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恋は盲目、とはよくいったもので。
伯爵令嬢のリネットは、はじめて父親のファネル伯爵にハワードを紹介されたとき、一目惚れをした。
容姿がよくて、優しくて。それでいて、どこか甘え上手な彼に、リネットは夢中になった。出会ったその日にはもう、ファネル伯爵に頼み込み、あの方と結婚したいですと告げた。
子爵令息で、三男の彼は、喜んで、とその申し出を受けてくれた。彼の父親のベイル子爵もたいそうご機嫌で、二人の婚約はあっという間に、周りも驚くほどのスピードで、正式に決まった。
逢瀬を重ね、デートも重ねた。何度も、好きだよと囁かれた。わたしたちは両思いなんだと信じるのに、そう時間はかからなかった。
街を歩いていると、容姿の優れた女性を無意識に目で追うハワードに気付いてはいたが、なにも言わなかった。ただ見ているだけだったし、口煩い女と思われたくなかったから。
(綺麗で可愛い女性は、自然と目がいってしまうものよね)
本当はモヤモヤしていたが、ぐっと堪え、そう自分に言い聞かせていた。
──二年後。
同じ年のリネットとハワードは、王都の学園に入学した。それぞれ別の地方に住んでいたから、会えるのはせいぜい、ひと月に一度。それを寂しく感じていたリネットは、これでいつでもハワードに会えると、歓喜していた。
ハワードも見るからにウキウキしていたので、同じ気持ちなんだと、リネットも嬉しくなった。
学園の入学式。目立つ容姿のハワードは、女子生徒から注目を集めていて、リネットは誇らしかったし、少しの優越感に浸っていた。
彼は見た目だけじゃなくて、とても優しいんだから、と。
入学から数ヶ月も経たないうちに、ハワードにかんする嫌な噂が、学園内で流れるようになった。いわく、婚約者以外の女性とよく親しくしているところを見る。それも、いつも同じ女性というわけではないというもの。
「ねえ、リネット。あなたの婚約者、隣のクラスの令嬢と二人、人気のないところへ行くのを見たんだけど……」
教室の椅子に座るリネットの前に立った女子生徒──リネットの友だちが、言い辛そうに告げた。リネットが首を傾げる。
「なにか用でもあったんじゃないのかな。先生に頼まれごとをされたとか」
「……似たような状況を目撃した人、もう何人もいるよね。それ以外にも、抱き合っていたとか、なんとか……」
友だちが、最後の方は尻すぼみに、目を伏せた。リネットが、噂でしょう、と笑う。
「ハワードに聞いてみたけど、そんなことはしていないって。ただの噂だって、笑いながらも困っていたわ。素敵過ぎるのも、問題ね」
「……本当に、あなたはそれでいいの?」
「いいもなにも、ハワードは被害者だわ。きっと誰かが根も葉もない噂を流して、わたしたちを別れさせようとしているのよ」
「…………」
周りがどう心配しても、忠告しても、リネットはただ、ハワードの言葉だけを信じた。それを自覚していたハワードは、リネットだけにはその現場を目撃されまいと細心の注意を払い、学園生活を過ごした。その負い目からか、もしかしたらどこかで見つかっているかもしれないという怖れからか、ハワードはリネットと二人きりになったさいには必ず愛を囁き、ぼくにはきみだけだと何度も告げた。
リネットはそれを信じ、ますますハワードにのめり込み、周りが見えなくなっていった。ついには友だちにも距離を置かれるようになってしまったけど、それで構わないと心から思った。
二人は学園を卒業すると同時に、結婚した。妊娠したとわかったのは、それから約一年後のこと。
リネットは、幸せの絶頂だった。愛する人との子を授かったのだから、それも当然だろう。ハワードも同じだと疑ってなかったし、互いの親や、周りに人がいるときなどは、ぼくも本当に嬉しいですとはにかんでいた。
でも、二人きりのとき。
ハワードは、ぽそっと呟いた。
