真実の愛は、誰のもの?

ふまさ

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 ぺたり。
 コーリーは絶望したように、床に尻もちをついた。エディを見上げる。エディは、憎しみをこめた双眸で、こちらを見下ろしていた。

『僕は、ただ、ルソー伯爵に脅迫されて、仕方なくお前に優しくしていただけだ。お前のことは……申し訳ない。愛するどころか、もう、顔も見たくないほど、嫌悪してしまっている』

 息が、止まった気がした。あの言葉の意味を、ようやく理解したコーリーが、凍り付いたように動きを止めた。

 ──やはり、無理だった。

 その様子に、エディは心の中で呟いた。コーリーも、被害者なのかもしれない。そう自分に言い聞かせたつもりだったが。

(……実際、ミアを傷付けたのはコーリーだ)

 怒りや憎しみは、本人を前にして、抑えることができなかった。でも、これでよかったのかもしれない。ようやく、コーリーを黙らせることができたから。

 エディはコーリーから、ルソー伯爵に視線を移した。

「ルソー伯爵。除籍に必要な書類はもう、ジェンキンス伯爵が用意してくださっています。あとは、あなたの署名だけです」

「……お前ぇ……絶対に許さん! 許さんぞぉ!!」

 唾を飛ばしながら喚くルソー伯爵に、冷静な声色が、告げた。


「──なるほど、ルソー伯爵。戦がお望みかな?」


 それは我を失っていたルソー伯爵にも届いたようで。ルソー伯爵は、はたと動きを止め、ジェンキンス伯爵の方へ顔を向けた。

「エディへの脅迫、心理的虐待。そしてあなたの娘は、私の大切な娘とエディの邪魔を長年にわたりしてきたそうで。あげく、娘を侮辱し、あざけったとか」

「……わ、私もコーリーも、そのようなことは、断じてしていませんっ」

 ジェンキンス伯爵の本気を感じ取ったルソー伯爵の口調が、明らかに弱くなった。こんなルソー伯爵は、はじめて見たな。僅かに目を丸くしながら呟くエディを見ながら、ルシンダはくすっと笑い、口を開いた。

「あら、ルソー伯爵。けれどわたし、エディと口付けしたことがないと勘違いしたあなたの娘に、女として見られてない証拠じゃない。かわいそうとひとしきりあざ笑われたあと『あたしとお兄様の幸せの邪魔、これ以上しないで。早く、わかりましたって答えなさいよ。あまりにみっともないわよ』と、言われましたけど」

「…………う」

「また、嘘だとおっしゃるつもりですか? ああ、証拠が必要でしたかしら。なら、コーリーがわたしを侮辱していない証拠を先に出していただけます?」

 臆することなく、ルシンダが優雅に笑う。ルソー伯爵は、目を瞠った。ミアは、こんな風に笑う娘だったろうか。

 もっと、物静かで。大人しくて。

 だからこそ、コーリーの好きにさせた。あの娘は、どうせ親になにも告げ口などしないだろうと。

 安心していた。油断していた。

 
 ジェンキンス伯爵を怒らせてはいけないと、知っていたはずなのに。


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