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第一部:第六章 後始末と始まり
(四)幼馴染①
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(四)
暴動から二十日程経過した。
この日、騎士学校では、二年生との合同訓練が行われる事になっていた。
一年生にとっては、初の実戦的な合同訓練であると同時に、二年生と接する最初の機会でもあった。
予定が発表されてから、一年生達は新しい内容で訓練が行われるこの日を、指折り数え待っていた。
だが、ラーソルバールには、もうひとつ別に楽しみにしている事が有った。
訓練が行われる演習場は、王都を出てすぐの所にあり、騎士団および騎士学校が所管する国有地となっている。
演習に巻き込まれる危険があるため、関係者以外の立ち入りは固く禁じられている。
演習時以外は人が寄り付かないため、盗賊団が住み着こうとした事が、以前に一度有ったが、騎士団にあっさりと捕縛された。
今では旅人が迷い込まないよう、柵や看板が立てられ、注意が促されている。
ラーソルバールらが演習場に到着すると、既に二年生数名が剣を手に鍛練を行っていた。
その中で、ラーソルバールは見知った顔を見つけた。
「アル兄、エフィ姉!」
叫ぶと同時に駆け出した。
二人は呼び掛けに気付くと、剣を止めた。
「よう、ラーソル。久しぶりだな」
「やっと二人に会えた!」
ラーソルバールは嬉しそうに微笑んだ。
楽しみだったのは、この二人に会えるという事だった。
「置いて行かないでよ」
後から、シェラとフォルテシアが追いかけてきた。
「基本的に、何も考えずに即動くような奴だからな」
男子生徒は笑った。風貌は少年と言うよりは、青年と言った方が良い。
黒に近い濃い茶色の髪と栗色の瞳。顔立ちのせいで細身かと思わせるが、しっかりと鍛えられた肉体を持っていた。
「紹介するね。こっちの悪そうな人がアルディス・フォンドラーク。で、こちらが彼女の…」
「違う違う。私はこの方の侍従。エフィアナ・ククラーラとです。よろしくね」
女子生徒は挨拶を終えると、ラーソルバールの頭を小突いた。
やや明るく赤みがかった茶色い短髪と、同じような色の瞳。少し彫りの深い顔立ちが印象的で、ミステリアスな雰囲気を備えている。
「こらエフィアナ、俺の『悪そうな』も否定しておけよ」
「で、そちらは?」
さらりと流して、シェラとフォルテシアに話を振った。
二人も自己紹介を終えると、今度はシェラが疑問を口にする。
「フォンドラーク家と言えば、良く大臣を輩出される名家ですよね」
「いつもながら、シェラはそいうの良く知ってるよね」
「歴史好きを公言してる人も、そういうの得意でしょ? あ、すみません、変な話しちゃって」
「ん、気にしなくていいよ。家名はそうだが、うちは末席の分家だからね。力も無いし本家には逆らえない。エフィナの一家は、こんな我が家に良く付いてきてくれてると感謝してるよ」
肩をすくめて自嘲気味に笑う。
聞いてはいけないことを聞いてしまった気がして、シェラは申し訳ない気持ちになった。
「失礼しました」
シェラは慌てて頭を下げた。
「あ、いやいや。隠すことではないし、むしろラーソルの友達なら、知っておいてくれた方が良い」
人当たりの柔らかさに、好青年といった感があり、意図せずシェラは頬を染めた。
様子を見ていたラーソルバールは、友の背中をつついた。
「シェラ、この人に惚れたらダメだよ。こわぁいお姉さんに睨まれちゃうからね」
エフィアナと名乗った娘は、茶化された仕返しに、ラーソルバールの頬をつねった。
「ほら、怖いでしょ」
頬を押さえてシェラに同意を求めた。
暴動から二十日程経過した。
この日、騎士学校では、二年生との合同訓練が行われる事になっていた。
一年生にとっては、初の実戦的な合同訓練であると同時に、二年生と接する最初の機会でもあった。
予定が発表されてから、一年生達は新しい内容で訓練が行われるこの日を、指折り数え待っていた。
だが、ラーソルバールには、もうひとつ別に楽しみにしている事が有った。
訓練が行われる演習場は、王都を出てすぐの所にあり、騎士団および騎士学校が所管する国有地となっている。
演習に巻き込まれる危険があるため、関係者以外の立ち入りは固く禁じられている。
演習時以外は人が寄り付かないため、盗賊団が住み着こうとした事が、以前に一度有ったが、騎士団にあっさりと捕縛された。
今では旅人が迷い込まないよう、柵や看板が立てられ、注意が促されている。
ラーソルバールらが演習場に到着すると、既に二年生数名が剣を手に鍛練を行っていた。
その中で、ラーソルバールは見知った顔を見つけた。
「アル兄、エフィ姉!」
叫ぶと同時に駆け出した。
二人は呼び掛けに気付くと、剣を止めた。
「よう、ラーソル。久しぶりだな」
「やっと二人に会えた!」
ラーソルバールは嬉しそうに微笑んだ。
楽しみだったのは、この二人に会えるという事だった。
「置いて行かないでよ」
後から、シェラとフォルテシアが追いかけてきた。
「基本的に、何も考えずに即動くような奴だからな」
男子生徒は笑った。風貌は少年と言うよりは、青年と言った方が良い。
黒に近い濃い茶色の髪と栗色の瞳。顔立ちのせいで細身かと思わせるが、しっかりと鍛えられた肉体を持っていた。
「紹介するね。こっちの悪そうな人がアルディス・フォンドラーク。で、こちらが彼女の…」
「違う違う。私はこの方の侍従。エフィアナ・ククラーラとです。よろしくね」
女子生徒は挨拶を終えると、ラーソルバールの頭を小突いた。
やや明るく赤みがかった茶色い短髪と、同じような色の瞳。少し彫りの深い顔立ちが印象的で、ミステリアスな雰囲気を備えている。
「こらエフィアナ、俺の『悪そうな』も否定しておけよ」
「で、そちらは?」
さらりと流して、シェラとフォルテシアに話を振った。
二人も自己紹介を終えると、今度はシェラが疑問を口にする。
「フォンドラーク家と言えば、良く大臣を輩出される名家ですよね」
「いつもながら、シェラはそいうの良く知ってるよね」
「歴史好きを公言してる人も、そういうの得意でしょ? あ、すみません、変な話しちゃって」
「ん、気にしなくていいよ。家名はそうだが、うちは末席の分家だからね。力も無いし本家には逆らえない。エフィナの一家は、こんな我が家に良く付いてきてくれてると感謝してるよ」
肩をすくめて自嘲気味に笑う。
聞いてはいけないことを聞いてしまった気がして、シェラは申し訳ない気持ちになった。
「失礼しました」
シェラは慌てて頭を下げた。
「あ、いやいや。隠すことではないし、むしろラーソルの友達なら、知っておいてくれた方が良い」
人当たりの柔らかさに、好青年といった感があり、意図せずシェラは頬を染めた。
様子を見ていたラーソルバールは、友の背中をつついた。
「シェラ、この人に惚れたらダメだよ。こわぁいお姉さんに睨まれちゃうからね」
エフィアナと名乗った娘は、茶化された仕返しに、ラーソルバールの頬をつねった。
「ほら、怖いでしょ」
頬を押さえてシェラに同意を求めた。
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