心から愛しているあなたから別れを告げられるのは悲しいですが、それどころではない事情がありまして。

ふまさ

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 夢の中、そのままの流れ。科白。表情。エノーラは目を見張った。

(あれは正夢だったの……?)

 別れを告げられ、その場にいることが辛くて、苦しくて。この場から逃げようとした。けれど夢の中のミッチェルを思い出し、自分の心配だけをするミッチェルの姿を絶対に見たくなくて、エノーラは何とか部屋に止まった。

 静まり返る部屋。沈黙にたえられなくて、エノーラはたまらず「あ、あの……」と声を絞り出した。

「……なに?」

 優しく、ミッチェルが答える。それがたまらなく悲しくて、頬に一筋の涙がこぼれた。

「……どうしても、駄目ですか。別れる以外の道は、ないのでしょうか……」

 ミッチェルは苦しそうに「……ごめん」と答えた。

「ぼくも、悩みに悩みぬいた結論なんだ。きみだって、他に愛する人がいる男と一緒になるなんて、嫌だろ? これはきみのためでもあるんだ」

「……わたしのため?」

「そうだよ」

 そうなのだろうか。わからない。わかるのは、胸が張り裂けそうなほど、痛むことだけ。

「……しばらく、一人にしてください」

 うつ向いたまま呟くと、ミッチェルは、わかった、と部屋を出ていった。

 玄関の扉が開く音はしなかったので、おそらくは応接室で、両親の帰りを待つつもりだろう。

 エノーラは寝台に倒れこむと、枕に顔を埋め、声をあげて泣きはじめた。

 大好きなミッチェル。そんなミッチェルに愛された女性が妬ましく、憎かった。そんな女に出会わなければ良かったのに。そしたらミッチェルと、ずっと一緒にいれたのに。醜い感情に包まれながら、気付けば、エノーラは意識を手放していた。

 
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