婚約者はやさぐれ王子でした

ダイナイ

文字の大きさ
8 / 45
本編

5話 王都への道中

しおりを挟む
 アーヴァイン公爵家の屋敷入り口付近。
 そこには、二台の馬車とお父様、そしてセレナもいました。
 私とレオン王子殿下の婚約を決めるのに、どうして妹もいるのでしょうか。
 疑問に感じつつも、私は馬車へと近づきました。

「シルヴィア遅かったな」

「申し訳ございません、お父様」

 私は、お父様に謝罪をした。

「私たちはこの馬車に乗る」

「お父様とセレナはその馬車に......、私はどうしたら良いのですか?」

「そこの馬車に乗って王都まで来なさい。分かっているとは思うが、逃げ出そうとしても無駄だからな」

 お父様は、私が乗る馬車の方へと視線を向けた。
 そこには、護衛の兵士が数人いました。
 あの人たちは、ただの護衛ではないのでしょう。
 どうやらあの兵士たちは、私の護衛と監視をするためにいるみたいです。

「では先に向かう。お前も早く馬車に乗って、王都に来なさい」

「分かりました、お父様」

 私は、お父様に言われるがままに、二人とは別の馬車へと乗り込みました。
 馬車は、私が乗り込むとすぐに王都に向けて進み始めました。



 少し進んだ所で、ものすごい衝撃音しょうげきおんと女性のさけび声が聞こえて来ました。
 私が乗っている馬車は、進むのを止めてしまいました。

 どうしたのでしょう、何かあったのでしょうか。

「何をしているんだ、さっさと馬車を出さんかっ!」

「そ、それが......」

 外からは、お父様の怒鳴どなり声と従者の声が聞こえて来ます。
 何かを話しているようですが、ここからではあまり良く聞こえません。

「そんなものは捨て置け、セレナの将来がかかっているんだぞ。今は、すぐにでも王都に行くことの方が重要だ」

「は、はい......」

 お父様と従者が会話を終えると、馬車の進む音が聞こえて来た。
 どうやら、お父様たちの乗った馬車は先に進んで行ったみたいです。

 それでも、女性の泣き叫ぶ声をまだ聞こえて来ます。
 私は、思わず従者に質問をしました。

「あの......何かあったのですか?」

「それが、事故があったようで......」

「なんですって!」

 私は、思わず馬車の扉を開けて外の様子を確認しました。
 そして、外の光景を見て目を見開いて、固まってしまいました。

 馬車の外には、地面に横たわる少女とその側で泣き叫んでいる女性がいます。
 横たわる少女の体からは、血があふれて出ていて、地面が真っ赤に染まっている。

「ま、まぁ、なんてこと!」

「シルヴィアお嬢様、いけません。ドレスが汚れてしまいます!」

「換えならいくらでもありますわ! 人の命には代わりにはありません!」

 止めに入ろうとした従者を振り切って、少女の側へと駆け出した。
 すぐ側まで来たことで、事の重大さがより分かりました。

 倒れている少女は、力なく横たわるだけでピクリとも動きません。
 医学の知識がない私でも、このまま放って置けば目の前の少女が、どうなってしまうかぐらいは分かります。

「これでは......」

 私では、何をしてあげることも出来ません。
 お父様は、この状況を見てそれでも馬車を進ませたと言うのですか......。

「お貴族ざまぁぁぁ、どうが、どうか娘をおだすけぐだざい!」

 少女の母親と思われる女性が、泣きながら私の服をつかんですがるように言ってきました。
 こんなひどい怪我けが、これではもう......。
 少女の母親は、錯乱状態で何がどうなっているかすら分かってはいないみたいです。

「おいお前、シルヴィアお嬢様にれるとは」

「良いのです」

「で、ですがお嬢様......」

 私がそう言うと、護衛の兵士はだまりました。

「どうか娘をお救い下さい! 私はどうなっても構いませんから」

 母親は、泣きながら娘のために救いを求めてきました。
 私に何か出来ることは、何かないの。
 頭をフル回転させて、何か出来ることはないかと必死に考えました。

 あっ!
 ありましたわ!

