聖と魔の名を持つ者 ~その娘、聖女か魔女か。剣を手にした令嬢は、やがて国家最強の守護者となる~

草沢一臨

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第二部:第二十二章 暗き森への誘い

(四)疲労と休息と①

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(四)

 森の中を歩き続けて三日目、初日のように落ち着いたものではなく、戦闘に至るケースも増えてきた。
 ゴブリン、オークといった怪物から、狼や、巨大な虫など、普段王都では目にすることの無い生物たちとの遭遇している。今までは然程の苦も無く対処できていたのだが、この日は厄介な相手に遭遇してしまった。

 遺跡を巡って九個目。調査に入ろうとした直後に、一行はノールの嗅覚で捕捉されてしまった。遭遇した当初は三体だったのだが、即座に咆哮により仲間を呼び寄せられ、三体程倒した今でも、八体程の相手をしている。
「ラーソルバール! 左を頼む!」
「了解!」
 ノールはラーソルバールらの身長を遥かに越える二.五エニスト近くの体躯を生かし、斧や剣をを生かした強力な攻撃を繰り出してくる。下手に剣を使って受け止めようとすれば、その力に弾かれてしまうことは間違いない。
「せっかく遺跡を見つけたと思ったら、こいつらの住処だったとか、洒落にならねえな」
 ガイザが愚痴をこぼす。
 ノールの剣を固定盾《バックラー》で受け止めたは良いが、その衝撃で腕に痺れが残っている。
「ラーソル、そっちにもう一体行った!」
 シェラに言われる前に気付いてはいたが、既に三体を相手にしている状態では目視で確認している余裕は無い。対人間ではないやりにくさが、全員の対応を鈍らせている。
 モルアールも魔法を使用して既に一体を倒しているが、数的に不利のため現在は補助に集中し、手が回らない状況だった。

 こういった大物退治の際には、今まではラーソルバールはエラゼルと連携して対応してきたが、彼女も今は手一杯でそれは望めない。下手をすれば仲間の命を危険に晒すような状況だけに、無難な戦いをしようかなどと躊躇している余裕は無かった。
 ラーソルバールは覚悟を決め、左右からの攻撃をかいくぐると、突き出された前面の敵の攻撃を剣で受け流しつつ、狭い隙間をこじ開けるように力一杯横薙ぎを入れる。
「ギャウン!」
 不意を突かれ、脇腹を大きく切断されたノールは前のめりに倒れると、そのまま絶命した。
 ノールの表皮はかなり硬いはずなのだが、新しい剣はそれを感じさせぬほどの切れ味で、ラーソルバールを驚かせた。

 シェラやガイザと連携してモルアールが倒した一体と、エラゼルが一体、そしてこれでラーソルバールが二体。
 仲間をより多く切り倒したラーソルバールに向けられる敵意は鋭い。ラーソルバールが二体の間をすり抜けた事で、そちらに気を取られたノールは、他のメンバーに背を向ける形になった。
「今だ!」
 シェラとフォルテシアが同時に剣を突き出す。
「ウガゥ!」
 背後からの攻撃に、為す術も無く体を貫かれたノールは激痛に絶叫する。
「炎弾丸《ファイヤーバレット》!」
 背後へ振り返ろうとしたが、モルアールの魔法が頭部に直撃し、ノールは前のめりに倒れ、動かなくなった。
 仲間が倒れた事に気付いたノール達に、一瞬の隙が生じる。それをラーソルバールとエラゼルは見逃さなかった。
 互いに示し合わせたように、ノールの横をすり抜け、強力な一撃を加えつつ外へと誘導する。
 エラゼルは反応が追い付かないノールの胸元に剣を突き立てて倒し、ラーソルバールは再び胴を切りつけ、絶命させた。
「全く。俺の見せ場が無いだろ!」
 二人を横目に見て、ガイザは半ば呆れ気味に言うと、相手が振りかぶった瞬間を狙い、腕を伸ばして剣を突き出す。その剣はノールの胸を貫き、勝負を決めた。
 残り三体となると、ノールは達は動揺を見せ、戦意を喪失したように逃げて行った。

「ここノールの住み処だったっぽいから、悪いことしちゃったな」
 ディナレスは周囲を見回しつつ、ほっとしたように腰を下ろす。日光の下、遺跡はランタンの必要が無い程度に照らされている。
「彼らにしてみれば、我々はただの食糧だろうから、襲ってきたまでさ。気にすることは無いさ」
 モルアールも安心したように腰を下ろす。
 日の光が暖かく心地よい。疲れもあり、このまま寝てしまいたいという衝動に駆られる。
「油や食糧も少なくなってきたし、皆が疲れているみたいだし、今日はこのまま近くの街に戻ろうか」
「賛成!」
 ラーソルバールの提案にシェラが笑顔で即応し、皆の笑いを誘った。
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