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第一部:第七章 部隊演習
(一)斥候②
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移動中、時折物音がしたが、全て獣で、二人は胸を撫で下ろした。まだ何処からも戦闘音や、合図は無い。このままでは陣を張る前に遭遇戦になる可能性もある。
「で、どうして私が?」
自分が連れ出された理由が良く分からない。慣れた二年生の方が良いのではないかと思えた。
「何だか嫌な予感がする。だけど、ラーソルと一緒なら大丈夫な気がした」
「なにそれ」
ラーソルバールは苦笑した。
あてにされているのか、気楽だからなのか。冗談混じりに言われた言葉だとしても、少し嬉しかった。
「ここを抜ければ、丘に上がるが…」
「人の気配がするね」
「四、五人か?」
小声で話す。
「ここに相手の斥候が居るとしたら、先行する三班とは、すれ違った可能性もある」
「森を抜けて本陣を急襲するって事?」
これ見よがしに平地を歩く敵とわざわざ戦う必要が無い。ただ、やり過ごす気が有るということは、本陣にも兵を残している可能性が高い。
(考えろ、考えろ!)
エフィアナに迷いが生じた。
「本陣に向かうのは二部隊」
隣でラーソルバールが呟いた。その声でエフィアナは我に返った。
「小さい一手だが、斥候を全員潰せば、一瞬でも敵方の足を止められるかもしれない」
横を見やると、ラーソルバールが頷いた。意図を理解したのだろう。
「数は向こうが多いかもしれないが、視認後に奇襲して一気に片付ける」
二人は相手方の斥候を追跡し、気付かれずにその姿を視界に捉えることができた。互いに目で合図を送ると、木陰から飛び出し急襲する。
相手は五人。
ラーソルバールら二人の急襲に気付いて、斥候兵が剣に手をかけた時には、既に二人が倒されていた。
「げ、エフィアナ!」
相手の正体に気付いて、声をあげた瞬間には塗料袋を破られていた。
「げ、って何よ」
エフィアナは剣に付いた塗料を振り払いながら、倒れた相手を見下ろして笑った。
「いや、だって……」
「だって何さ」
相手は自分の仲間が瞬時に全滅させられたのを見て、絶句した。
「お前、何人倒したんだ?」
「あん? 私が倒したのはあんたと、そこの一年坊主だよ。あとはあっち」
エフィアナの指差した先には、丘の上で踊る風に金髪を揺らす少女が居た。
「げ、ラーソルバール」
一年坊主が苦笑した。
「で、どうして私が?」
自分が連れ出された理由が良く分からない。慣れた二年生の方が良いのではないかと思えた。
「何だか嫌な予感がする。だけど、ラーソルと一緒なら大丈夫な気がした」
「なにそれ」
ラーソルバールは苦笑した。
あてにされているのか、気楽だからなのか。冗談混じりに言われた言葉だとしても、少し嬉しかった。
「ここを抜ければ、丘に上がるが…」
「人の気配がするね」
「四、五人か?」
小声で話す。
「ここに相手の斥候が居るとしたら、先行する三班とは、すれ違った可能性もある」
「森を抜けて本陣を急襲するって事?」
これ見よがしに平地を歩く敵とわざわざ戦う必要が無い。ただ、やり過ごす気が有るということは、本陣にも兵を残している可能性が高い。
(考えろ、考えろ!)
エフィアナに迷いが生じた。
「本陣に向かうのは二部隊」
隣でラーソルバールが呟いた。その声でエフィアナは我に返った。
「小さい一手だが、斥候を全員潰せば、一瞬でも敵方の足を止められるかもしれない」
横を見やると、ラーソルバールが頷いた。意図を理解したのだろう。
「数は向こうが多いかもしれないが、視認後に奇襲して一気に片付ける」
二人は相手方の斥候を追跡し、気付かれずにその姿を視界に捉えることができた。互いに目で合図を送ると、木陰から飛び出し急襲する。
相手は五人。
ラーソルバールら二人の急襲に気付いて、斥候兵が剣に手をかけた時には、既に二人が倒されていた。
「げ、エフィアナ!」
相手の正体に気付いて、声をあげた瞬間には塗料袋を破られていた。
「げ、って何よ」
エフィアナは剣に付いた塗料を振り払いながら、倒れた相手を見下ろして笑った。
「いや、だって……」
「だって何さ」
相手は自分の仲間が瞬時に全滅させられたのを見て、絶句した。
「お前、何人倒したんだ?」
「あん? 私が倒したのはあんたと、そこの一年坊主だよ。あとはあっち」
エフィアナの指差した先には、丘の上で踊る風に金髪を揺らす少女が居た。
「げ、ラーソルバール」
一年坊主が苦笑した。
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