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第二部:第二十一章 帝国を歩く
(一)帝国の土②
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美しい花が景色を彩る事もない、荒れた大地のなかに有る道を馬車は走る。何事も無く順調に進むと、間もなく街が見えてきた。
それは鉱山で発展したというよりは、街が鉱山の一部だと言えるような光景だった。草木の殆ど生えていない山。その斜面から平地にかけて街は作られていた。
「こんなの見たこと無いよ」
シェラが驚きをそのまま口にする。
「鉱夫や、精製工房、職人が造り出した共同作品と言ったところか?」
「上手いこと仰りますね。街の住人の殆どがそのいずれかの職に就いています。国境に近いとは言え、その影響はほぼ無いと言って良い程で、少しばかり宿と飲食店が多い位ですかね」
「なるほど。とりあえず宿の心配はしなくても良いと言うことか。しかしあの街は美しいと言うよりは異様だな」
エラゼルは夕日に照らされて映し出される、山と街の織り成す不思議な光景に見入った。
日が沈んでから馬車は街に入る。工房などから漏れる光や、街灯代わりに設置されたランタンの明かりが道を照らす。
「斜面の方は鉱夫達や工房が主体なので、店や食堂は殆んど有りません。この辺で探されると良いでしょう」
「ありがとうございます。そうさせて頂きます」
「ああ、言い忘れていましたが、ここはドワーフと共存している街でも有ります。見かけても驚かれませんように」
口には出さなかったが、皆が一様に驚いた。
ドワーフは、一般的に亜人種、半妖精などと言われる。鉱石を食って生きていると揶揄される程に、鉱山とは切っても切り離せない存在として知られている。
あまり人と馴れ合うことの無い種族だと聞いていたが、実際は違うのだろうか。亜種族への関心が薄いラーソルバールも少し興味が湧いた。
確かに通り過ぎる人影にドワーフの小柄な姿が混ざる。小柄と言っても体型的にはどっしりとしており、ラーソルバールらよりも体重は遥かに重いのだろうと想像できる。
街の人々も彼らの存在が当たり前のようで、特に気にする様子もない。
「ドワーフの工房も覗いてみたいね」
とは言ったものの、日程的には厳しい。宿を決め、食堂を探していれば、この日にはもう時間がない。
「明日の出立を一刻ほど遅くしますか?」
「是非!」
意外にも、御者の提案に即答したのはディナレスだった。
「ドワーフの工房で作られたメイスが欲しかったの!」
目を輝かせて言う姿に、誰もが提案を否定出来ない。
「ドワーフは繊細な彫刻を施した装飾品なども得意だと聞いている。そういった物が時に魔除けの役割を果たすとか……」
ディナレスを援護するようなエラゼルの言葉に、誰もが首を縦に振るしか無かった。
馬車を降りた一行は、宿を探して歩く。
山を見上げれば、斜面から続く生活の明かりが幻想的に映り、ここが現実では無い、何処か別の場所に居るかのような錯覚に陥る。
「綺麗だね。何か空を飛んでいるというか……逆に何かに吸い込まれていくような……変な感じ」
工房に寄れるとあって、ディナレスは少々浮かれ気味に歩いている。夜景に対して抱いた感覚は誰もが似たようなものだった。
「ああ、そういえばここの夜景は有名だったな。遠くから見たり、山から見下ろしたりするとまた違った趣が有るのだそうだ」
思い出したようにモルアールが言った。
「朴念仁では無かったのか」
フォルテシアが真顔で言うので、モルアールは一瞬言葉に詰まる。
「……いや、朴念仁に言われたくはない」
「そう……、私の仲間ではないのか?」
フォルテシアは、ふふんと笑った。
それは鉱山で発展したというよりは、街が鉱山の一部だと言えるような光景だった。草木の殆ど生えていない山。その斜面から平地にかけて街は作られていた。
「こんなの見たこと無いよ」
シェラが驚きをそのまま口にする。
「鉱夫や、精製工房、職人が造り出した共同作品と言ったところか?」
「上手いこと仰りますね。街の住人の殆どがそのいずれかの職に就いています。国境に近いとは言え、その影響はほぼ無いと言って良い程で、少しばかり宿と飲食店が多い位ですかね」
「なるほど。とりあえず宿の心配はしなくても良いと言うことか。しかしあの街は美しいと言うよりは異様だな」
エラゼルは夕日に照らされて映し出される、山と街の織り成す不思議な光景に見入った。
日が沈んでから馬車は街に入る。工房などから漏れる光や、街灯代わりに設置されたランタンの明かりが道を照らす。
「斜面の方は鉱夫達や工房が主体なので、店や食堂は殆んど有りません。この辺で探されると良いでしょう」
「ありがとうございます。そうさせて頂きます」
「ああ、言い忘れていましたが、ここはドワーフと共存している街でも有ります。見かけても驚かれませんように」
口には出さなかったが、皆が一様に驚いた。
ドワーフは、一般的に亜人種、半妖精などと言われる。鉱石を食って生きていると揶揄される程に、鉱山とは切っても切り離せない存在として知られている。
あまり人と馴れ合うことの無い種族だと聞いていたが、実際は違うのだろうか。亜種族への関心が薄いラーソルバールも少し興味が湧いた。
確かに通り過ぎる人影にドワーフの小柄な姿が混ざる。小柄と言っても体型的にはどっしりとしており、ラーソルバールらよりも体重は遥かに重いのだろうと想像できる。
街の人々も彼らの存在が当たり前のようで、特に気にする様子もない。
「ドワーフの工房も覗いてみたいね」
とは言ったものの、日程的には厳しい。宿を決め、食堂を探していれば、この日にはもう時間がない。
「明日の出立を一刻ほど遅くしますか?」
「是非!」
意外にも、御者の提案に即答したのはディナレスだった。
「ドワーフの工房で作られたメイスが欲しかったの!」
目を輝かせて言う姿に、誰もが提案を否定出来ない。
「ドワーフは繊細な彫刻を施した装飾品なども得意だと聞いている。そういった物が時に魔除けの役割を果たすとか……」
ディナレスを援護するようなエラゼルの言葉に、誰もが首を縦に振るしか無かった。
馬車を降りた一行は、宿を探して歩く。
山を見上げれば、斜面から続く生活の明かりが幻想的に映り、ここが現実では無い、何処か別の場所に居るかのような錯覚に陥る。
「綺麗だね。何か空を飛んでいるというか……逆に何かに吸い込まれていくような……変な感じ」
工房に寄れるとあって、ディナレスは少々浮かれ気味に歩いている。夜景に対して抱いた感覚は誰もが似たようなものだった。
「ああ、そういえばここの夜景は有名だったな。遠くから見たり、山から見下ろしたりするとまた違った趣が有るのだそうだ」
思い出したようにモルアールが言った。
「朴念仁では無かったのか」
フォルテシアが真顔で言うので、モルアールは一瞬言葉に詰まる。
「……いや、朴念仁に言われたくはない」
「そう……、私の仲間ではないのか?」
フォルテシアは、ふふんと笑った。
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