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第一部:第四章 ラーソルバールの休暇(前編)
(二)カンフォール村②
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空が赤く染まり始めた頃、馬車はカンフォール村に着いた。
「宿は『森の隠れ家』という名前で、この道を少し行った左手にあります。ラーソルバールに聞いて来たと言って頂ければ、ちょっとだけ良くしてくれる……かな? あと、食事に関しては、女将さんに聞いてください。すみませんが、私は村長の家に用事が有りますので、ここで失礼します」
そう言って、ラーソルバールは馬車を停めてもらい、御者に代金の入った小袋を手渡すと、手持ちの荷物を確認してから馬車を降りた。
「明日の朝、宿に伺って村の特産品などをご案内しますね」
「よろしくね」
手を振り、離れていく馬車を見送ると、少し寂しくなったような気がした。初対面でありながら、商人達が優しく接してくれたからこそなのだろう。
「お嬢様!」
立っていたラーソルバールに気付いたように老婆が寄ってくる。
「え、お嬢様が居られるのか?」
「わー、ラーソルお姉ちゃんだ!」
老婆の声を聞いたのか、次々と人が寄ってくる。
「お嬢様はしばらくご滞在ですか?」
「ミニットさん、恥ずかしいからお嬢様は止めて下さい」
老婆と話しているうちに、村人に取り囲まれたラーソルバール。更にその様子を見た人々も集まってくる。
「滞在は……今日を入れて三泊……で……帰る予定です」
この状況をどうしたものか。身動きが取れないので、逃げ出すことも出来ない。
「こら! お嬢様が困っておいでだ。皆、離れなさい」
男の声がすると、皆が残念そうに距離をとる。子供二人だけが、服の裾を掴んで離れようとしない。
「何の騒ぎかと思って出て来てみれば、村の者達が、お嬢様にご迷惑をお掛けしていたようで、誠に申し訳ありません」
出てきたのは村長だった。ラーソルバールは村長に会釈すると、子供達の頭を撫でた。
「皆さん、申し訳ありません。村長さんにお話が有りますので、また後程」
頭を下げると、皆が残念そうに、村長宅に消える姿を見送った。
ラーソルバールが村人に囲まれている頃、メルーナ達の馬車は宿『森の隠れ家』に到着していた。
「いらっしゃい」
宿の女将が愛想良く出迎えた。見た目は悪くなく、年齢は三十を越えた辺りだろうか。
「乗り合いで一緒だった娘さんの紹介で来たんだけど、一晩泊めてくれないかい?」
「娘さん?」
メルーナの言葉に女将が首を傾げる。
「ラーソルバールって娘だよ」
「何だって!」
女将の顔つきが変わった。今にも飛び付いて来そうな勢いだった。
「お嬢様がいらっしゃったのかい! 今、どこに?」
「……あ、……村長のとこ行くって言ってたよ……?」
女将に気圧されて、メルーナは詰まり気味に答えた。
先程までと、明らかに様子が違う。ラーソルバールを「お嬢様」と呼び、動向を気にしている。
何なのだろうか、メルーナが訝しげに見ていると、女将は腰をくねらせた。
「早くお会いしたいねえ……って、お客様が大事だ。我を忘れて申し訳ない。お嬢様の紹介なら良い部屋にしとくよ」
「よろしく頼むよ。夕食は女将に聞いてくれって言われたんだが」
落ち着いた女将を見て、メルーナはほっとしたように、大きく息を吐いた。
「宿は『森の隠れ家』という名前で、この道を少し行った左手にあります。ラーソルバールに聞いて来たと言って頂ければ、ちょっとだけ良くしてくれる……かな? あと、食事に関しては、女将さんに聞いてください。すみませんが、私は村長の家に用事が有りますので、ここで失礼します」
そう言って、ラーソルバールは馬車を停めてもらい、御者に代金の入った小袋を手渡すと、手持ちの荷物を確認してから馬車を降りた。
「明日の朝、宿に伺って村の特産品などをご案内しますね」
「よろしくね」
手を振り、離れていく馬車を見送ると、少し寂しくなったような気がした。初対面でありながら、商人達が優しく接してくれたからこそなのだろう。
「お嬢様!」
立っていたラーソルバールに気付いたように老婆が寄ってくる。
「え、お嬢様が居られるのか?」
「わー、ラーソルお姉ちゃんだ!」
老婆の声を聞いたのか、次々と人が寄ってくる。
「お嬢様はしばらくご滞在ですか?」
「ミニットさん、恥ずかしいからお嬢様は止めて下さい」
老婆と話しているうちに、村人に取り囲まれたラーソルバール。更にその様子を見た人々も集まってくる。
「滞在は……今日を入れて三泊……で……帰る予定です」
この状況をどうしたものか。身動きが取れないので、逃げ出すことも出来ない。
「こら! お嬢様が困っておいでだ。皆、離れなさい」
男の声がすると、皆が残念そうに距離をとる。子供二人だけが、服の裾を掴んで離れようとしない。
「何の騒ぎかと思って出て来てみれば、村の者達が、お嬢様にご迷惑をお掛けしていたようで、誠に申し訳ありません」
出てきたのは村長だった。ラーソルバールは村長に会釈すると、子供達の頭を撫でた。
「皆さん、申し訳ありません。村長さんにお話が有りますので、また後程」
頭を下げると、皆が残念そうに、村長宅に消える姿を見送った。
ラーソルバールが村人に囲まれている頃、メルーナ達の馬車は宿『森の隠れ家』に到着していた。
「いらっしゃい」
宿の女将が愛想良く出迎えた。見た目は悪くなく、年齢は三十を越えた辺りだろうか。
「乗り合いで一緒だった娘さんの紹介で来たんだけど、一晩泊めてくれないかい?」
「娘さん?」
メルーナの言葉に女将が首を傾げる。
「ラーソルバールって娘だよ」
「何だって!」
女将の顔つきが変わった。今にも飛び付いて来そうな勢いだった。
「お嬢様がいらっしゃったのかい! 今、どこに?」
「……あ、……村長のとこ行くって言ってたよ……?」
女将に気圧されて、メルーナは詰まり気味に答えた。
先程までと、明らかに様子が違う。ラーソルバールを「お嬢様」と呼び、動向を気にしている。
何なのだろうか、メルーナが訝しげに見ていると、女将は腰をくねらせた。
「早くお会いしたいねえ……って、お客様が大事だ。我を忘れて申し訳ない。お嬢様の紹介なら良い部屋にしとくよ」
「よろしく頼むよ。夕食は女将に聞いてくれって言われたんだが」
落ち着いた女将を見て、メルーナはほっとしたように、大きく息を吐いた。
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