婚約者はやさぐれ王子でした

ダイナイ

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本編

30話 狼煙

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 アーヴァイン公爵領。
 小さな村で始まったうわさうわさは、領内へと広がりそれを知らないものはいなくなった。
 シルヴィアの逃亡と、婚約者のレオン王子の反逆罪を知らされた領民は激怒した。


 一部の領民にしか知らされていない建物。
 もちろん、貴族には内緒の場所。

「いまこそ立ち上がるべきではないか!」

「そんなことをすれば、どうなるのかくらい分かっているだろう」

 極秘ごくひの建物には、アーヴァイン公爵領の各村の村長や代表者が集まっていた。
 この場所は、何か議題を持ち込んでは他の皆と共有したり、解決策を考えてたりするところだ。

 今回の議題は。

「だが、シルヴィア様が無事なのかどうかすら分かっていないのだぞ。まずは、シルヴィア様のこそが最優先ではないか」

 一人の男性の発言に、他の人たちは否定することなく、だまってうなずく。

「シルヴィア様の安否を確認する方法を探そうじゃないか」

 今回の議題は、逃亡したと噂されているシルヴィアの生存確認をする方法を探すと言ったものだ。
 アーヴァイン公爵領でのシルヴィアの人気は、とても高いもので困っているのなら、なんとかしたいと考える領民は少なくなかった。

「そもそも、シルヴィア様は本当に逃亡したのか?」

「どういうことだ」

「あの公爵のことだ、監禁されている可能性はないか?」

「あ、ありえるな。娘が汚点になると思えば、隠蔽いんぺいは普通にしそうだ」

 他の人たちも、そうだそうだと言い始める。
 領民たちの会議は白熱して行った。
 領民たちは、互いに意見を出し合ってどうしたら良いのかを考えていく。

「この際、直接アーヴァイン公爵に聞くというのはどうだ」

「それはいいぞ! シルヴィア様のことと、不当な税も一緒に追求してはどうだ」

「ダメだ。今の私たちでは、公爵に直談判したところで処刑されて終わりだろう」

 盛り上がっていたところに、一人の男性の発言で静かになる。

「な、ならどうするんだ?」

「私たちだけで無理なら、協力者を探すべきじゃないか」

 そう発言した男性は、考え込むようにしながら言った。

「それも、出来れば貴族が良いな。そうでなければ、直談判はむだに終わってしまう」

「貴族なんて無理だろ!」

 貴族、という言葉に周囲はざわざわとし始める。
 貴族に相談した時点で、この会議の存在が明らかになってしまう。
 そうなれば、相手次第ではどうなるのか分からないのだ。

「あ、あのっ!」

 一人の女性が手をあげる。
 他の皆は、女性の方を見た。

「私、一人だけ心当たりがあります——」

 そう言って、女性は一人の貴族の名前をあげた——。


 ◇


 アーヴァイン公爵領の公爵の屋敷。

「お父様、そろそろ新しいドレスがほしいですわ」

「おおセレナよ。好きなだけ作らせようじゃないか」

 屋敷では、公爵のマックス・アーヴァインと娘のセレナがいた。
 セレナは、いつも通りに父マックスにほしいものをねだっている。

 そんな時、執事が入って来た。

「マックス様、その......」

「なんだ? 今忙しいのだが」

「屋敷の外に......」

「来客なら今は忙しいから、後日また来てくれと伝えておけ」

 マックスは、執事に対して冷たくそう言った。
 執事によって、セレナとの大切な時間をじゃまされたことを怒っていた。

 執事はマックスにそう言われても、引くことはせずに言葉を続ける。

「それが、公爵領の領民たちがマックス様にお会いしたいと言っていまして......」

「なんだと?」

 領民と聞いて、マックスは怒りをあらわにする。
 公爵の地位はとても高く、領民が会える存在ではない。

「そんな無礼者は、殺さぬ程度にボロボロにして追い返してしまえ」

「それがマックス様、そうはいきません。窓の外を見てください」

「外がどうしたと言うのだ」

 マックスは、執事に言われた通りに窓へと近づいて、外を見た。
 
「なっ!? どういうことだ!?」

 外には、アーヴァイン公爵領の屋敷を取り囲むように領民たちがいた。
 それも、一人や二人、数十人なんてものではなかった。
 公爵領中の領民を集めたのではないか、というくらいの人であふれかえっている。

「領民が、革命を起こそうとでも言うのか!?」

 マックスは、あわてたような表情になった。

「だ、だが相手はたかが領民だ......我が軍に伝えよ、領民を追い返せと」 

 マックスは冷静さ取り戻しながら、執事に伝える。

「無理ですマックス様」

「この私の言うことが聞けないというのか!」

「違います。軍も民衆の手助けをしています」

「なにっ!?」

 窓の外を良く確認すると、武装をした軍も加わっているのが分かる。
 それだけではない。
 アーヴァイン公爵領以外の貴族の軍も加わっているように見えた。

「侵略か? これは王家に伝えなければならんな。セレナ、私について来なさい」

「分かりましたわお父様」

 マックスは、屋敷の地下へと行った。
 そこにある隠し通路から、屋敷のへと逃げ出した。

 地上からは、多くの民衆の足音が聞こえて来る。


 マックスとセレナは、王家に助けを求めるために王都へと向かうことにした——。
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