「……なんか、その大きなお腹だと、ちょっと女として見れないよね」
頭に大きな衝撃を受けたリネットは、掠れた声で「……どういうこと?」と、訊ねた。ハワードは困ったように頭を掻いた。
「なんでもない。気にしないで」
「……でも」
「貴族の令嬢のなにより大切な仕事は、世継ぎを生むことだもんね。頑張って」
抱き締められ、リネットは少し戸惑いながらも、わかった、と頷く他なかった。それ以上の本音を、聞きたくなかったから。
(……本音? ううん、違う。きっと、言葉のあやよ。というか、見たままを言ってしまっただけよね。ハワードったらほんと、純粋無垢なんだから)
けれど。日々大きくなっていくリネットのお腹に、ハワードはそれを愛しむどころか、顔をしかめるしまつ。
思えばつわりが酷いとき、ハワードは心配するどころか、食欲が失せるからそれが収まるまでしばらくぼくの傍に来ないでくれ、と吐き捨てていた。
ハワードから吐き出されたその台詞に、あまりにショックを受けてしまったリネットは、はじめてハワードの暴言を、第三者に告げた。
小さな頃から傍にいて、お世話をしてくれていたリネットの侍女のマドリン。リネットが結婚しても、もちろん一緒にと着いてきてくれた、姉のような存在だった。
「……ハワード様が、そのようなことを」
真っ青な顔で、マドリンが呟く。無理もない。表の顔が良すぎるハワードは、リネットの前でさえ、結婚するまでその本性を隠していた。いや。見ようとしていなかっただけかもしれないし、ベタ惚れされているという自信を与えてしまったが故の、暴言だったのだろう。
「……お嬢様はつわりが酷く、私はもう、見ていることだけしかできないのが辛くて……なのに、そんな。私ども使用人は、ハワード様に心配をかけたくない一心で、お嬢様が避けているものとばかり……」
──本当は、ハワードに傍に居て欲しかったの。
声に出してしまいたかったけど、マドリンの表情が怒りに変わっていくのが見て取れて、リネットはそれを呑み込んだ。
「愚痴ってごめんなさい。考えてみれば、そんな状態の人間が目の前にいれば、食欲が失せて当然よね。ハワードは、正しいわ。わたしが勝手に傷付いただけで」
「……お嬢様のお腹にいる子どもは、誰の子ですか?! なんのためにお嬢様が辛い思いをしているのか少しでも理解できていれば、そんな酷いこと、言えませんよ!!」
怒り心頭のマドリンに、リネットはなんだか泣きそうになったが、大事になるのは避けたかったので、念入りに口止めをした。
「……このこと、私とマドリンだけの秘密ね」
「どうしてですか。旦那様や奥様にも、きちんと言うべきでは」
「そんなことしたら、ハワードが叱られてしまうかもしれないわ」
「かも、ではなく確実に叱られますよ。叱られるだけではすまないかもしれませんが」
「──うん。やっぱり、駄目」
「……お嬢様っ!」
「ハワードにきっと、悪気はないのよ。ほら、彼、子どもみたいなとこあるじゃない?」
「…………」
「マドリン?」
「度々、違う香水の匂いをまとわせて帰宅してくることがありましたよね。お嬢様が妊娠されてからは特に、その頻度が増えて。帰りも遅くなって」
「マドリンったら。またその話?」
「使用人たちはみな、ハワード様を疑ってますよ。でも、他でもないお嬢様がなにも行動を起こさないので、見て見ぬふりをしているだけです。最近はもう、ハワード様も、隠すつもりがあるのかないのか、それすらもわからないほどに雑になってきていますが」
「あまりにマドリンが心配するから、わたし、聞いたのよ。でも、神に誓って不倫なんてしていないって、ハワードは答えてくれたわ」
「それを信じているんですか?」
「当然よ」
「不倫をしている人が、不倫をしているかと問われたところで、正直に答えると思います?」
「ハワードは答えるわ」
はあ。
何度このやり取りをしたことかと、マドリンは深くため息をついた。
「では、探偵でも雇い、調査をさせましょう。それで白黒がはっきりつくはずです」
