聖と魔の名を持つ者 ~その娘、聖女か魔女か。剣を手にした令嬢は、やがて国家最強の守護者となる~

草沢一臨

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第一部:第七章 部隊演習

(二)天秤③

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「盾を前に隙間から攻撃!」
 弓兵を活用しつつ、善戦する四班。休憩を挟んでいるので、疲労も少なく、十分に動けている。足手まといになると思っていた一年生が、思いの外頑張っている。アルディスには嬉しい誤算だった。
 特にシェラとフォルテシアの二人は、意識して連携しているようで、二年生の動きにも劣らない。
 もう一押し必要だ、そう思ったアルディスは単身飛び出した。
「アルディスが来たぞ!」
 本陣で危険を知らせるように、誰かが声をあげた。その瞬間、本陣に少し隙が生まれ、流れが傾いた。

「こちらが優勢に戦っているが、敵は出てこないぞ。増援は無いということじゃないのか?」
 待機していたが、敵本陣で善戦する友軍を見て痺れを切らしたかのように、班長が動く。
「待て、まだ早い!」
「早いものか! あいつらに手柄を持っていかれる!」
 強引に押しきろうとする班長を、副班長は必死で押さえる。
「手柄と確実な勝利とどっちが大事なんだ!」
「行けば勝てる。お前ら、行くぞ!」
 副班長の制止を聞かず、六班は飛び出した。そして、そのまま一気に青軍本陣へと襲いかかる。
 四班の背後につき、攻撃に加わろうとした瞬間だった。
「今だ! 撃て!」
 赤軍の斜め後方から矢が襲い掛かった。
 不意を突かれて、赤軍の生徒達は頭部や鎧の隙間に矢を受け、数名が「死亡」となった。脇に居た監督官が「死亡者」が、戦場で邪魔にならないよう、素早く指示を出す。
 二班は弓を捨て、赤軍の背後を襲う。
 本陣とで挟撃される形になった赤軍は、盾を構えてその勢いを押し返そうとする。
「班長に続け!」
 優勢であったはずの赤軍は一転、窮地に立たされた。
「左右に別れて撤退しろ!」
 奮戦していたアルディスが本陣のからの攻撃を防ぎつつ後退を促す。数名の「戦死者」を出してしまったが、今立て直せばまだ何とかなる。それには六班との連携が必須だ。
「六班も撤退を!」
「承知した!」
 聞き覚えのある声が帰ってきた。おそらく六班の副班長だろう。
「六班は盾をしっかり構えて退路を確保しろ!」
 同じ声がもう一度響く。
 指示に従い、防御を重視とした戦い方に変化する。
「逃がすな! 包囲しろ!」
 青軍両班から同時に指示が飛ぶ。挟撃状態から包囲陣形へと変わり始めた時だった。
「この人数で包囲なんか出来るか。薄いところが出来るだけだ」
 アルディスは隙間を見つけると、副班長に指示し、穴を広げる手に出た。自身は本陣の攻撃を単身引き付け、殿を担う。
 その作戦は成功するかに見えた。
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