 私は、一度馬車へと戻って箱から真っ白な魔法石を取り出しました。
 その魔法石を手に持って、少女の元へと戻りました。

「なっ!? お嬢様、どうかそれだけはお辞下さい! 冷静になって下さい!」

「私は冷静ですわ」

 私は、手に持つ魔法石を見た。

「使うのは初めてだけど、どうかお願い。この子を助けてあげて!」

 私は祈るように、魔法石に力を込めると、倒れていた少女からあふれ出ていた血が止まりました。

「なっ、奇跡だ」
「これが魔法石......」

 護衛の兵士たちは、魔法石の力を見て驚いています。
 だけどこれだけでは足りません。
 少女の血は止まりましたが、危険な状況には変わりはありません。
 少女の顔色は悪く、いつ死んでもおかしくはないです。

「もっと、もっと!」

 私は、魔法石にもっと力を込めると、めまいで足元がふらつき始めました。
 それでも力を込め続けると、ようやく少女の顔色が良くなりました。
 どうやら、とうげは越えることが出来たみたいです。

「これで大丈夫ですわ」

「お貴族様、ありがとうございます。私のことは、好きなように扱って構いません」

 母親は、地面へと頭をこすり付けながらそう言って来た。
 私は、少女の状態が良くなったことで、母親と少女がひどくせていることに気が付きました。

 いや、それだけではありません。
 少女と母親を心配して集まって来た領民たちは、栄養が足りていないのか、皆ひどく痩せ細っています。

 私は、それを見て母親の手を取って魔法石をにぎらせました。
 そして微笑ほほえみながら言った。

「貴方の処遇を言い渡します」

 目の前の母親と周囲にいる領民は、ひどく震えています。

「この石を売って、娘に良い物を食べさせてあげて下さい」

「へ?」

 母親は、目をまん丸にして言われたことが理解出来たのか、また地面へと頭を付けました。
 付近にいた領民たちも皆、母親と同じ体勢になりました。

「さあ、早く王都へと向かいましょう」

 私は、それだけ言うと領民たちを後にして、王都へと向かいました。
 後には、私の乗る馬車を見送るように、頭を地面に付けたままの領民たちが残りました——。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

ヤンキー、悪役令嬢になる

山口三
恋愛
岸田和華(きしだわか)は異世界に飛ばされた。自分が読んでいた小説の悪役令嬢ジュリエットに憑依してしまったのだ。だが和華は短気でガサツで、中学高校と番を張ってたヤンキーだ。高貴な身分の貴族令嬢なんてガラじゃない。「舞踏会でダンス? 踊りなんて盆踊りしか知らないからっ」 一方、リアル世界に残された和華の中にはジュリエットが入っていて・・。

役立たずと捨てられた万能建築士、隣国で「聖域」を造って無双する。今さら復興のために戻れ? ご自分たちで瓦礫でも積んでいればよろしいのでは?

しょくぱん
恋愛
「お前の魔法は石を積むだけの土木作業だ」と婚約破棄されたので、城を支えていた『構造維持結界』をすべて解除して出て行きますね。今さら「城が崩れる!」と泣きつかれても、私は隣国で氷結の皇帝陛下と「世界最高の聖域」を造っていますので、一切知りません。 王国唯一の建築魔導師アニエスは、その地味な見た目と能力を理由に、王太子シグムンドから婚約破棄と国外追放を言い渡される。 彼の隣には、派手な光魔法を使う自称聖女の姿があった。 「お前の代わりなどいくらでもいる。さっさと出て行け!」 「……分かりました。では、城にかけていた『自動修復』『耐震』『空調』の全術式を解約しますね」 アニエスが去った直後、王城は音を立てて傾き、噴水は泥水に変わり、王都のインフラは崩壊した。 一方、アニエスは隣国の荒野で、呪われた皇帝レオンハルトと出会う。彼女が何気なく造った一夜の宿は、呪いを浄化するほどの「聖域」だった。 「君は女神か? どうか私の国を救ってほしい」 「喜んで。ついでに世界一快適な住居も造っていいですか?」 隣国がアニエスの力で黄金の国へと発展する一方、瓦礫の山となった母国からは「戻ってきてくれ」と悲痛な手紙が届く。 だが、アニエスは冷ややかに言い放つ。 「お断りします。契約外ですので、ご自分で支えていればよろしいのでは?」 これは、捨てられた万能建築士が隣国で溺愛され、幸せを掴む物語。 そして、彼女を捨てた者たちが、物理的にも社会的にも「崩壊」し、最後には彼女が架ける橋の『礎石』として永遠に踏まれ続けるまでの、壮絶な因果応報の記録。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

処理中です...