とたんにリネットが、やめてと叫んだ。マドリンは眉をひそめる。
「……やはり、気付かないふりをしていただけなのですね」
「…………」
リネットが目を伏せ、沈黙する。
「そんなにハワード様と別れるのが嫌なのですか? 不倫されても? 暴言を吐かれても?」
責めるわけではない。心配そうな声色に、リネットが、こくりと頷く。
「……愛しているの。それにきっと、この子が生まれたら、不倫なんて止めるわ」
そっと自身のお腹を、愛おしそうに撫でるリネット。マドリンは、もう何度目かわからないため息をつくしかなかった。
伯爵令嬢のリネットは、はじめて父親のファネル伯爵にハワードを紹介されたとき、一目惚れをした。
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ハワードも見るからにウキウキしていたので、同じ気持ちなんだと、リネットも嬉しくなった。
学園の入学式。目立つ容姿のハワードは、女子生徒から注目を集めていて、リネットは誇らしかったし、少しの優越感に浸っていた。
彼は見た目だけじゃなくて、とても優しいんだから、と。
入学から数ヶ月も経たないうちに、ハワードにかんする嫌な噂が、学園内で流れるようになった。いわく、婚約者以外の女性とよく親しくしているところを見る。それも、いつも同じ女性というわけではないというもの。
「ねえ、リネット。あなたの婚約者、隣のクラスの令嬢と二人、人気のないところへ行くのを見たんだけど……」
教室の椅子に座るリネットの前に立った女子生徒──リネットの友だちが、言い辛そうに告げた。リネットが首を傾げる。
「なにか用でもあったんじゃないのかな。先生に頼まれごとをされたとか」
「……似たような状況を目撃した人、もう何人もいるよね。それ以外にも、抱き合っていたとか、なんとか……」
友だちが、最後の方は尻すぼみに、目を伏せた。リネットが、噂でしょう、と笑う。
「ハワードに聞いてみたけど、そんなことはしていないって。ただの噂だって、笑いながらも困っていたわ。素敵過ぎるのも、問題ね」
「……本当に、あなたはそれでいいの?」
「いいもなにも、ハワードは被害者だわ。きっと誰かが根も葉もない噂を流して、わたしたちを別れさせようとしているのよ」
「…………」
周りがどう心配しても、忠告しても、リネットはただ、ハワードの言葉だけを信じた。それを自覚していたハワードは、リネットだけにはその現場を目撃されまいと細心の注意を払い、学園生活を過ごした。その負い目からか、もしかしたらどこかで見つかっているかもしれないという怖れからか、ハワードはリネットと二人きりになったさいには必ず愛を囁き、ぼくにはきみだけだと何度も告げた。
リネットはそれを信じ、ますますハワードにのめり込み、周りが見えなくなっていった。ついには友だちにも距離を置かれるようになってしまったけど、それで構わないと心から思った。
二人は学園を卒業すると同時に、結婚した。妊娠したとわかったのは、それから約一年後のこと。
リネットは、幸せの絶頂だった。愛する人との子を授かったのだから、それも当然だろう。ハワードも同じだと疑ってなかったし、互いの親や、周りに人がいるときなどは、ぼくも本当に嬉しいですとはにかんでいた。
でも、二人きりのとき。
ハワードは、ぽそっと呟いた。
「……なんか、その大きなお腹だと、ちょっと女として見れないよね」
頭に大きな衝撃を受けたリネットは、掠れた声で「……どういうこと?」と、訊ねた。ハワードは困ったように頭を掻いた。
「なんでもない。気にしないで」
「……でも」
「貴族の令嬢のなにより大切な仕事は、世継ぎを生むことだもんね。頑張って」
抱き締められ、リネットは少し戸惑いながらも、わかった、と頷く他なかった。それ以上の本音を、聞きたくなかったから。
(……本音? ううん、違う。きっと、言葉のあやよ。というか、見たままを言ってしまっただけよね。ハワードったらほんと、純粋無垢なんだから)
