33 / 82
33
しおりを挟む
二回目の口付けは、事故や偶然などではなく。ルソー伯爵家へと帰る日の前日。夜のことだった。
「……次は、いつ会えますか?」
ぽそっと、ミアに寂しそうにたずねられて、愛しさが増して。寝台に座るミアの隣に腰掛けたエディは、またすぐに来るよ、と微笑んでみせた。
ミアが、思い切ったように、エディの手を握ってきた。顔を真っ赤にしながら。可愛くて、吸い寄せられるように、そっと口付けをした。我に返り、了承を得ていなかったことを謝罪しようとしたとき。
「エディ!」
うつむいていたミアが、顔を綻ばせながら、抱き付いてきた。おうじさまのキスだ。おうじさまのキスだ。と騒ぎながら。
「ダ、ダリア……?」
前回──三ヶ月前のことを思い出したエディは、まだ早かったかな、と反省しながら、ダリアの頭を撫ではじめた。
回数を重ねれば、きっと、大丈夫だろう。
そんな風に思っていたが、ミアに口付けをすると、必ず、ダリアが出てくるようになってしまった。流石に、困惑するエディ。
「あの、ダリア。ミアはまだ、パニックになるほど、僕との口付けは恥ずかしいのかな……?」
膝枕をしてもらいながら、ダリアが、えーとね、と口元を緩める。
「ミアはエディとキスしたきおくがないから、ずーっとはずかしいままだとおもうよ」
「…………え?」
くふふ。
ダリアは寝転がりながらエディの腰に腕をまわし、楽しげに笑う。
「うれしいなあ、うれしいなあ。ミアのしらないたのしいをしるの、はじめて。まえは、いたいとか、くるしいとか、そんなときしかでられなかったから」
「……そっか」
心からのものであろう言葉に、エディの胸が詰まる。
(ダリアは三歳、だっけ……)
ミアも、ダリアも。等しく、愛しい。その気持ちに嘘なんてない。
もう少し経てば、きっと大丈夫よ。
相談をしたら、ジェンキンス伯爵夫人は、そう言った。エディも、その通りだと思った。
最初は、手の甲から。頬。額。唇が触れても、ダリアは出てこなかった。もう大丈夫かな。そう思い、唇に口付けをする。けれど毎回、ダリアが出てきてしまう。
(これは……少なくとも外では、迂闊に口付けできないな)
時が過ぎ、ミアが、少しずつ不安を募らせていっていることが伝わってきた。どうして、口付けをしてくれないのだろうと。
そして、とうとう。
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」
言葉にしてきた。あのミアが。とても勇気のいったことだろう。馬車内は、二人きり。でも、ミアの屋敷には、きっとコーリーがいる。ダリアのまま、コーリーと会わせるわけにはいかなかったから。
「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」
そう言って、なんとか誤魔化した。
もう何度もしているんだけどね。
心でそう呟きながら、ミアに届かないよう、不安にさせてごめんね、と謝罪した。
「……次は、いつ会えますか?」
ぽそっと、ミアに寂しそうにたずねられて、愛しさが増して。寝台に座るミアの隣に腰掛けたエディは、またすぐに来るよ、と微笑んでみせた。
ミアが、思い切ったように、エディの手を握ってきた。顔を真っ赤にしながら。可愛くて、吸い寄せられるように、そっと口付けをした。我に返り、了承を得ていなかったことを謝罪しようとしたとき。
「エディ!」
うつむいていたミアが、顔を綻ばせながら、抱き付いてきた。おうじさまのキスだ。おうじさまのキスだ。と騒ぎながら。
「ダ、ダリア……?」
前回──三ヶ月前のことを思い出したエディは、まだ早かったかな、と反省しながら、ダリアの頭を撫ではじめた。
回数を重ねれば、きっと、大丈夫だろう。
そんな風に思っていたが、ミアに口付けをすると、必ず、ダリアが出てくるようになってしまった。流石に、困惑するエディ。
「あの、ダリア。ミアはまだ、パニックになるほど、僕との口付けは恥ずかしいのかな……?」
膝枕をしてもらいながら、ダリアが、えーとね、と口元を緩める。
「ミアはエディとキスしたきおくがないから、ずーっとはずかしいままだとおもうよ」
「…………え?」
くふふ。
ダリアは寝転がりながらエディの腰に腕をまわし、楽しげに笑う。
「うれしいなあ、うれしいなあ。ミアのしらないたのしいをしるの、はじめて。まえは、いたいとか、くるしいとか、そんなときしかでられなかったから」
「……そっか」
心からのものであろう言葉に、エディの胸が詰まる。
(ダリアは三歳、だっけ……)
ミアも、ダリアも。等しく、愛しい。その気持ちに嘘なんてない。
もう少し経てば、きっと大丈夫よ。
相談をしたら、ジェンキンス伯爵夫人は、そう言った。エディも、その通りだと思った。
最初は、手の甲から。頬。額。唇が触れても、ダリアは出てこなかった。もう大丈夫かな。そう思い、唇に口付けをする。けれど毎回、ダリアが出てきてしまう。
(これは……少なくとも外では、迂闊に口付けできないな)
時が過ぎ、ミアが、少しずつ不安を募らせていっていることが伝わってきた。どうして、口付けをしてくれないのだろうと。
そして、とうとう。
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」
言葉にしてきた。あのミアが。とても勇気のいったことだろう。馬車内は、二人きり。でも、ミアの屋敷には、きっとコーリーがいる。ダリアのまま、コーリーと会わせるわけにはいかなかったから。
「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」
そう言って、なんとか誤魔化した。
もう何度もしているんだけどね。
心でそう呟きながら、ミアに届かないよう、不安にさせてごめんね、と謝罪した。
194
あなたにおすすめの小説
婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
【完結】髪は女の命と言いますが、それよりも大事なものがある〜年下天才魔法使いの愛には応えられません〜
大森 樹
恋愛
髪は女の命。しかし、レベッカの髪は切ったら二度と伸びない。
みんなには秘密だが、レベッカの髪には魔法が宿っている。長い髪を切って、昔助けた男の子レオンが天才魔法使いとなって目の前に現れた。
「あなたを愛しています!絶対に絶対に幸せにするので、俺と結婚してください!よろしくお願いします!!」
婚約破棄されてから、一人で生きていくために真面目に魔法省の事務員として働いていたレベッカ。天才魔法使いとして入団してきた新人レオンに急に告白されるが、それを拒否する。しかし彼は全く諦める気配はない。
「レベッカさん!レベッカさん!」とまとわりつくレオンを迷惑に思いながらも、ストレートに愛を伝えてくる彼に次第に心惹かれていく…….。しかし、レベッカはレオンの気持ちに答えられないある理由があった。
年上訳あり真面目ヒロイン×年下可愛い系一途なヒーローの年の差ラブストーリーです。
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
愛し子は自由のために、愛され妹の嘘を放置する
紅子
恋愛
あなたは私の連理の枝。今世こそは比翼の鳥となりましょう。
私は、女神様のお願いで、愛し子として転生した。でも、そのことを誰にも告げる気はない。可愛らしくも美しい双子の妹の影で、いない子と扱われても特別な何かにはならない。私を愛してくれる人とこの世界でささやかな幸せを築ければそれで満足だ。
その希望を打ち砕くことが起こるとき、私は全力でそれに抗うだろう。
完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる