【完結】今更、好きだと言われても困ります……不仲な幼馴染が夫になりまして!

Rohdea

文字の大きさ
23 / 27

21. やり直しの夜

しおりを挟む

「……」
「……」

  前にも聞いた覚えのあるそのセリフに互いに無言になる。

「俺は……オリヴィア……お前の事が大嫌いだ!」
「ヒューズ……」

  ヒューズは頬をほんのり赤く染めて、私に向かってそう口にする。
   
  (5年前の私は傷付いて……初夜の日の私は……イラッとしたんだっけ)

  ヒューズの頬は赤い。
  過去の二度は言われた言葉の方にショックを受けて気付かなかったけれど、あの時のヒューズの顔もこんな風に赤かったのかもしれない。

「愛してない……嫌いなんだ……」
「ヒューズ」

  私はそっとヒューズに近付いて彼を抱きしめる。
  だって、私はもう間違えない!

「……ねぇ、ヒューズ」
「……」
「そんなに……そんなにヒューズは私の事が大好きなの?」

  私のその質問にヒューズの目は少し驚いた様子を見せたけれど、その後すぐにハッキリと言う。

「す…………嫌いだ。ずっとずっとずっと……誰よりも、す……嫌いだ」
「そう、ふふ……」
「俺以上にオリヴィアを……オリヴィアの事を、あ……愛してない男はいない!」
「ヒューズ……」

  傍から聞いたら意味不明だし、嫌いだの愛してないだのといったとんでもない暴言。
  それでも、これが私達の……ヒューズが私に愛を伝える言葉なの。

「そんなに?」
「あぁ!  オリヴィアはどこのどんな令嬢よりも可愛くないし、愛らしさもない。俺はずっとずっと昔からそんなオリヴィアを愛してない……んだ」
「ヒューズ……」
「……」
「……」
「……フッ」
「ふふ……」

  口にしているヒューズ自身も、それを聞いている私も何だかこの状態が可笑しくて。
  私達は笑い合う。

  (こんな愛の言葉、他では聞けないわ)

「…………ねぇ、ヒューズ」
「うん?」
「私を…………あなたのお嫁さんにして?」
「え?」

  真っ赤な顔をしたヒューズが驚いた顔をして私を見る。

「私、あなたの本当の妻になりたい」
「オ、オリヴィア」

  ───今日、あのバカ王子が現れて、お城に連れて行かれそうになった。
  もし、ヒューズが間に合わなくてお城に連れて行かれていたらと思うとゾッとする。

  (それこそ、無理やり襲われて……純潔を奪われていたかもしれない)

  ヒューズとは白い結婚だったのだとバレてしまい言い逃れも出来ず、離縁させられてバカ王子と結婚させられる……なんて事になったかもしれない。

  (嫌だ!  絶対に絶対に嫌!)

  ちょっと怖い……けど、ヒューズなら。ううん、ヒューズがいい。彼でないとダメなの。私が好きなのは今も昔もヒューズだけだから。

「お願い、今夜は私を……たくさん愛して?  ヒューズ……」
「オリヴィア!」

  ヒューズが力強く抱きしめ返してくる。

「いいのか?  嫌だと言っても止められない……ぞ?」
「ヒューズだもん。嫌なわけないじゃない」

  大好きなヒューズと結ばれるのに嫌なはずが無い。

「オリヴィア……」
「あ……」

  ヒューズの優しい口付けが降ってくる。
  そのまま、抱き抱えられた私はヒューズにベッドへと運ばれる。

  (し、心臓が……)

  あぁぁ……もっとお風呂で初夜となるはずだった日みたいに、ピッカピカに身体を磨いて貰うべきだったわ。
  夜着もいつもの夜着だし。
  もっと、初夜らしく悩殺するようなスケスケなのを着ておけば良かった……
  なんて今更、少しだけ後悔したけれど、そんな事は私達の前ではきっと些細な事。

  だって、

「オリヴィア……」

  そう言って、ベッドに横にした私に覆い被さってくるヒューズ。
  愛しそうに大事そうに私の名前を呼ぶヒューズの目が、私を求めている。
  ただ、私が欲しい──そう言ってくれている。

「大好きよ、私の愛しい愛しい旦那様……」
「あぁ、オリヴィア、俺のい…………妻……」

  (うん……やっぱり私達は言葉が無くても大丈夫)

  どっかのバカ王子のように薄っぺらい好きなんて言葉より、今、目の前の呪われて愛を囁けないヒューズの言葉の方が何倍も嬉しい。
  
「オリヴィア……」
  
  ヒューズは、チュッチュッと顔中に口付けを落としながら、私の夜着を脱がしていく。

「……オリヴィア、柔らかい……それに肌がスべスべして…………」
「んっ、そういう事はわざわざ言わなくても……んん」
「いや、言いたい」

  チュッ

「あ、な、何で?」
「オリヴィアが俺のオリヴィアだとより実感……出来る、から」
「……ヒューズ」

  チュッ、チュッ……

  そう言ったヒューズは、顔以外にも口付けを落としながら私に触れていく。

「……あ…………よ。オリヴィア」
「ええ、私も、愛しているわ、ヒューズ」


  ───その晩、愛する夫、ヒューズからの愛はなかなか止まらなかった。






「…………ん?  眩し……」

  暖かい温もりを感じて目を覚ます。
  日の光の位置がいつもより高い気がする。
  寝すぎたかも……何で起こされなかったのかしら?
  それに、この温もり……

  (何だか守られているような……そんな温も……)

  そこでハッと昨夜の事を思い出す。

  (私!  ヒューズと!!)

