186 / 439
第一部:第十六章 動乱
(二)覚悟②
しおりを挟む
二人も仲間を倒した危険な相手を、兵士たちが見逃すはずが無かった。
ラーソルバールが次の相手と狙った相手との間に、別の兵士が割り込んだ。
「むん!」
兵士の剣が直線的に振り下ろされる。
ラーソルバールは難なくそれを避けると、低くなった頭を剣で後ろから叩きつけつけた。
抗う術も無く、兵士はそのまま倒れる。
「ラーソルバール!」
後ろからエラゼルの声がした。混乱した式場で人を掻き分けるようにしてやってくる。
「剣はここに有るから、拾って使って! 私は宰相様をお守りする!」
ラーソルバールの戦いを見て、落ち着きを取り戻した数名が模擬剣を手に兵士に向かっていく。
エラゼルならこの場を任せても大丈夫なはずだ。
「アル兄! エフィ姉!」
幼馴染の二人の名を叫ぶが、返事は無い。
混乱の声にかき消され、互いの声が聞こえないのだろうか。
心配は後だ。爆発に巻き込まれていなければ、あの二人なら大丈夫だ。自分に言い聞かせる。
今は宰相を、軍務大臣を守らなくてはいけない。
襲い来る兵士の剣を掻い潜り走ると、ジャハネートに守られるように避難する宰相の姿が見えた。
(あそこまでいける?)
自問自答する。
兵士はまだ二十人以上はいる。
何人かは生徒達に止められているが、まだ増える可能性がある。
しかし、これだけの重装備をした兵士を街中で動かせるものか。人目につき、即座に企ては発覚し、騎士団によって制圧されるはずだ。夜間のうちに敷地内に忍び込んだか、あるいは地下道でも作ったか。
もうひとつの可能性は考えたくない。
三人ほどの兵士を倒し、他の兵士の間をすり抜け、ラーソルバールはようやくジャハネートの元に駆けつけた。
「ジャハネート様!」
「おお、アンタかい!」
険しかったジャハネートの顔が晴れた。
直接の面識は無いはずだが、と心の中でラーソルバールは思ったが、口には出さなかった。
「ドレスじゃないにしても、剣が無いと踊りにくくてね」
素手で剣をあしらいながらも、冗談を言う余裕があるという事だ。
戦闘の中、ラーソルバールは思わず笑ってしまった。
ラーソルバールは、ジャハネートを狙って振り下ろされた兵士の剣を受け流すと、手首を捻って巧みに剣を絡め取った。
「手際いいねぇ」
兵士の手から離れた剣を手に取ると、ジャハネートは嬉しそうに笑った。
「さあて、行くよ! 離れてな!」
そう言った瞬間に、ジャハネートの剣が唸りを上げた。
剣を失った兵士は、ジャハネートの攻撃を腹部に受けると一瞬で弾き飛ばされ、後ろの兵士を巻き込んだ。
「うわ!」
赤い女豹と呼ばれる騎士団長の強さを目の当たりにして、ラーソルバールは驚きの声を上げた。
正に暴風の如く、兵士をなぎ倒しながら道を切り開く。桁違いの破壊力だった。
「赤い女豹が剣を持った!」
兵士の一人が悲鳴のような声を上げる。
「バケモノだ!」
ジャハネートの戦う様を目の当たりにした兵士が叫ぶ。
「レディを相手にバケモノとは失礼だね! ちょっとばかし鍛え方が違うだけだよ!」
兵士達の腰が引ける。
ラーソルバールもジャハネートと共に、兵士の波を突き崩していく。
「ラーソルバール、相手を殺す覚悟はあるかい?」
何故ジャハネートは自分の名前を知っているのだろう。答えよりも先に、そっちが気になった。
「今からします!」
「悪くない返事だが、殺すのは騎士になってからでいい。今は自分と、守るべき人を守るため、最大限の努力をすればいい!」
迷っていた心を見透かしたような言葉に、ラーソルバールは「今やるべきことをやる」その事を再確認した。
ラーソルバールが次の相手と狙った相手との間に、別の兵士が割り込んだ。
「むん!」
兵士の剣が直線的に振り下ろされる。
ラーソルバールは難なくそれを避けると、低くなった頭を剣で後ろから叩きつけつけた。
抗う術も無く、兵士はそのまま倒れる。
「ラーソルバール!」
後ろからエラゼルの声がした。混乱した式場で人を掻き分けるようにしてやってくる。
「剣はここに有るから、拾って使って! 私は宰相様をお守りする!」
ラーソルバールの戦いを見て、落ち着きを取り戻した数名が模擬剣を手に兵士に向かっていく。
エラゼルならこの場を任せても大丈夫なはずだ。
「アル兄! エフィ姉!」
幼馴染の二人の名を叫ぶが、返事は無い。
混乱の声にかき消され、互いの声が聞こえないのだろうか。
心配は後だ。爆発に巻き込まれていなければ、あの二人なら大丈夫だ。自分に言い聞かせる。
今は宰相を、軍務大臣を守らなくてはいけない。
襲い来る兵士の剣を掻い潜り走ると、ジャハネートに守られるように避難する宰相の姿が見えた。
(あそこまでいける?)
