真実の愛は、誰のもの?

ふまさ

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 それがきっかけとなってしまったはじまりは、エディとミアが婚約して、数ヶ月経ったころのことだった。

 以前よりもずっと頻繁に、ジェンキンス伯爵の屋敷を訪れるようになっていたエディ。ジェンキンス伯爵の口添えもあり、二泊する許しをルソー伯爵から得られるようになっていた。

 その日。昼食を食べ終えたエディは、ミアの部屋で、いつものように談笑していた。ミアが、お茶とお菓子のおかわりをお願いしてきますね、と席から立ち上がったとき、自身の足がからまり、躓いた。床に倒れそうになるミアを、エディが慌てて受け止める。ほっとしたのもつかの間、受け止めた体勢が悪く、二人とも、床に倒れてしまった。

 あ。

 エディは、自分の口が、ミアの唇に触れてしまったことに気付いた。事故とはいえ、はじめてのそれに、エディは思わず、頬を赤らめた。

「──エディ!」

 嬉しそうな、楽しそうな口調で、名を呼ばれた。照れや戸惑いなどなく、がばっと抱き付いてきたミアに、エディは、はっとした。

「……ダリア?」

 認識してくれたことがよほど嬉しかったのか、ダリアは、そうだよ、とエディの胸に頬を擦り付けてきた。

「えへへ、エディ。エディ」

 ミアでは考えられないほど、甘えてくるダリア。ダリアと接するのは、これで何度目だろう。けれど、これまでダリアが表に出てくるきっかけは、恐怖だったはずだし、ジェンキンス伯爵たちも、そう言っていた。

(……ということは)

 嫌な考えが、エディの脳裏を過った。

「……ダリア。きみはどうして、表に出てきたの?」

 問いかけると、ダリアは、エディの胸元から顔を上げ、ぷうっと頬を膨らませた。

「エディはダリアがきらい?」

「違うよ。そんなわけない。ただ、ミアが僕との口付けに、少しでも恐怖を感じていたとしたら、哀しいなって……」

 なーんだ。
 ダリアは、無邪気に笑った。

「ミアはね。パニックになるぐらい、はずかしかっただけだよ」

「……そうなのか? 嫌とかじゃなくて?」

「そんなわけないよ。ミアは、ダリアとおなじぐらい、エディのこと、だいすきだもん」

 ただねえ。ダリアが続けた科白に、エディは「ただ……?」と、耳を研ぎ澄ませた。

「ほんとはね、ミアも、もっとエディにあまえたいとおもってるんじゃないかな。でも、どうすればいいかわからないみたい」

「……そんなこともわかるの?」

「うーん。おはなししたことないから、なーんとなくね。そんなことより、あたま、なでて?」

「え、うん。いいよ」

 実を言えば、ジェンキンス伯爵たちがいないときにダリアが出てきたのは、これがはじめてだった。ダリアが満足したように眠りについたあと、部屋からそっと抜け出し、これらのことを話すと、ジェンキンス伯爵はこう告げた。

「私たちと同じぐらい、きみのことを信用したという証じゃないかな」

 そして、同じぐらい、甘えたいとかね。

 ジェンキンス伯爵と、ジェンキンス伯爵夫人は、いたずらっぽく笑った。

 嬉しいやら、恥ずかしいやらで。

 エディはうつむき、そうですか、と小さく呟いた。

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