【完結】可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~

Rohdea

文字の大きさ
27 / 66

27. それぞれの思いを抱えて

しおりを挟む


❋❋❋


「え?  王宮筆頭魔術師だけでなく、お、お父様……だった人も一緒に来るのですか!?」
「ああ。ローウェル伯爵ってマルヴィナ……君の父親だった人だろう?」

(そっか。お父……あの人の持っている力は王族の護衛……)

 短期間でという話なので、ずるずると大勢の護衛を引き連れて訪問するよりも特別な力を持ったあの人だけを連れていく方が身軽だからということね、と思った。

「マルヴィナ、大丈夫?」
「大丈夫です。ただ、その……濃いメンバーだな、と」

(……私と関わり深い人ばかりが集まろうとしているのは偶然……なのかしら?)

「クロムウェルとしては訪問をあまり派手にはしたくない、ということでしょうか?」
「……王子の婚約者が魔術を学ぶのが目的だし、それに……」
「それに?」
「いや……」

 トラヴィス様は首を横に振ってその先は言わなかった。

「それから、これ」
「!」

 これ、と言ってトラヴィス様が二通の手紙を私に見せてくれた。
 それは私にとって見覚えのある文字───

「サヴァナとクリフォード様の字ですね?」
「うん。事前に送っていた手紙の返事が来た」

 サヴァナたちの訪問の日が近付く中、トラヴィス様は一度、クロムウェルに手紙を出していたという。
 目的は二人がどれだけルウェルンの文字を理解しているかを知るため、とのことだったけれど。

「どうでした?」
「うーん……まぁ、王子の方は最低限の理解はしている、という感じかな?」
「最低限の教育は受けて来ていますからね」
「そして、肝心の妹は───」

 そう言ってトラヴィス様はサヴァナが書いたという返信の中身を見せてくれた。

「……」
「……」

(こ、これは……)

 私もトラヴィス様も言葉を失う。

「サヴァナ……全く理解していませんね?」
「俺もクロムウェル語は話せるけど文字は苦手だから、人のことは言えないがこれで王子妃……未来の王妃に、というのは……ちょっと……」

 ……クロムウェルの妃教育のレベルを疑う。
 トラヴィス様ははっきりそう言った。

「分からないなりに自分で調べてみる、勉強してみる、そんな気持ちすらもなく、適当に返信を書いたんだろうなぁ」
「……性別が“男”に〇がついていますからね」
「文字でこれなら、会話はもっと無理だろう」
「ルウェルン語は特に発音が難しいですから」

 私がそう言うと、手紙を見ていたトラヴィス様が顔を上げてじっと私のことを見た。
 分厚い眼鏡越しでも視線を感じる。

「どうしました?」

 トラヴィス様はフッと優しく微笑むと手を伸ばして私の頭を優しく撫でた。
 その仕草に胸がドキッとする。

「……初めて図書館で会った時も思ったけど、マルヴィナの発音は綺麗だ。俺は言われなかったら君がクロムウェル出身だとは思わなかった」
「あ、ありがとうございます」

 私が照れながらお礼を伝えると、トラヴィス様の笑みはますます深くなる。

「マルヴィナがこれまで頑張って来た成果はきちんと出ている」
「トラヴィス様……」

(知らなかった……)

 誰かに頑張りを認めて褒めてもらえるってこんなに嬉しいことだったんだ……
 胸の奥がポカポカしてあたたかい。
 そして、思う。

(褒めて認めてくれた相手がトラヴィス様なのが……もっと嬉しい)

 私たちはしばらく微笑みながら見つめ合った。


「───コホンッ、そろそろいいかしら?  お兄様もマルヴィナさんも私の存在すっかり忘れていません?」
「!」
「リ、リリー……!」

 気まずそうに間に入って来たリリーベル様の言葉にハッとする私たち。

「仲良くすることはとっても良いことですけど、今は……」
「そ、そそそそそうだな!  話を進めよう!」
「はははははい!」

 慌てる私たちの姿をリリーベル様は苦笑しながら見ていた。


「────それで、ご一行がルウェルンを訪問して来てからのマルヴィナなんだけど」
「あ……」

 その件についても、私はとある覚悟を決めていた。
 トラヴィス様もリリーベル様も、彼らのルウェルン国の訪問中、私は彼らと鉢合わせすることの無いよう屋敷から出ないようにしよう。
 ……そう言われる気がしている。

(でも……)

「それなのですが、トラヴィス様」
「うん?」
「……」

 彼らの訪問は短期間なのだから、大人しくしているべきだとは分かっている。
 それでも!
 私はギュッと拳を握りながら口を開く。

「──私も、その場に同席したいです」
「「え!」」

 トラヴィス様とリリーベル様の驚きの声が重なった。



❋❋❋


「──それじゃ、行くよ。サヴァナ」
「はい!」

 その頃のクロムウェル王国では、クリフォード、サヴァナ、王宮筆頭魔術師、ローウェル伯爵の四人が馬車に乗り込んで雨の降る中、秘密裏に王宮を出発。
 サヴァナは馬車に揺られながら内心浮かれていた。

(いよいよ、ルウェルン国ね~)

 適当な返事を送っちゃったけどあれから、特に連絡ないし~
 国一番の魔術師とか言ってるけど、案外チョロいのかも~

(楽しみ~)

 あれ?  でも、そういえば私、ルウェルン語、話せないけど……
 クリフォード殿下もそのことは何も言っていなかったわね?
 サヴァナは今になってようやくそのことに気付く。

「……」

 ま、大丈夫よね!
 通訳がいるか、向こうが私に合わせてくれるでしょ!
 いざとなればこの人たちがいるもん。
 そう思ったサヴァナは同行の三人をチラッと見る。

 いつもと変わらない様子のクリフォード殿下。

(頭を抑えているから頭痛はしてるのかも)

 顔色が悪く、どこか挙動不審な様子の王宮筆頭魔術師。

(すごいギュッと力を込めて荷物を抱きしめてるけど……何あれ)

 疲れ切った様子のお父様。

(……未だに犯人が見つからないからお母様とも喧嘩三昧だものねぇ……)

 何だか辛気臭い空気だわ、とサヴァナは思った。
 空気を入れ換えたかったけど外……は、相変わらずの雨。
 サヴァナはそっと窓の外を見上げる。
 短期間とはいえ、私が留守にすることで、嵐になるとかもっと酷い天候になっちゃったりして……

(ん~、でも我慢してもらうしかないわよね!)

 そうなったらなったで私の有難みがよーーく分かるってことだし~


 それぞれの思いを抱えながら、馬車はルウェルン国へと向かった。


 そして、サヴァナたちを乗せた馬車が無事に国境を越えてルウェルン国に入国し、少し経った頃……
 クロムウェル王国の天候にが起きた。


 ───そのことは、サヴァナはもちろん、クリフォードも魔術師も伯爵も……まだ、知らない。



❋❋❋



 ───そして、いよいよクロムウェル王国ご一行様がやって来る日。


「えいっ───……と、こんな感じで大丈夫かしら」

 着替えた私は自分の身体に術をかけた。
 流した魔力が私の全身に流れていく感じがする。

(……上手く出来ているといいのだけど)

 そう思って鏡を見ようとしたその時、部屋の扉がノックされた。

「マルヴィナ、準備は出来た?」
「マルヴィナさん、どんな感じになりました?」
「はい、ちょうど今、自分に術をかけ終えたところです───」

 二人の声に私は振り向きながらそう伝える。

「……どうでしょうか。ちゃんと別人になれていますか?」

 私はドキドキしながら二人に声をかけた。
 トラヴィス様とリリーベル様が顔を見合せながら頷き合う。

「面影がさっばり…………完璧な変身魔法だ」
「ええ、お兄様。さすが、マルヴィナさんですわ……普通はどことなく“本来の姿”が残るものと聞いていますのに……」
「?」

 二人が顔を見合せながら何かをブツブツと呟いているけれど、この様子なら私の変身には特に問題はなさそうなのでホッとした。

「……」

 クロムウェル王国ご一行様の所に同席したいと申し出た私。
 だけど、そのまま“マルヴィナ”としていきなり姿を見せるのは、さすがの私も抵抗がある。
 だから考えた。
 幻影魔法の応用として自身を変身させることは出来ないかしらって。

(幻影魔法って言ったらトラヴィス様、すごく驚いていたけれど……)

「……これなら(阿呆そうな)彼らはマルヴィナだとは全く気付かないだろうな」
「そうですか!?」
「ええ……間違いありませんわ(絶対阿呆ですもの)」
「良かったです!」

 二人にそう言われて私は安心して微笑んだ。


 こうして、私はいよいよ因縁のある“あの人”たちと、久しぶりの対面を果たすことになった──
しおりを挟む
感想 417

あなたにおすすめの小説

妹は謝らない

青葉めいこ
恋愛
物心つく頃から、わたくし、ウィスタリア・アーテル公爵令嬢の物を奪ってきた双子の妹エレクトラは、当然のように、わたくしの婚約者である第二王子さえも奪い取った。 手に入れた途端、興味を失くして放り出すのはいつもの事だが、妹の態度に怒った第二王子は口論の末、妹の首を絞めた。 気絶し、目覚めた妹は、今までの妹とは真逆な人間になっていた。 「彼女」曰く、自分は妹の前世の人格だというのだ。 わたくしが恋する義兄シオンにも前世の記憶があり、「彼女」とシオンは前世で因縁があるようで――。 「彼女」と会った時、シオンは、どうなるのだろう? 小説家になろうにも投稿しています。

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。 ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。 不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。 ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。 伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。 偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。 そんな彼女の元に、実家から申し出があった。 事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。 しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。 アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。 ※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。 ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。 しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。 もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが… そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。 “側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ” 死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。 向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。 深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは… ※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。 他サイトでも同時投稿しています。 どうぞよろしくお願いしますm(__)m

両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。 一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。 更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。

婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです

柚木ゆず
恋愛
 コストール子爵令嬢マドゥレーヌ。彼女はある日、実父、継母、腹違いの妹、そして婚約者に裏切られ、コストール家を追放されることとなってしまいました。  ですがその際にマドゥレーヌが咄嗟に口にした『ある言葉』によって、マドゥレーヌが去ったあとのコストール家では大変なことが起きるのでした――。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

婚約破棄は別にいいですけど、優秀な姉と無能な妹なんて噂、本気で信じてるんですか?

リオール
恋愛
侯爵家の執務を汗水流してこなしていた私──バルバラ。 だがある日突然、婚約者に婚約破棄を告げられ、父に次期当主は姉だと宣言され。出て行けと言われるのだった。 世間では姉が優秀、妹は駄目だと思われてるようですが、だから何? せいぜい束の間の贅沢を楽しめばいいです。 貴方達が遊んでる間に、私は──侯爵家、乗っ取らせていただきます! ===== いつもの勢いで書いた小説です。 前作とは逆に妹が主人公。優秀では無いけど努力する人。 妹、頑張ります! ※全41話完結。短編としておきながら読みの甘さが露呈…

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。 昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。 入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。 その甲斐あってか学年首位となったある日。 「君のことが好きだから」…まさかの告白!

処理中です...