聖と魔の名を持つ者 ~その娘、聖女か魔女か。剣を手にした令嬢は、やがて国家最強の守護者となる~

草沢一臨

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第一部:第二章 希望を胸に

(二)入寮②

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 翌朝、眠い目をこすりながら朝食を摂ると、急いで身支度を整えた。
「すごい荷物だな。寮まで遠いんだし、大丈夫か」
 心配というより呆れた様子で、父はラーソルバールを見つめる。
「ガイザの家の馬車に乗せてもらうから。お出迎えで馬車なんて、お姫様みたいでしょ」
 無邪気に笑う娘に、父はため息をついた。
「何処にそんな大荷物を担いだお姫様が居るんだ?」
「ひひっ」
 父の言葉にも笑顔を崩さず、ラーソルバールは自らを指差した。
「はいはい、可愛い娘はお姫様ですよ」
「お姫様の父親は王様だね。では、行ってまいります陛下。休暇は三十日後にございます」
 優雅にお辞儀をしようとしたのだが、荷物が邪魔で失敗し、父の失笑を買った。
「行っておいで」
 七年前に母を病気で亡くしてから、父と娘の二人暮らし。僅かな領地は有るものの、貴族とは名ばかりの生活で、執事なども居ない。
 一応、生活には困らない程度の収入はある。家事などは、手伝いに来てくれるマーサという女性がやってくれているので、二人は何とかなっている。

 外に出ると間もなく馬車がやって来た。
「ラーソルバールお嬢様、おはようございます」
 白髪の紳士が馬車から降りると、頭を下げた。
「おはようございます、エフォートさん。私はドーンウィル家の人じゃないから、お嬢様は止めてくださいね」
 申し出を無言の笑顔で拒絶しながら、老紳士は馬車の扉を開ける。中にはまだ眠そうなガイザが居り、やはりかなり量の荷物がその傍らにあった。
 あれは自分よりは多いな、ラーソルバールは笑った。
 整理整頓が苦手なのを差し引いても、生活拠点を移すのだから、荷物が多いのは当然だろうとは思う。
「エフォートさん、今日はわざわざありがとうございます」
 頭を下げると、荷物を押し込んでから馬車に乗り込んだ。
「いえいえ、当然の事でございます。旦那様からも仰せつかっておりますので」
 一礼すると老紳士は扉を閉めた。

 馬車に揺られてしばらくすると、王宮の正門が見えてくる。 角を曲がってしばらく走り、騎士学校の横を抜け、裏手にある学生寮に到着した。
 既に同じように入寮のための馬車が幾つか停まっている。
 書類には「過度な持ち込みは禁止」とあったと記憶している。注意書きがある以上、そういう例があるのだろうと思っていたのだが、実際に明らかに大きすぎる荷物を搬入しようとして、門で職員と揉めている者も居た。どこまでが過度か、個人によって見解が違うのか、それとも貴族の感覚がおかしいのだろうかと苦笑する。
 ラーソルバールとガイザは、ここまで送ってきてくれた執事のエフォートに礼を述べ、馬車を降りた。門で起きている言い争いは続いており、それをを横目に、二人は寮の門を抜ける。
 男子寮と女子寮で別れているため、二人は別れて案内に従って移動することになった。
 ガイザと別れ、女子寮へとやって来たラーソルバールは、部屋番号が記載された通知を荷物から取り出し、案内人に提示した。
 一号棟一階一号室。通知を受け取った時は、余りにも思いきりの良い番号で笑ってしまった。
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