198 / 439
第一部:第十七章 真実は突然に
(二)その者の名は②
しおりを挟む
国王が悩み、決断した翌日。
一年生のみとなった騎士学校は休日を迎えていた。
まだ一年生としての授業は終わっておらず、二年生が再度の卒業式を行う前日まで通常通り続けられる事になっている。
この日は、ラーソルバールの部屋に四人が集まっていた。
「四人も入ると狭く感じるな」
エラゼルが不満を述べる。
「寮の部屋なんて、何処だって同じなのに何で私の部屋なの……?」
部屋の主として文句を言ってみるだ、誰も反応しない。
「全くもう……」
口を尖らせてみるが、それ以上言ったところで、エラゼルに「心配だから来た」と言われて終わりそうなので、何も言えない。
「ラーソルがいいお茶が入ったって言うから……」
止むに止まれず、シェラが答える。
「良いお茶飲みたい…」
フォルテシアが続く。
エラゼルは目の前に置かれた菓子の入った箱に視線をやり、話を聞いていない。
「エラゼル、お嬢様がはしたないよ」
呼ばれてビクッとしてラーソルバールの顔を見るエラゼル。
「仕方ないではないか。我が家では幼い頃より、甘味というものを食べさせてもらえる機会が少なかったのだ…」
そう言って再び菓子に視線を戻す。
「それはシェラが、お気に入りのお菓子屋さんで買ってきてくれた物なんだから、感謝しつつ食べないとね」
「そ…そのくらいの事は分かっている…」
言葉に窮してむくれるエラゼルを見て、シェラとフォルテシアは笑ってしまった。
ラーソルバールが皆の茶を入れ終わり、椅子に腰掛けた瞬間だった。
軽くドアを叩く音がして、座ったばかりの椅子から腰を上げた。
「はい、何でしょう?」
そう応えて扉を開くと、そこには寮母が立っていた。
「あら、エラゼルさんも居たのね。丁度良かった」
名を呼ばれたので、渋々菓子から視線を外しエラゼルも席を立つ。
「何でしょう?」
理由も分からず、首を傾げるラーソルバールに、寮母は封書を手渡した。
「今しがた、城からの使者という方が、これを速やかに二人に渡すようにと置いていったのよ」
「はぁ……。有難うございます」
礼を述べると、寮母は大きく頷いた。
「はい、私の役目はここまで。お邪魔したわね」
そう言い残すと、扉を開けたまま慌しく去っていった。
「なぁに?」
「なんだろね?」
そう答えたものの、ラーソルバールは嫌な予感しかしない。
ふと横を見ると、そこに居たはずのエラゼルは既に椅子に座り、今か今かと菓子を見詰めていた。
苦笑いしながら、レターナイフを手に取って腰掛けた。
「ああ、ごめん、先に始めてて……」
ラーソルバールの言葉で、シェラによって菓子箱が開封され、中から菓子が顔を覗かせる。
とたんにエラゼルの目が輝く。
そんな姿を横目に、呆れながらラーソルバールは封書を開けた。
目の前の茶を後回しにして、取り出した書面を読み進める。
「んが……!」
あまりの内容に、ラーソルバールは思わず変な声を出してしまった。
「どうした?」
早速菓子を頬張りながら、ご機嫌のエラゼル。
見るとラーソルバールの顔が青ざめている。
「……こ…こ……国王…陛下からの…お呼び出し……」
「え!」
シェラとフォルテシアが同時に声を発した。
「ほう、行って来ればいいではないか」
菓子に夢中で特に気にも止めぬ様子のエラゼル。適当に答えているに違いない。
「……あなた、自分の手元にも封書来てるの忘れてる?」
呆れたように言うと、ラーソルバールは無関心な友を見詰める。
「ん?」
「国王陛下との謁見は『エラゼル・オシ・デラネトゥスと共に』って書いてあるよ」
「んんんん?」
エラゼルは一転、硬直した。
一年生のみとなった騎士学校は休日を迎えていた。
まだ一年生としての授業は終わっておらず、二年生が再度の卒業式を行う前日まで通常通り続けられる事になっている。
この日は、ラーソルバールの部屋に四人が集まっていた。
「四人も入ると狭く感じるな」
エラゼルが不満を述べる。
「寮の部屋なんて、何処だって同じなのに何で私の部屋なの……?」
部屋の主として文句を言ってみるだ、誰も反応しない。
「全くもう……」
口を尖らせてみるが、それ以上言ったところで、エラゼルに「心配だから来た」と言われて終わりそうなので、何も言えない。
「ラーソルがいいお茶が入ったって言うから……」
止むに止まれず、シェラが答える。
「良いお茶飲みたい…」
フォルテシアが続く。
エラゼルは目の前に置かれた菓子の入った箱に視線をやり、話を聞いていない。
「エラゼル、お嬢様がはしたないよ」
呼ばれてビクッとしてラーソルバールの顔を見るエラゼル。
「仕方ないではないか。我が家では幼い頃より、甘味というものを食べさせてもらえる機会が少なかったのだ…」
そう言って再び菓子に視線を戻す。
「それはシェラが、お気に入りのお菓子屋さんで買ってきてくれた物なんだから、感謝しつつ食べないとね」
「そ…そのくらいの事は分かっている…」
言葉に窮してむくれるエラゼルを見て、シェラとフォルテシアは笑ってしまった。
ラーソルバールが皆の茶を入れ終わり、椅子に腰掛けた瞬間だった。
軽くドアを叩く音がして、座ったばかりの椅子から腰を上げた。
「はい、何でしょう?」
そう応えて扉を開くと、そこには寮母が立っていた。
