【完結】可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~

Rohdea

文字の大きさ
42 / 66

42. 特殊な力だった

しおりを挟む


「だっしゅ……ダッシュ……奪取……?」

 サヴァナがまだ首を傾げている。
 そんなサヴァナにリリーベル様が呆れた声で言った。

「……人から力を……主に魔力を強引に奪い取る力でしてよ」
「え?  奪う!?」

 ようやくサヴァナの中で“奪取”が結びついたらしい。
 これにはさすがに驚きが隠せない様子。

「だ、奪取の力……じゃと?」
「サ、サヴァナに奪取の力……が?  あの……問題と言われているやつ……か?」

(問題の?)

 筆頭魔術師とローウェル伯爵もサヴァナの力に対して驚きの声をあげる。
 特に伯爵の様子が少し変だった。
 もしかしたら、歴代のローウェル伯爵家の長子の中でその力を授かった人がいるのかもしれない。
 そして、能力の内容的に問題視された、とかかしら?
 充分、有り得る話だと思う。

(それも気になるけれど……)

 やっぱり、サヴァナの力は魔力を奪い取る内容の力だった。
 既にトラヴィス様から聞かされていたし、予想出来ていたことだから、そのこと自体に驚きはあまりない。けれど───

「……リリー、最後に言った“他者とは違う性質を持っている”とはどういう意味だ」

 私も感じていたその疑問はトラヴィス様が訊ねてくれた。

「ええ、ですから、それが私がお兄様に彼女の魔力封じをお願いした理由ですわ」
「どういうことだ?」
「……」

 リリーベル様は一旦、瞳を閉じてから目を開ける。
 その瞳はもはや何度目になるのか……再び金色になっていた。

(リリーベル様、すごい力を酷使している気がする……大丈夫かしら?)

 そんな心配が私の中に浮かぶけれど、リリーベル様は続けた。

「───その方の奪取の力には、他には無いかなり面倒な性質がありますのよ」
「他には無い?  それは何だ」
「……奪取の力というと先程も言ったように普通は“魔力”を奪う力なのですが、それだけではありませんの」
「は?」
「彼女の“奪取の力”が奪えるものは魔力だけではないのです」

(───なっ!?)

「魔力以外の物も奪えてしまうんですのよ。そう、例えば───人の気持ち……心、とか。本当に言葉通りの奪取の力ですわ」

 リリーベル様の説明にこの場の誰もが言葉を失った。
 人の心まで奪う?  
 なんて力なの……それは、リリーベル様が魔力封じをお願いするのも当然だった。

「そして、厄介なのはその力を授かったのは儀式を行った時ではありません。潜在的なものなのです」
「え?  サヴァナが潜在的……に持っていた力?」

 私が聞き返すとリリーベル様は頷いた。
  
「そうです。つまり、そこのサヴァナさんはこの力を昔から使えていた、ということになります」
「昔、から使えていた?」
「まぁ、誰からも力のことを教わることも調べられることも無かったでしょうから全て無意識に、なのでしょうけれど」
「……」

 私は言葉が見つからなかった。
 トラヴィス様としていた仮定の話では、水晶を触った時にサヴァナも力が覚醒したのだと思っていたけれど、本当はそうではなかった……?

 《ト、トラヴィス様……》

 困った私がトラヴィス様を見上げると、トラヴィス様は私の目を見て頷き返してくれた。
 リリーベル様の語ったこの話はトラヴィス様にとっても意外だったようで、かなり驚いているのが伝わって来る。

 《ああ、どうやら考えていたのと少し違っていたようだ。むしろ思っていたよりも厄介だった》
 《……そうですね》

 私が顔を伏せるとトラヴィス様が優しく声をかけてくれる。

 《マルヴイナ……大丈夫だ》
 《トラヴィス様……》

 そう口にしたトラヴィス様が私の肩に腕を回してそっと抱き寄せてくれる。
 明らかになった事実に動揺はしたけれど、トラヴィス様の温もりで心が落ち着いていくのが分かった。

 そんな中、リリーベル様の説明は続く。

「───ですから。どうやら、サヴァナさんはこれまで“欲しい”と思ったら無意識に力が発動しては自分の思い通りにして来たということになります」

 リリーベル様のその言葉に、それまではどこかぼんやりした様子だったサヴァナがハッとして噛み付いた。

「ひ、酷いわ!  私を盗っ人呼ばわりするつもりですか?  か、勝手なことを!  私は何も……何も奪ってなんかいないわ!」

 サヴァナの抗議にリリーベル様は首を横に振る。

「いいえ───先に述べたように、あなたは昔から自分だけが可愛い。自分だけがチヤホヤされたい。そんな願望が強かった。なのでまずは、見下しながらも両親の愛を全て自分に向くことを願った」
「……え?」
「次は言わなくても分かりますわね、そこの王子様。マルヴィナさんから奪ってやりたい。奪った後のお姉さん──マルヴィナさんの絶望した顔が見たい……そんな気持ちが芽生えた」
「は?  ちょっと……」
「そして、極めつけが十八歳の誕生日ですわ。あなたはマルヴィナさんの持つもの“全て”を欲しいと思った。そう、“力”も。水晶に触れた瞬間に強くそう願ったでしょう?」
「なっ……!」
「───その時、あなたはマルヴィナさんから魔力も奪ったのですわ!」

