聖と魔の名を持つ者 ~その娘、聖女か魔女か。剣を手にした令嬢は、やがて国家最強の守護者となる~

草沢一臨

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第一部:第七章 部隊演習

(二)天秤②

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 その頃、ゆっくりと行軍を続ける赤軍の二つの班は、間もなく青軍の本陣に到着するという地点に居た。
「本陣に居るのが一部隊なら、仕掛けるのは、どちらかの班ひとつで。もうひとつは敵の奇襲に備えて、少し遅らせる方が良いと思うがどうかな」
 四班のアルディスが慎重策を提案した。
「それでいいと思うね。ただ、最初に攻める班は苦労するね。後から出る方もタイミングが難しい」
 六班の副班長が同意しつつ、問題点を指摘した。
「うちのリックス……副班長が言った通りだ。特にうちは既に五名を失っている。数的に不利だし、先に出るのは遠慮したい」
 腕組みをして話を聞いていた、六班の班長はそう言いつつアルディスの顔を見た。
「もっともだ。うちが先に行こう。それでいいか、副班長?」
 問われて、傍らに居た青年は黙って頷いた。
「よし。それで決まりだ。六班は余り早く飛び出さないようにしてくれ」
「承知した」
 打ち合わせを終えると、アルディスは自班員に余計な荷を置いて戦闘準備をするよう指示した。
「一年生は良く聞いてくれ。本陣は少し高台になっていて、一部に柵がある。弓を使うのにも適していて、守備側が有利だ。盾を有効に活用しつつ、こちらも弓の得意な者が狙撃を行う。隙をついて攻める。余り奇策は通用しないので、堅実にこなすことが大事だ」
 ゆっくりと、諭すように説明をする。
 指揮官らしい姿が、一年生には眩しく感じた。
「さあ一年生諸君、初の戦闘だ。怖いか? 楽しいか? 訓練だから命を取られる事はない。だが、負けたら厳しいお仕置きが待ってる。勝ちに行くぞ!」
 二年生達が苦笑いをした。今の一言で「お仕置き」を思い出したのだろう。
「皆、行くぞ!」
 号令をし、青軍本陣へと襲い掛かった。

「敵が来たぞ! 偵察に出た連中はまだ戻らないのか?」
 本陣に攻撃が仕掛けられるのを見て、二班に動揺が走った。
「まだだ、焦るな。敵に感付かれる!」
 エフィアナが鎮静化を促す。
「敵は一部隊だ。もうひとつの動向が分からないと手を出しにくいが、出るべきか?」
「もう少し待て」
「しかし、仲間が戦っているというのに、動かないというのは……」
「大丈夫、本陣ならしばらく持ち堪える。指揮官としてもう少しどっしり構えてな。一年生に笑われるぞ」
 班長の焦りが伝わって来る。
 ここはしっかりしてもらわないと困る。彼には難しい注文では無いはずだ。エフィアナは剣に手を掛け、時を待った。
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