聖と魔の名を持つ者 ~その娘、聖女か魔女か。剣を手にした令嬢は、やがて国家最強の守護者となる~

草沢一臨

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第一部:第五章 ラーソルバールの休暇(後編)

(三)帰宅③

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 馬車は夕日が沈む前には、無事に王都が見えてきた。
 ラーソルバールは王都に到着する前に目が覚め、恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら、伯爵らに頭を下げた。皆、笑って気にする様子も無く、メイドには可愛いと言われて抱きつかれてしまった。伯爵はそれを見ても止める様子も無く、愉快そうに大きな声で笑っていた。

 王都に到着したことで、休暇という名のラーソルバールの小さな冒険は終わりを告げる。
 預けていた剣を受け取り、ラーソルバールは父に報告するため、自宅の前で馬車を降りた。
 家の前に停車した馬車に気付いた父は、慌てて表に出て来た。良く分からぬまま娘を迎えたが、馬車から降りてきた人影に父は慌てた。
「お久しぶりです、フェスバルハ伯爵」
「また貴殿に会えて嬉しいよ、ミルエルシ男爵。良い娘を持ったな」
「状況が全く理解出来ないのですが、不出来なお転婆娘が、何かご迷惑をお掛けしたのでしょうか?」
 娘の頭を軽く小突きながら、伯爵の顔を見る。
「王都に来たついでに娘さんを送りに……時間があまり無いのでここで手短に話そう」
 馬車の前に立ったまま、伯爵は王都にやって来た経緯とその理由を簡潔に伝えた。
「そういう事ですか。色々と有り難う御座いました。奏上の件、申し訳ありませんが、よろしくお願いします」
 父は深々と頭を下げた。
「うむ、では陛下をお待たせする訳にもいかんので、失礼する」
 そう言うと、慌ただしく伯爵は馬車に乗り込み、出発させた。
 メイドが馬車から顔を出して、名残惜しそうに、見えなくなるまで手を振り続けていた。
「面倒事を伯爵に押し付けおって、……まあ、良い判断だった」
 父は娘の髪がくしゃくしゃになる程、頭を強くなで回した。
「せっかくエレノールさんに綺麗にしてもらったのに…」
 ラーソルバールは頬を膨らませ、抗議したが、父は全く意に介さなかった。
 その後、父に土産を渡し、四日間の出来事を話すと、寮へ戻るための支度をして家を出た。もちろん、賊退治の件は内緒にしたままで。

 ラーソルバールが家を出たのと同じ頃、伯爵は国王への謁見が行われていた。
「陛下、お時間を頂きまして誠に申し訳ありません」
「良い。ここにはワシと、宰相しか居らぬゆえ、気にせず用件を話すが良い」
 国王はゆったりとした口調で伯爵を迎えた。 フェスバルハ伯爵への信頼感もあるのだろう。
「実は……」
 この後すぐに国王から、国内全てに不審な流言や扇動に対する処置を厳格に行うよう、命が下された。
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