  一気に頭の中が覚醒した。
 この温もりはヒューズの温もり!!

  (私……ヒューズの妻になれたんだわ……)

  私の身体を抱きしめるように回されている手を見て思う。
  幼い頃から密かに夢を見て来て5年前に叶わないと絶望した夢、ヒューズのお嫁さん。
  その願いが叶ったんだと思うと、嬉しくて思わず顔が綻ぶ。

  (……思っていたより激しかったけれど……)

  日が高くなっているはずよね……眠ったのは明け方だもの。
  ヒューズの私への想いと執着は身体の痛みと身体中に残された跡が全てを語っている。

「…………んん」
「ヒューズ、起きた?」

  ヒューズの声が聞こえたので私は体勢を変えてヒューズの顔を覗き込もうとする。

「…………オリヴィアがいる」
「オリヴィアです」
「うん。オリヴィア……俺の……オリヴィア」
 
  まだ、どこか寝惚けているのかヒューズは夢と現実の狭間にいるような様子だった。

  (可愛い!  ヒューズって寝起き悪かったのね!?)

  寝惚けた様子のヒューズをひたすら楽しんでいたら、ヒューズの腕が伸びて私の首に回される。
  ん?  と、思う間もなくそのままヒューズの顔が近付いて来て、チュッと口付けされた。

「ヒューズ!?」
「……」
  
  これは寝惚けてるの?  それとも、朝から求められてるの??  え?  あんなにしたのに?
  私がドキドキしていたら、ヒューズはうっとりとした表情で言った。

「オリヴィア……オリヴィアがいる。夢?  夢じゃない……俺の……俺のオリヴィア……」

  (────え?  今、なんて?)

「…………愛してるよ、オリヴィア」

  (!?)

  一生聞けないと覚悟していた言葉が耳に飛び込んで来た瞬間だった。

しおりを挟む
感想 201

あなたにおすすめの小説

何も決めなかった王国は、静かに席を失う』

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 表には立たず、裏で国を支えてきた公爵令嬢ネフェリア。 だが―― 彼女が追い出されたのは、嫉妬でも陰謀でもなかった。 ただ一つ、「決める役割」を、国が彼女一人に押しつけていたからだ。 婚約破棄の後、ネフェリアを失った王国は変わろうとする。 制度を整え、会議を重ね、慎重に、正しく―― けれどその“正しさ”は、何一つ決断を生まなかった。 一方、帝国は違った。 完璧ではなくとも、期限内に返事をする。 責任を分け、判断を止めない。 その差は、やがて「呼ばれない会議」「残らない席」「知らされない決定」となって現れる。 王国は滅びない。 だが、何も決めない国は、静かに舞台の外へ追いやられていく。 ――そして迎える、最後の選択。 これは、 剣も魔法も振るわない“静かなざまぁ”。 何も決めなかった過去に、国そのものが向き合う物語。

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮
恋愛
出会いは、ブライトン公爵邸で行われたガーデンパーティ。それまで婚約者候補の顔合わせのパーティに、一度も顔を出さなかったエレアーナが出席したのが始まりで。 彼女のあまりの美しさに、王太子レオンハルトと宰相の一人息子ケインバッハが声をかけるも、恋愛に興味がないエレアーナの対応はとてもあっさりしていて。 優しくて清廉潔白でちょっと意地悪なところもあるレオンハルトと、真面目で正義感に溢れるロマンチストのケインバッハは、彼女の心を射止めるべく、正々堂々と頑張っていくのだが・・・。 王太子妃の座を狙う政敵が、エレアーナを狙って罠を仕掛ける。 忍びよる魔の手から、エレアーナを無事、守ることは出来るのか? 彼女の心を射止めるのは、レオンハルトか、それともケインバッハか? お話は、のんびりゆったりペースで進みます。

お飾りの私と怖そうな隣国の王子様

mahiro
恋愛
お飾りの婚約者だった。 だって、私とあの人が出会う前からあの人には好きな人がいた。 その人は隣国の王女様で、昔から二人はお互いを思い合っているように見えた。 「エディス、今すぐ婚約を破棄してくれ」 そう言ってきた王子様は真剣そのもので、拒否は許さないと目がそう訴えていた。 いつかこの日が来るとは思っていた。 思い合っている二人が両思いになる日が来ればいつの日か、と。 思いが叶った彼に祝いの言葉と、破棄を受け入れるような発言をしたけれど、もう私には用はないと彼は一切私を見ることなどなく、部屋を出て行ってしまった。

殿下、私以外の誰かを愛してください。

八雲
恋愛
公爵令嬢ラブリーは、第一王子クロードを誰よりも愛していました。しかし、自分の愛が重すぎて殿下の負担になっている(と勘違いした)彼女は、愛する殿下を自由にするため、あえて「悪役令嬢」として振る舞い、円満に婚約破棄されるという前代未聞の計画を立てる。協力者として男爵令嬢ミリーを「ヒロイン役」に任命し、準備は整った。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。

藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。 どうして、こんなことになってしまったんだろう……。 私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。 そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した…… はずだった。 目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全11話で完結になります。

処理中です...