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22. 甘い夫
しおりを挟む私はびっくりしてそのまま固まった。
「……」
「? ……どうかしたか? オリヴィア」
ヒューズは寝惚けているせいなのか自分で自分の発言に気付いてない?
突然固まった私を見て不思議そうにしている。
「オリヴィア?」
「ヒュ、ヒューズ……あの……ね? えっと……その」
私はようやく口を開いたけれど、動揺しすぎてうまく話せない。そんなオロオロしている私の上にヒューズが再び覆い被さって来た。
(えぇ!? 何でこの体勢になるのーー!?)
私はますます動揺したけれど、ヒューズはまだどこかうっとりした表情のまま。
「……あぁ、ダメだ。昔からオリヴィアは何をしていても可愛いんだ、可愛すぎる」
「!!」
やっぱり!
さっきの発言も今の発言も絶対に聞き間違いでは無いわ!
これは、寝惚けてないではっきりさせなくちゃ!
そう思って私は訊ねようとしたけれどー……
「ねぇ、ヒュー……」
チュッ
あなたの呪いが解けたかもしれないわ! そう伝えたいのにヒューズの口付け攻撃が開始してしまった。
「オリヴィア……愛してるよ」
「っ!」
しかも、チュッチュッと口付けの合間にヒューズが愛を囁いてくる。
誰が聞いても絶対に聞き間違える事の無い愛の言葉を。
「オリヴィア……ずっとオリヴィアを俺の腕の中に抱きしめて眠る日を夢見てた」
「ヒューズ?」
「……その願いが叶ったんだな……」
そう言って目元を潤ませているヒューズの事が、更に愛しいと思った。
(私、こんなに愛されていたんだわ……)
「ヒューズ、今夜からは……その、一緒に……」
「オリヴィア?」
「わ、私達のふ、夫婦の寝室」
「! あぁ、そうだ……な。あそこの俺達夫婦の寝室で一緒に……」
ヒューズが夫婦の寝室に続く部屋の扉に一瞬視線を向けた後、嬉しそうに笑った。
そんなヒューズの顔を見ると、再び私を見る瞳に熱がこもっていた。
(!!)
───その後、誰も起こしに来ないのをいい事に、私は再びヒューズにたくさん愛された。
─────
「……えっと、目が覚めましたでしょうか?」
「…………はい」
たくさんのイチャイチャを終えてようやくヒューズは完全に目が覚めたらしい。
イチャイチャしている最中も、言えなかったはずの愛の言葉をこれでもかと囁いていたヒューズは、何度目かの「愛してる」という言葉を私に囁いたと同時にハッと気付いたのか突然固まった。
「…………オ、オリヴィアさん。えっとですね……俺はいつから?」
「今朝、目を覚ました時からですね、ヒューズさん」
「今朝から……つ、つまり、俺は目が覚めた時からオリヴィアさんに……」
「たくさんの可愛いと大好きと愛してるを頂きましたよ、ヒューズさん」
「!!」
ヒューズの顔が一瞬で真っ赤になる。そして、恥ずかしくなったのか両手で顔を覆ってしまった。
「あー……オリヴィアさん……つ、つまりこれは……」
「呪いが解けてると思います」
「……」
ヒューズがそっと顔を覆っていた手を離す。顔は真っ赤なままだった。
そして決意を込めた表情で私に言う。
「オ、オリヴィア……好きだ!」
「はい」
顔を赤くしたまま、少しぶっきらぼうな口調。
「えっと、だ、大好きだ!!」
「知っています」
今度は照れている。可愛い……
「…………愛してます」
「ふふ、私も!」
「わっ!?」
嬉しくて私はヒューズに抱き着いた。今度は私の方がヒューズを押し倒す形になった。
だって、やっぱり嬉しくて仕方がない!