けれど。日々大きくなっていくリネットのお腹に、ハワードはそれを愛しむどころか、顔をしかめるしまつ。
思えばつわりが酷いとき、ハワードは心配するどころか、食欲が失せるからそれが収まるまでしばらくぼくの傍に来ないでくれ、と吐き捨てていた。
ハワードから吐き出されたその台詞に、あまりにショックを受けてしまったリネットは、はじめてハワードの暴言を、第三者に告げた。
小さな頃から傍にいて、お世話をしてくれていたリネットの侍女のマドリン。リネットが結婚しても、もちろん一緒にと着いてきてくれた、姉のような存在だった。
「……ハワード様が、そのようなことを」
真っ青な顔で、マドリンが呟く。無理もない。表の顔が良すぎるハワードは、リネットの前でさえ、結婚するまでその本性を隠していた。いや。見ようとしていなかっただけかもしれないし、ベタ惚れされているという自信を与えてしまったが故の、暴言だったのだろう。
「……お嬢様はつわりが酷く、私はもう、見ていることだけしかできないのが辛くて……なのに、そんな。私ども使用人は、ハワード様に心配をかけたくない一心で、お嬢様が避けているものとばかり……」
──本当は、ハワードに傍に居て欲しかったの。
声に出してしまいたかったけど、マドリンの表情が怒りに変わっていくのが見て取れて、リネットはそれを呑み込んだ。
「愚痴ってごめんなさい。考えてみれば、そんな状態の人間が目の前にいれば、食欲が失せて当然よね。ハワードは、正しいわ。わたしが勝手に傷付いただけで」
「……お嬢様のお腹にいる子どもは、誰の子ですか?! なんのためにお嬢様が辛い思いをしているのか少しでも理解できていれば、そんな酷いこと、言えませんよ!!」
怒り心頭のマドリンに、リネットはなんだか泣きそうになったが、大事になるのは避けたかったので、念入りに口止めをした。
「……このこと、私とマドリンだけの秘密ね」
「どうしてですか。旦那様や奥様にも、きちんと言うべきでは」
「そんなことしたら、ハワードが叱られてしまうかもしれないわ」
「かも、ではなく確実に叱られますよ。叱られるだけではすまないかもしれませんが」
「──うん。やっぱり、駄目」
「……お嬢様っ!」
「ハワードにきっと、悪気はないのよ。ほら、彼、子どもみたいなとこあるじゃない?」
「…………」
「マドリン?」
「度々、違う香水の匂いをまとわせて帰宅してくることがありましたよね。お嬢様が妊娠されてからは特に、その頻度が増えて。帰りも遅くなって」
「マドリンったら。またその話?」
「使用人たちはみな、ハワード様を疑ってますよ。でも、他でもないお嬢様がなにも行動を起こさないので、見て見ぬふりをしているだけです。最近はもう、ハワード様も、隠すつもりがあるのかないのか、それすらもわからないほどに雑になってきていますが」
「あまりにマドリンが心配するから、わたし、聞いたのよ。でも、神に誓って不倫なんてしていないって、ハワードは答えてくれたわ」
「それを信じているんですか?」
「当然よ」
「不倫をしている人が、不倫をしているかと問われたところで、正直に答えると思います?」
「ハワードは答えるわ」
はあ。
何度このやり取りをしたことかと、マドリンは深くため息をついた。
「では、探偵でも雇い、調査をさせましょう。それで白黒がはっきりつくはずです」
とたんにリネットが、やめてと叫んだ。マドリンは眉をひそめる。
「……やはり、気付かないふりをしていただけなのですね」
「…………」
リネットが目を伏せ、沈黙する。
「そんなにハワード様と別れるのが嫌なのですか? 不倫されても? 暴言を吐かれても?」
責めるわけではない。心配そうな声色に、リネットが、こくりと頷く。
「……愛しているの。それにきっと、この子が生まれたら、不倫なんて止めるわ」
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