「あら、エラゼルさんも居たのね。丁度良かった」
名を呼ばれたので、渋々菓子から視線を外しエラゼルも席を立つ。
「何でしょう?」
理由も分からず、首を傾げるラーソルバールに、寮母は封書を手渡した。
「今しがた、城からの使者という方が、これを速やかに二人に渡すようにと置いていったのよ」
「はぁ……。有難うございます」
礼を述べると、寮母は大きく頷いた。
「はい、私の役目はここまで。お邪魔したわね」
そう言い残すと、扉を開けたまま慌しく去っていった。
「なぁに?」
「なんだろね?」
そう答えたものの、ラーソルバールは嫌な予感しかしない。
ふと横を見ると、そこに居たはずのエラゼルは既に椅子に座り、今か今かと菓子を見詰めていた。
苦笑いしながら、レターナイフを手に取って腰掛けた。
「ああ、ごめん、先に始めてて……」
ラーソルバールの言葉で、シェラによって菓子箱が開封され、中から菓子が顔を覗かせる。
とたんにエラゼルの目が輝く。
そんな姿を横目に、呆れながらラーソルバールは封書を開けた。
目の前の茶を後回しにして、取り出した書面を読み進める。
「んが……!」
あまりの内容に、ラーソルバールは思わず変な声を出してしまった。
「どうした?」
早速菓子を頬張りながら、ご機嫌のエラゼル。
見るとラーソルバールの顔が青ざめている。
「……こ…こ……国王…陛下からの…お呼び出し……」
「え!」
シェラとフォルテシアが同時に声を発した。
「ほう、行って来ればいいではないか」
菓子に夢中で特に気にも止めぬ様子のエラゼル。適当に答えているに違いない。
「……あなた、自分の手元にも封書来てるの忘れてる?」
呆れたように言うと、ラーソルバールは無関心な友を見詰める。
「ん?」
「国王陛下との謁見は『エラゼル・オシ・デラネトゥスと共に』って書いてあるよ」
「んんんん?」
エラゼルは一転、硬直した。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~
季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」
建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。
しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった!
(激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!)
理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造!
隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。
辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。
さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。
「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」
冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!?
現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる!
爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」
魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。
――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。
「ここ……どこ?」
現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。
救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。
「ほら、食え」
「……いいの?」
焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。
行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。
旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。
「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」
「ウチの子は天才か!?」
ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。
これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。
※若干の百合風味を含みます。
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる