真実の愛は、誰のもの?

ふまさ

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「──くそ、くそ、くそ!!」

 ルソー伯爵は、自室の椅子に座り、収まらない怒りをどうにかしようと、頭を掻きむしっていた。

 イーモンには、貴族令嬢の婚約者がいた。結婚まで秒読み。そんな中、突然のイーモンの除籍を知った相手は、当然のように、怒りを露わにし、婚約破棄を宣言し、多額の慰謝料を請求してきた。

 ルソー伯爵も、婚約者の存在を忘れていたわけではない。もっとも、それに気付いたのは、イーモンが屋敷を出て行った次の日、にだが。急いでイーモンを探させたが、その姿はもう、王都のどこにもなかった。

 護衛もなしに、王都を出たのか。あり得ないだろう。そう考えたルソー伯爵は、まだ王都のどこかに隠れているはずだと、イーモンの捜索は続けている。むろん、払った慰謝料を返してもらうために。

 だが、ルソー伯爵は知らなかった。イーモンには、恋人がいたのだ。はじめて愛し、愛されることを教えてくれた、街娘が。

 イーモンはルソー伯爵が追ってくる前に、屋敷を出た数時間後には、恋人と王都を出ていた。恋人の知り合いの、護衛をつけた商売人たちと一緒に。

 王都だけを探し続けるルソー伯爵には、もう、一生見つけられないだろう。

 おまけに、元妻は、侯爵の娘だ。せめて慰謝料を半分払えと怒鳴りつけたいところだが、そんなこと、言えやしない。

 コンコン。
 ノックの音と共に、扉が開いた。返事の前にこんなことができるのは、一人しかいない。

「コーリー、どうした?」

 エディたちが屋敷から居なくなって、約ひと月。ほとんど部屋に閉じこもっていたコーリーが、自ら部屋を訪ねてきたことに驚きながらも、怒りを収め、ルソー伯爵が心配そうに声をかける。

「……お父様。あたし、明日から学園に行こうと思います」

「大丈夫なのか? あんなところ、無理してまで通う必要はないぞ?」

「いいえ。学費もただではありませんし……お兄様たちのせいで、大変なのでしょう?」

 ルソー伯爵は、ああ、と感激したように席を立った。

「コーリー。お前だけだよ、私を想ってくれるのは。大丈夫、お前にだけは、不自由はさせんからな」

「ありがとう、お父様。あたし、頑張りますね」

 コーリーの瞳が濁っていることに、ルソー伯爵は気付いていなかったのか。気付かないふりをしていたのか。

「まあ、学友に会うのも、いい気分転換になるだろう。くれぐれも、無理はせんようにな」

 いずれにせよ、ルソー伯爵は、更に後悔を重ねることになる。
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