 リリーベル様のその言葉は室内にとてもよく響いた。

「ま、魔力って……!  お、お姉様……の?」
「あなた、伯爵家の長子が継ぐ力を欲しいと思ったでしょう?」
「……っ」

 サヴァナが悔しそうにギリッと唇を噛む。
 そして、すぐに叫んだ。

「待ってください!  ……それなら、どうして?  どうして守護の力は私のものになっていないの!?」
「あなたがマルヴィナさんから奪えたのは、マルヴィナさんの持っていた魔力半分のみだったからですわ」
「は……んぶん?  ど、して?  これまでは上手くいっていたんでしょう?  何でダメだったの!?」

 サヴァナが苦しそうに頭を抱えて一際大きな声で叫んだ。

「……何で、私の一番欲しいものが奪えていないの!?」
「───弱いからだろう?」

 喚き散らすサヴァナに対して横から口を挟んだのはトラヴィス様だった。

「リリーのような瞳がなくても、もう俺にも分かるよ」
「よ、弱い?  私が……?」
「マルヴィナに比べて圧倒的に力が弱かったからだ。その程度の力では、マルヴィナから魔力を半分奪うのが精一杯だった。とてもじゃないが国の守護なんて無理……ということだな」
「そ、の程度……お姉様……より……私が劣、るの?」

 トラヴィス様は、サヴァナに向かって冷たい目を向けると更に念を押した。

「そうだ……ああ、お前のよく使う言い方で言わせてもらえば───“守護の力を持つのにサヴァナ・ローウェル伯爵令嬢は相応しくなかった”……それだけだ」

しおりを挟む
感想 417

あなたにおすすめの小説

妹は謝らない

青葉めいこ
恋愛
物心つく頃から、わたくし、ウィスタリア・アーテル公爵令嬢の物を奪ってきた双子の妹エレクトラは、当然のように、わたくしの婚約者である第二王子さえも奪い取った。 手に入れた途端、興味を失くして放り出すのはいつもの事だが、妹の態度に怒った第二王子は口論の末、妹の首を絞めた。 気絶し、目覚めた妹は、今までの妹とは真逆な人間になっていた。 「彼女」曰く、自分は妹の前世の人格だというのだ。 わたくしが恋する義兄シオンにも前世の記憶があり、「彼女」とシオンは前世で因縁があるようで――。 「彼女」と会った時、シオンは、どうなるのだろう? 小説家になろうにも投稿しています。

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。 ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。 不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。 ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。 伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。 偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。 そんな彼女の元に、実家から申し出があった。 事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。 しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。 アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。 ※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。 ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。 しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。 もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが… そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。 “側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ” 死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。 向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。 深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは… ※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。 他サイトでも同時投稿しています。 どうぞよろしくお願いしますm(__)m

両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。 一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。 更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。

婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです

柚木ゆず
恋愛
 コストール子爵令嬢マドゥレーヌ。彼女はある日、実父、継母、腹違いの妹、そして婚約者に裏切られ、コストール家を追放されることとなってしまいました。  ですがその際にマドゥレーヌが咄嗟に口にした『ある言葉』によって、マドゥレーヌが去ったあとのコストール家では大変なことが起きるのでした――。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

婚約破棄は別にいいですけど、優秀な姉と無能な妹なんて噂、本気で信じてるんですか?

リオール
恋愛
侯爵家の執務を汗水流してこなしていた私──バルバラ。 だがある日突然、婚約者に婚約破棄を告げられ、父に次期当主は姉だと宣言され。出て行けと言われるのだった。 世間では姉が優秀、妹は駄目だと思われてるようですが、だから何? せいぜい束の間の贅沢を楽しめばいいです。 貴方達が遊んでる間に、私は──侯爵家、乗っ取らせていただきます! ===== いつもの勢いで書いた小説です。 前作とは逆に妹が主人公。優秀では無いけど努力する人。 妹、頑張ります! ※全41話完結。短編としておきながら読みの甘さが露呈…

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。 昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。 入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。 その甲斐あってか学年首位となったある日。 「君のことが好きだから」…まさかの告白!

処理中です...