愛の言葉は一生聞けなくてもいい、そう思っていた。もう決して誤解はしないから。
でも、ヒューズは昨夜も私に愛を囁けないという事実を少し気にしていた。
だから “ヒューズを蝕んでいた呪い”が解けた。その事がただただ嬉しい。
「オリヴィア……ありがとう」
「何が? 私は何も……」
「オリヴィアがいたから呪いが解けたんだよ」
口付けでは解けなかったのに。まさか……肌を合わせる事が解呪になるなんて。
魔術師は私とヒューズが色んな意味で結ばれる事は無いと思ってこうしたのでしょうけど……
「ヒューズ!」
「オリヴィア!」
互いにギュッーーと抱きしめ合いながら、私達は呪いが解けた事を喜びあった。
◇◇◇◇◇
ようやく本当の夫婦になった私達。
ずっと使われていなかった夫婦の寝室で夜を共に過ごす事に慣れた頃、その手紙が私達の元に届いた。
「へ、陛下!? 国王陛下からの呼び出し!?」
「そうなんだ。王家の印章だからてっきりヨーゼフが何か送り付けて来たのかと思ったんだけど……」
「まさかの陛下だった、と?」
「……そうなんだよ」
これは絶対にバカ王子に関する事に違いない。
私達は互いに顔を見合わせる。
「ヒューズ……」
「大丈夫だ」
「でも……」
(あのバカ王子が陛下にある事ない事吹き込んだ可能性だって……)
「ヨーゼフが何を言ったかは知らないが、俺達は俺達の話をするだけだ」
「ヒューズ」
「ヨーゼフのしてきた事を訴える準備は出来ている。だからこれは願ってもないちょうど良い機会なんだ。これで全てをすっきりさせてしまおう」
ヒューズはそう言いながら私を抱き寄せる。
私もそっと彼の胸の中に顔を埋める。
「ヨーゼフには、これまで好き勝手して来た報いを必ず受けてもらうんだ」
「そうね……」
─────
「オリヴィア、これを」
「?」
陛下との謁見を翌日に控えた夜、夫婦の寝室にやって来たヒューズは私に一つの箱を差し出した。
何の箱だろうかとまじまじと確認しているとヒューズが言う。
「……ずっと渡せなかった、オリヴィアへのプレゼントだ」
「え?」
私が驚いて顔を上げると、照れたヒューズの顔が目の前にある。
「ずっと?」
「うん、5年前に俺はこれを渡してオリヴィアに“好きだ”って告げるつもりだったんだ」
「ヒューズ……」
「呪いのせいでそれ所では無くなってしまったけど」
「……」
そっか。あの時の私はヒューズが手に何か持っていたのかすら見ていなかったわね。
「ありがとう」
「……サイズを直してもらっていたから遅くなってしまった」
「サイズを?」
私が聞き返すとヒューズは優しく微笑む。
「オリヴィアはこれを欲しがっていただろう?」
「え?」
「開けてみてくれ」
その言葉で私は慌てて箱を開ける。
その中には───
「指輪……」
「オリヴィアが結婚式で交換するアクセサリーは指輪がいいって言っていたからな」
「……覚えていたの!?」
私が驚きの声を上げるとヒューズは小さく笑った。
「オリヴィアの事なら何でも覚えてるよ。俺は昔からずっとずっとオリヴィアだけを見てきたんだ」
「ヒューズ……」
「愛してるよ、オリヴィア。俺の可愛い奥さん」
そう言ってヒューズは、箱から指輪を取り出すとそっと私の左手の薬指にはめた。
その事にハッとする。
「左手……薬指。こんな些細な事も覚えてくれているのね」
「当たり前だろ」
「……」
私は改めて思った。本当に本当にヒューズの事が大好きだと。
「オリヴィア……その顔は……誘ってる?」
「え? 誘っ!? 顔って何?」
突然何の話かと私は慌てる。
「オリヴィアが俺の事を大好きだと言っている顔。そんなオリヴィアの顔を見たら俺はムラムラが……」
「厶!?」
「そう、ムラムラだよ」
そのまま、チュッと口付けされベッドに押し倒される。
「毎晩してるのに?」
「全然足りないよ。俺の愛は…………重いから」
「ヒューズ……」
ヒューズは私の耳元で「愛してる」と囁きながら、私の夜着に手をかけた。
私は思う。今日の夜も長そうだわ───……
そして、たくさん愛された翌日。
私とヒューズは王城に……陛下との謁見に向かった。
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