60 / 62
第3章 アルストロメリア王国の日常
第59話 アリスとアルの気持ち
しおりを挟む
気が付いたらアリスは手で刃を掴んでいた。
手からは血が流れ剣を濡らしていく。
「アリス、何をしているんだ!」
「あなたがバカなことをしたから止めたんじゃないですか!」
「だからって、お前が傷つくことはないだろう!」
アルは剣から手を離し、アリスは剣を投げ捨てる。
アリスの手の平は一筋の切り裂かれた傷から止めどなく血が溢れていく。
「アリス……やっぱり俺はお前にはふさわしくない。だから別れよう」
アルは涙を流しながら自らの服を破り、アリスの手の傷を止血する。
彼は罪悪感と後悔に押しつぶされそうになる。
そんな、アルの胸にアリスは抱き着く。
「アル、私は他の男も愛してしまうダメな女ですが、あなたにはふさわしくありませんか」
アリスは両手でアルの頬に手を当てる。
アルの頬が血で濡れるがアリスは気にせずにさらに言葉を紡ぐ。
「あなたは、私にとって大切な人です。私はあなたがいなければ生きてはいけません。それほどに愛しているのに、アルは私を拒絶するのですか。やはり私はアルには不相応な女でしょうか!」
アリスはアルの瞳を見つめながら心の底からの思いを伝える。
アルもこの言葉に返すようにアリスの瞳を見つめる。
「不相応なものか。アリスがいなければ俺の生きる意味はない。だから、もう俺の前で傷つかないでくれ。アリスが痛みに顔を歪めるのは見ていて苦しい。こんな思いをするのは嫌なんだ」
「なら、あなたもバカな真似はもうしないでください。私はあなたが寿命以外で死ぬのは見たくありません。約束ですよ。私も自分を大切にしますので、アルも自分を大切にしてください」
「あぁ、わかった。約束だ」
アルはアリスを優しく抱きしめ、久方ぶりのアリスの温もりを噛みしめるのだった。
「うぅ、落ち着いたらすごく手が痛いです」
「当たり前だろ。こんな大怪我をしておいて我慢しているほうがおかしいんだ」
アルとアリスとウィルは王城内の医務室で現在治療中である。
「アリス様、動かないでくださいね。傷の深さから骨にまで達していますからね」
彼女の名はアレイア・ミラース。
この王城専属の回復魔法師長兼医師長である。
彼女はアリスの手を魔法役で洗浄すると回復魔法をかける
。
「いっ……痛いぃいいいい!!!」
アリスは回復魔法の痛みに悶絶するがアレイアは問答無用で魔法をかけ続ける。
アルはアリスを羽交い絞めにし、ウィルは治療中のアリスの手を固定する。
「アリス、暴れるな!」
「アル様、回復魔法は激痛が伴うものですのでアリスには刺激が強すぎたのかと」
アルは叫びながらアリスを羽交い絞めにしているが、ウィルのほうはアリスのことを気遣いながら腕を固定する。
回復魔法により徐々に傷口同士がくっついていくが、その過程で強い痛みが発生し、アリスの額には玉のような汗がにじむ。
ほんの1分のできごとのようであったが、アリスにはそれは長く感じられた。
傷口が完全に塞がったころ、アレイアは回復魔法を解いてから、アリスの手を触診する。
「ふぅ、アリス様。よくがんばられましたね。無事に傷跡もなく完治しました」
アリスは手のひらを見ると、そこには傷の一つもなかった。
これには彼女も安心から脱力するのだった。
「おっと大丈夫ですか?」
ウィルがすかさずアリスを受け止めようとするが、アルが身体を差し込み、アリスを受け止める。
「アリス、大丈夫か。長旅と治療でつかれたんだろう。俺が部屋まで連れて行ってやる」
ウィルはアルの気持ちを察して先に医務室から出ていってしまう。
彼も、アルがアリスのいない間、苦しんでいたことを察したのである。
アリスはベッドでアルに抱きしめられながらため息をつく。
「アリス、なぜリーベルトを連れてこなかったんだ。婚約をするにもアルストロメリア王国に婚約者を連れてくればいいんじゃないのか?」
アリスはこの話が面倒くさかったのである。
責任問題などにされたら面倒なのだ。
「リーベルトは私とエリシアとの子がハルシュライン王国に取られないため婿になると言って、ハルシュライン王国に残りました」
「それで、本当の思惑はなんだ」
「バレましたか。彼はエレオノーラさんのことが一番と言って、彼女のためにハルシュライン王国に残りました。結婚式は当分後にはなると思いますが、今頃はハルシュライン王国で幸せにやっていますよ」
「あいつは自由すぎて何をするか分からないと思っていたが結婚まで好き勝手とはな」
「まぁ、愛し合うもの同士が結ばれるのが一番ですよ」
「あぁ、アリス。俺もお前と婚約出来て嬉しい。これからも愛を育んでいこう」
「えぇ、いつかは結婚しましょうね」
「当たり前だ、必ず結婚するに決まっている。愛しているアリス」
その言葉を聞き安心したアリスはアルに抱きしめられながら寝息をたてるのだった。
手からは血が流れ剣を濡らしていく。
「アリス、何をしているんだ!」
「あなたがバカなことをしたから止めたんじゃないですか!」
「だからって、お前が傷つくことはないだろう!」
アルは剣から手を離し、アリスは剣を投げ捨てる。
アリスの手の平は一筋の切り裂かれた傷から止めどなく血が溢れていく。
