殿下の負担になっている(と勘違いした)彼女は、愛する殿下を自由にするため、あえて「悪役令嬢」として振る舞い、円満に婚約破棄されるという前代未聞の計画を立てる。協力者として男爵令嬢ミリーを「ヒロイン役」に任命し、準備は整った。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。

藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。 どうして、こんなことになってしまったんだろう……。 私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。 そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した…… はずだった。 目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全11話で完結になります。

処理中です...