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第2章 イリゼ
02 イーガン
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サラッとした薄いブルーの髪に端正な顔立ちにスリム体型、見た目は20代そこらで髪と同じピアスをしており、白のノースリーブのワンピースにヒールを履いている女がいた。
その細くて白い右手には水晶を持っている。
「オスマンやったようね」
水晶からの連絡を今終えたばかりのニコレ・イーガンは視線を水晶から目の前の宮殿に目を向けた。
宮殿の前には銃を此方に向けて構える兵士達が警告を発していた。
「これ以上一歩でも進んだ場合は撃つ!」
女は微笑した。
警告なんて意味は無い。どうせ全員死ぬことになるんだから。
その時だった。兵士達の間から若い二人の男が前に出てきた。二人はとても顔が似ていた。そして同じ上下黒の格好でそこにいる兵士達よりも鋭い目をしていた。
いい目をしている。殺しに一切の躊躇や迷いが感じられない。経験の差か。
「双子かしら?」
「女だからと容赦はしない。狙いは何だ?」
「聞かなくても分かることよ」
「そうか。なら、生かしてはおけないな」
きっと双子だろう。何をするつもりか女は待ってみた。
すると、二人はなんと変身をし、一方は鋭い牙を持った灰色のフェンリル、もう一方は頭が3つある漆黒のケルベロスへとなったのだ!
「あら、兄弟揃って選ばれし者だったの!? とても珍しい確率よ」
2匹はよだれを垂らしながら獲物を睨んでいる。今にも襲いかかりそうだ。そうなれば、そんな細い腕は簡単に引きちぎられてしまうだろう。
だが、変身を目の当たりにしながらも女は平静を保っていた。
「悪いけど、こっちの方が余裕かしら」
女はそう言うと、青い光を放った。
女もまた選ばれし者だった。
現れたのはケルベロスよりも頭の数は多かった。
巨大な蛇、ヒュドラだ。
青く巨大で複数の頭を持ったヒュドラは哀れでちっぽけな兄弟を上から見下した。
「撃てぇ!!」
発砲がヒュドラに向け放たれた。しかし、弾は命中しても傷一つ付けるに至らなかった。
「逃げ出してもいいのよ」
イーガンはそう言ったが、ケルベロスとフェンリルはイーガンの誘いにはのらず果敢に蛇の首に噛みついてきた。
「無駄よ」
噛みつかれた首を鞭を振るうように兄弟を地面へと叩きつけると、ヒュドラは全ての口を開き、そこから紫色の毒を勢いよく放出しだした。
辺りはあっという間に毒で広がり、兵士達は勿論、二人の兄弟も毒が一瞬にして全身を回り、麻痺を引き起こし口からは泡を吹き出した。
「ほらね、どうせ逃げたところで毒はあっという間に辺り一帯に広がるんだから」
空にでも逃げ出さない限りこの毒からは脱することは出来ない。勿論、空を飛べる奴がいればだけどね。
そこでイーガンは退屈した。もう、戦いが終わってしまったからだ。
「こんな圧勝ではつまらないわ」
でも、簡単な仕事ならそれはそれで早く終わるからそこまで不満でもなかった。
ヒュドラのまま宮殿を破壊し、その地下にある筈の魔人を復活させる。そうすれば、自分の任務はとりあえず一段落する。
イーガンが移動し宮殿に近づくと妙な気配がした。直感みたいなものだった。それがイーガンの足を一旦止めた。
直後、宮殿の屋根が吹き飛び、緑色のこれまた頭を複数持った巨大な蛇が現れだしたのだ。
「あれはヤマタノオロチ」
頭が八つある蛇。
「面白いわ! そうこなくちゃ」
イーガンはむしろこの状況を楽しんだ。
恐らく、もうこいつで出てくるのは最後だろうという予測はだいたいついた。それでも似たもの同士の戦いだ。
「さて、どちらの方が強いかな」
イーガンとヤマタノオロチとの戦いが始まった。お互いに首を狙って食らいつく。
お互いの首に赤い血が流れ出る。
「分かっているわ、こんなことではお互い死なないことをね」
すると、イーガンの一つの頭が変化し、鋭い鎌になった。
ヤマタノオロチは驚いて一旦イーガンから離れたが、その隙に鞭を振るう要領で横殴りにヤマタノオロチの全ての首を鎌でスパッと切り落とした。
「あら、卑怯だったかしら」
頭が次々と地面に落ちて、ヤマタノオロチはあっという間に絶命した。
「私、鎌鼬にもなれるのよ」
結局、この場はイーガンの圧勝に終わった。
どうせやる前から分かっていたことだ。
あとはさっさと魔人を復活させるだけだ。
さっきヤマタノオロチが宮殿の屋根を破壊してくれたおかげで、地下が丸見えになっていた。
大きな丸い穴の底には巨大な赤い筋肉のかたまりがあった。それはドクン、ドクンと動いている。心臓だ。
「大事なハート見っけ」
しかし、問題は心臓に御札が貼られてあることだ。
「これをどうにかしないと持ち出せないのよね」
実を言えば、ここからが本当の重労働だった。
いわゆる封印を解くのだ。もうそろそろ、ここにゲルドフが賢者の子孫を連れてやってくる筈だ。その子孫が封印を解く儀式を知らされていなくても、子孫の血で無理やり封印を解くことが出来る。本来はオスマンの役割だったが、奴はしくじったからゲルドフにその役回りがきて、オスマンはカントンへ向かいそこの魔人を起こす役になった。もし、それも失敗に終わっていれば、奴があの『お方』の生贄になっていただろう。
それはそれで見たかったり。
「ゲルドフの奴、遅い!」
その細くて白い右手には水晶を持っている。
「オスマンやったようね」
水晶からの連絡を今終えたばかりのニコレ・イーガンは視線を水晶から目の前の宮殿に目を向けた。
宮殿の前には銃を此方に向けて構える兵士達が警告を発していた。
「これ以上一歩でも進んだ場合は撃つ!」
女は微笑した。
警告なんて意味は無い。どうせ全員死ぬことになるんだから。
その時だった。兵士達の間から若い二人の男が前に出てきた。二人はとても顔が似ていた。そして同じ上下黒の格好でそこにいる兵士達よりも鋭い目をしていた。
いい目をしている。殺しに一切の躊躇や迷いが感じられない。経験の差か。
「双子かしら?」
「女だからと容赦はしない。狙いは何だ?」
「聞かなくても分かることよ」
「そうか。なら、生かしてはおけないな」
きっと双子だろう。何をするつもりか女は待ってみた。
すると、二人はなんと変身をし、一方は鋭い牙を持った灰色のフェンリル、もう一方は頭が3つある漆黒のケルベロスへとなったのだ!