「アリス……やっぱり俺はお前にはふさわしくない。だから別れよう」
アルは涙を流しながら自らの服を破り、アリスの手の傷を止血する。
彼は罪悪感と後悔に押しつぶされそうになる。
そんな、アルの胸にアリスは抱き着く。
「アル、私は他の男も愛してしまうダメな女ですが、あなたにはふさわしくありませんか」
アリスは両手でアルの頬に手を当てる。
アルの頬が血で濡れるがアリスは気にせずにさらに言葉を紡ぐ。
「あなたは、私にとって大切な人です。私はあなたがいなければ生きてはいけません。それほどに愛しているのに、アルは私を拒絶するのですか。やはり私はアルには不相応な女でしょうか!」
アリスはアルの瞳を見つめながら心の底からの思いを伝える。
アルもこの言葉に返すようにアリスの瞳を見つめる。
「不相応なものか。アリスがいなければ俺の生きる意味はない。だから、もう俺の前で傷つかないでくれ。アリスが痛みに顔を歪めるのは見ていて苦しい。こんな思いをするのは嫌なんだ」
「なら、あなたもバカな真似はもうしないでください。私はあなたが寿命以外で死ぬのは見たくありません。約束ですよ。私も自分を大切にしますので、アルも自分を大切にしてください」
「あぁ、わかった。約束だ」
アルはアリスを優しく抱きしめ、久方ぶりのアリスの温もりを噛みしめるのだった。
「うぅ、落ち着いたらすごく手が痛いです」
「当たり前だろ。こんな大怪我をしておいて我慢しているほうがおかしいんだ」
アルとアリスとウィルは王城内の医務室で現在治療中である。
「アリス様、動かないでくださいね。傷の深さから骨にまで達していますからね」
彼女の名はアレイア・ミラース。
この王城専属の回復魔法師長兼医師長である。
彼女はアリスの手を魔法役で洗浄すると回復魔法をかける
。
「いっ……痛いぃいいいい!!!」
アリスは回復魔法の痛みに悶絶するがアレイアは問答無用で魔法をかけ続ける。
アルはアリスを羽交い絞めにし、ウィルは治療中のアリスの手を固定する。
「アリス、暴れるな!」
「アル様、回復魔法は激痛が伴うものですのでアリスには刺激が強すぎたのかと」
アルは叫びながらアリスを羽交い絞めにしているが、ウィルのほうはアリスのことを気遣いながら腕を固定する。
回復魔法により徐々に傷口同士がくっついていくが、その過程で強い痛みが発生し、アリスの額には玉のような汗がにじむ。
ほんの1分のできごとのようであったが、アリスにはそれは長く感じられた。
傷口が完全に塞がったころ、アレイアは回復魔法を解いてから、アリスの手を触診する。
「ふぅ、アリス様。よくがんばられましたね。無事に傷跡もなく完治しました」
アリスは手のひらを見ると、そこには傷の一つもなかった。
これには彼女も安心から脱力するのだった。
「おっと大丈夫ですか?」
ウィルがすかさずアリスを受け止めようとするが、アルが身体を差し込み、アリスを受け止める。
「アリス、大丈夫か。長旅と治療でつかれたんだろう。俺が部屋まで連れて行ってやる」
ウィルはアルの気持ちを察して先に医務室から出ていってしまう。
彼も、アルがアリスのいない間、苦しんでいたことを察したのである。
アリスはベッドでアルに抱きしめられながらため息をつく。
「アリス、なぜリーベルトを連れてこなかったんだ。婚約をするにもアルストロメリア王国に婚約者を連れてくればいいんじゃないのか?」
アリスはこの話が面倒くさかったのである。
責任問題などにされたら面倒なのだ。
「リーベルトは私とエリシアとの子がハルシュライン王国に取られないため婿になると言って、ハルシュライン王国に残りました」
「それで、本当の思惑はなんだ」
「バレましたか。彼はエレオノーラさんのことが一番と言って、彼女のためにハルシュライン王国に残りました。結婚式は当分後にはなると思いますが、今頃はハルシュライン王国で幸せにやっていますよ」
「あいつは自由すぎて何をするか分からないと思っていたが結婚まで好き勝手とはな」
「まぁ、愛し合うもの同士が結ばれるのが一番ですよ」
「あぁ、アリス。俺もお前と婚約出来て嬉しい。これからも愛を育んでいこう」
「えぇ、いつかは結婚しましょうね」
「当たり前だ、必ず結婚するに決まっている。愛しているアリス」
その言葉を聞き安心したアリスはアルに抱きしめられながら寝息をたてるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
王宮メイドは今日も夫を「観察」する
kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」
王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。
ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。
だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……?
※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる