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第一部:第八章 心機一転
(二)誕生日②
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有力な貴族であれば、大々的に誕生祝いを行うが、そうでなければ家庭内か、知り合いのみで、ささやかに行うのが一般的である。
ミルエルシ家は当然、大々的にやる予算も無ければ、そこまでやる意味もない。娘を宣伝する必要も、名家に嫁がせるつもりもないからだ。
エラゼルのような公爵家の娘は、本人の意思とは関係なく、無理矢理にでも御披露目される事だろう。父の考えがそうでは無いことを感謝しつつ、ラーソルバールは友と歓談する時間を楽しむ。
「さて、十五才になった事だし、来年の国主催の新年会には出席しないとな」
「うぇ……」
思わず変な声が出てしまった。
来年の新年会への参加が、必須だという事を忘れていたのだ。これがラーソルバールにとっての、社交界デビューの舞台になるだろう。
「憂鬱だ……」
「そうだねえ」
間もなく誕生日を迎える、シェラにとっても、それは同様だった。
華やかなドレスに身を包んで、笑顔で愛想を振り撒く。下手をすればどこかの貴族に、息子と婚約しろと迫られる。良いイメージなど持っていない。
「まあ、想像しているものと大差ないな」
今年の新年会に出席した、先輩であるアルディスが苦笑した。
「エフィ姉も出たの?」
「付き人としてね」
「ちゃんと着飾ってたから、まともに見えたのか、言い寄ってくる男共もいたぞ」
エフィアナがアルディスの頬をつねる。
「ん? 何か?」
「な、なんぇもありまへん」
本来であれば、使用人つまり平民であるエフィアナが、新年会に出席することはできない。
付人として同伴させる、それが兄妹のように育ってきたエフィアナへの、フォンドラーク家の配慮なのだろう。親の立場としては「将来のうちの嫁です」という御披露目もという別の目的も有ったに違いない。そこは、本人たちも何となく察していたようだが。
将来アルディスが尻に敷かれるだろうという事は、想像に難くない。
いつもラーソルバールは、そう思って笑っている。
「偉い貴族でなくて良かった。誕生会だの新年会だの、色々な催しに引っ張り出されて面倒臭そうだし」
面倒な事には関わりたくない。ラーソルバールの本音だった。
「そう言うなよ、下っ端には悲哀ってもんがある。しがらみだらけだぞ」
本家に振り回されて苦労しているアルディスらしい言葉だった。
「貴族というのは面倒なものですね」
珍しくフォルテシアが口を開いた。平民出身の騎士の娘である彼女には、縁の無い世界かもしれない。それは軍学者の家で育ったエミーナも同様だったようで、横でふんふんと頷き同意した。
「ガイザ君は気にしてないみたいだね」
「まあ、兄達のを見てますからね……。やりたくないとは思ってますよ」
「揃って華やかな場所が嫌いっていうのもな……」
アルディスは自分の事を棚にあげて、他人事のように呆れてみせた。
「一番苦手なのは、多分こいつでしょ」
「ん?」
不意に話を振られたが、一応本人にその自覚はあるらしい。
ラーソルバールは食事の手を止めて、顔をあげる。
「そういう場所って、色々と面倒じゃない。何にも良いこと無いだろうし」
「言いたいことは分かるが、あまり大きな声で言うなよ……」
余所で誰かに聞き咎められると、不都合が有りそうな内容だったため、ガイザが嗜める。
「場所はわきまえてます」
悪戯っぽく笑う笑顔に、ガイザは動揺した。
その様子を横目で見ていたシェラは、何も言わず微笑んだ。
ミルエルシ家は当然、大々的にやる予算も無ければ、そこまでやる意味もない。娘を宣伝する必要も、名家に嫁がせるつもりもないからだ。
エラゼルのような公爵家の娘は、本人の意思とは関係なく、無理矢理にでも御披露目される事だろう。父の考えがそうでは無いことを感謝しつつ、ラーソルバールは友と歓談する時間を楽しむ。
「さて、十五才になった事だし、来年の国主催の新年会には出席しないとな」
「うぇ……」
思わず変な声が出てしまった。
来年の新年会への参加が、必須だという事を忘れていたのだ。これがラーソルバールにとっての、社交界デビューの舞台になるだろう。
「憂鬱だ……」
「そうだねえ」
間もなく誕生日を迎える、シェラにとっても、それは同様だった。
華やかなドレスに身を包んで、笑顔で愛想を振り撒く。下手をすればどこかの貴族に、息子と婚約しろと迫られる。良いイメージなど持っていない。
「まあ、想像しているものと大差ないな」
今年の新年会に出席した、先輩であるアルディスが苦笑した。
「エフィ姉も出たの?」
「付き人としてね」
「ちゃんと着飾ってたから、まともに見えたのか、言い寄ってくる男共もいたぞ」
エフィアナがアルディスの頬をつねる。
「ん? 何か?」
「な、なんぇもありまへん」
本来であれば、使用人つまり平民であるエフィアナが、新年会に出席することはできない。
付人として同伴させる、それが兄妹のように育ってきたエフィアナへの、フォンドラーク家の配慮なのだろう。親の立場としては「将来のうちの嫁です」という御披露目もという別の目的も有ったに違いない。そこは、本人たちも何となく察していたようだが。
将来アルディスが尻に敷かれるだろうという事は、想像に難くない。
いつもラーソルバールは、そう思って笑っている。
「偉い貴族でなくて良かった。誕生会だの新年会だの、色々な催しに引っ張り出されて面倒臭そうだし」
面倒な事には関わりたくない。ラーソルバールの本音だった。
「そう言うなよ、下っ端には悲哀ってもんがある。しがらみだらけだぞ」
本家に振り回されて苦労しているアルディスらしい言葉だった。
「貴族というのは面倒なものですね」
珍しくフォルテシアが口を開いた。平民出身の騎士の娘である彼女には、縁の無い世界かもしれない。それは軍学者の家で育ったエミーナも同様だったようで、横でふんふんと頷き同意した。
「ガイザ君は気にしてないみたいだね」
「まあ、兄達のを見てますからね……。やりたくないとは思ってますよ」
「揃って華やかな場所が嫌いっていうのもな……」
アルディスは自分の事を棚にあげて、他人事のように呆れてみせた。
「一番苦手なのは、多分こいつでしょ」
「ん?」
不意に話を振られたが、一応本人にその自覚はあるらしい。
ラーソルバールは食事の手を止めて、顔をあげる。
「そういう場所って、色々と面倒じゃない。何にも良いこと無いだろうし」
「言いたいことは分かるが、あまり大きな声で言うなよ……」
余所で誰かに聞き咎められると、不都合が有りそうな内容だったため、ガイザが嗜める。
「場所はわきまえてます」
悪戯っぽく笑う笑顔に、ガイザは動揺した。
その様子を横目で見ていたシェラは、何も言わず微笑んだ。
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