「あら、兄弟揃って選ばれし者だったの!? とても珍しい確率よ」
2匹はよだれを垂らしながら獲物を睨んでいる。今にも襲いかかりそうだ。そうなれば、そんな細い腕は簡単に引きちぎられてしまうだろう。
だが、変身を目の当たりにしながらも女は平静を保っていた。
「悪いけど、こっちの方が余裕かしら」
女はそう言うと、青い光を放った。
女もまた選ばれし者だった。
現れたのはケルベロスよりも頭の数は多かった。
巨大な蛇、ヒュドラだ。
青く巨大で複数の頭を持ったヒュドラは哀れでちっぽけな兄弟を上から見下した。
「撃てぇ!!」
発砲がヒュドラに向け放たれた。しかし、弾は命中しても傷一つ付けるに至らなかった。
「逃げ出してもいいのよ」
イーガンはそう言ったが、ケルベロスとフェンリルはイーガンの誘いにはのらず果敢に蛇の首に噛みついてきた。
「無駄よ」
噛みつかれた首を鞭を振るうように兄弟を地面へと叩きつけると、ヒュドラは全ての口を開き、そこから紫色の毒を勢いよく放出しだした。
辺りはあっという間に毒で広がり、兵士達は勿論、二人の兄弟も毒が一瞬にして全身を回り、麻痺を引き起こし口からは泡を吹き出した。
「ほらね、どうせ逃げたところで毒はあっという間に辺り一帯に広がるんだから」
空にでも逃げ出さない限りこの毒からは脱することは出来ない。勿論、空を飛べる奴がいればだけどね。
そこでイーガンは退屈した。もう、戦いが終わってしまったからだ。
「こんな圧勝ではつまらないわ」
でも、簡単な仕事ならそれはそれで早く終わるからそこまで不満でもなかった。
ヒュドラのまま宮殿を破壊し、その地下にある筈の魔人を復活させる。そうすれば、自分の任務はとりあえず一段落する。
イーガンが移動し宮殿に近づくと妙な気配がした。直感みたいなものだった。それがイーガンの足を一旦止めた。
直後、宮殿の屋根が吹き飛び、緑色のこれまた頭を複数持った巨大な蛇が現れだしたのだ。
「あれはヤマタノオロチ」
頭が八つある蛇。
「面白いわ! そうこなくちゃ」
イーガンはむしろこの状況を楽しんだ。
恐らく、もうこいつで出てくるのは最後だろうという予測はだいたいついた。それでも似たもの同士の戦いだ。
「さて、どちらの方が強いかな」
イーガンとヤマタノオロチとの戦いが始まった。お互いに首を狙って食らいつく。
お互いの首に赤い血が流れ出る。
「分かっているわ、こんなことではお互い死なないことをね」
すると、イーガンの一つの頭が変化し、鋭い鎌になった。
ヤマタノオロチは驚いて一旦イーガンから離れたが、その隙に鞭を振るう要領で横殴りにヤマタノオロチの全ての首を鎌でスパッと切り落とした。
「あら、卑怯だったかしら」
頭が次々と地面に落ちて、ヤマタノオロチはあっという間に絶命した。
「私、鎌鼬にもなれるのよ」
結局、この場はイーガンの圧勝に終わった。
どうせやる前から分かっていたことだ。
あとはさっさと魔人を復活させるだけだ。
さっきヤマタノオロチが宮殿の屋根を破壊してくれたおかげで、地下が丸見えになっていた。
大きな丸い穴の底には巨大な赤い筋肉のかたまりがあった。それはドクン、ドクンと動いている。心臓だ。
「大事なハート見っけ」
しかし、問題は心臓に御札が貼られてあることだ。
「これをどうにかしないと持ち出せないのよね」
実を言えば、ここからが本当の重労働だった。
いわゆる封印を解くのだ。もうそろそろ、ここにゲルドフが賢者の子孫を連れてやってくる筈だ。その子孫が封印を解く儀式を知らされていなくても、子孫の血で無理やり封印を解くことが出来る。本来はオスマンの役割だったが、奴はしくじったからゲルドフにその役回りがきて、オスマンはカントンへ向かいそこの魔人を起こす役になった。もし、それも失敗に終わっていれば、奴があの『お方』の生贄になっていただろう。
それはそれで見たかったり。
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