自問自答する。
兵士はまだ二十人以上はいる。
何人かは生徒達に止められているが、まだ増える可能性がある。
しかし、これだけの重装備をした兵士を街中で動かせるものか。人目につき、即座に企ては発覚し、騎士団によって制圧されるはずだ。夜間のうちに敷地内に忍び込んだか、あるいは地下道でも作ったか。
もうひとつの可能性は考えたくない。
三人ほどの兵士を倒し、他の兵士の間をすり抜け、ラーソルバールはようやくジャハネートの元に駆けつけた。
「ジャハネート様!」
「おお、アンタかい!」
険しかったジャハネートの顔が晴れた。
直接の面識は無いはずだが、と心の中でラーソルバールは思ったが、口には出さなかった。
「ドレスじゃないにしても、剣が無いと踊りにくくてね」
素手で剣をあしらいながらも、冗談を言う余裕があるという事だ。
戦闘の中、ラーソルバールは思わず笑ってしまった。
ラーソルバールは、ジャハネートを狙って振り下ろされた兵士の剣を受け流すと、手首を捻って巧みに剣を絡め取った。
「手際いいねぇ」
兵士の手から離れた剣を手に取ると、ジャハネートは嬉しそうに笑った。
「さあて、行くよ! 離れてな!」
そう言った瞬間に、ジャハネートの剣が唸りを上げた。
剣を失った兵士は、ジャハネートの攻撃を腹部に受けると一瞬で弾き飛ばされ、後ろの兵士を巻き込んだ。
「うわ!」
赤い女豹と呼ばれる騎士団長の強さを目の当たりにして、ラーソルバールは驚きの声を上げた。
正に暴風の如く、兵士をなぎ倒しながら道を切り開く。桁違いの破壊力だった。
「赤い女豹が剣を持った!」
兵士の一人が悲鳴のような声を上げる。
「バケモノだ!」
ジャハネートの戦う様を目の当たりにした兵士が叫ぶ。
「レディを相手にバケモノとは失礼だね! ちょっとばかし鍛え方が違うだけだよ!」
兵士達の腰が引ける。
ラーソルバールもジャハネートと共に、兵士の波を突き崩していく。
「ラーソルバール、相手を殺す覚悟はあるかい?」
何故ジャハネートは自分の名前を知っているのだろう。答えよりも先に、そっちが気になった。
「今からします!」
「悪くない返事だが、殺すのは騎士になってからでいい。今は自分と、守るべき人を守るため、最大限の努力をすればいい!」
迷っていた心を見透かしたような言葉に、ラーソルバールは「今やるべきことをやる」その事を再確認した。
0
あなたにおすすめの小説
ボンクラ王子の側近を任されました
里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」
王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。
人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。
そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。
義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。
王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた
黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆
毎日朝7時更新!
「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」
過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。
絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!?
伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!?
追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!
転生幼子は生きのびたい
えぞぎんぎつね
ファンタジー
大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。
だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。
神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。
たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。
一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。
※ネオページ、カクヨムにも掲載しています
婚約破棄は構いませんが、私が管理していたものは全て引き上げます 〜成金伯爵家令嬢は、もう都合のいい婚約者ではありません〜
藤原遊
ファンタジー
成金と揶揄される伯爵家の令嬢である私は、
名門だが実情はジリ貧な公爵家の令息と婚約していた。
公爵家の財政管理、契約、商会との折衝――
そのすべてを私が担っていたにもかかわらず、
彼は隣国の王女と結ばれることになったと言い出す。
「まあ素敵。では、私たちは円満に婚約解消ですね」
そう思っていたのに、返ってきたのは
「婚約破棄だ。君の不出来が原因だ」という言葉だった。
……はぁ?
有責で婚約破棄されるのなら、
私が“善意で管理していたもの”を引き上げるのは当然でしょう。
資金も、契約も、人脈も――すべて。
成金伯爵家令嬢は、
もう都合のいい婚約者ではありません。
【完結】辺境伯の溺愛が重すぎます~追放された薬師見習いは、領主様に囲われています~
深山きらら
恋愛
王都の薬師ギルドで見習いとして働いていたアディは、先輩の陰謀により濡れ衣を着せられ追放される。絶望の中、辺境の森で魔獣に襲われた彼女を救ったのは、「氷の辺境伯」と呼ばれるルーファスだった。彼女の才能を見抜いたルーファスは、アディを専属薬師として雇用する。
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3)
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる